剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

第3章 神の悪戯

第164話 遠征までの時間

「我々は1週間後、魔王討伐の為に遠征する事になる、この1週間の間は自主トレーニング期間とし各々の英気を養ってくれ」

「1週間も？」

と、エムルの言葉にクロウは反応する、1日休むと身体を戻すのに3日かかると言われている、1日ならまだしも1週間もと言うのは明らかに長すぎる。

「そうだ、家族、兄弟、友人、恋人、その者達との別れの挨拶も含め、更に遠征の為の準備期間として1週間設けられている」

「なるほど…ありがとうございます」

と、クロウは感謝の言葉を述べる
別れの挨拶、確かに魔王軍と戦うとなると必ず死人は出るだろう。

ゲームではそう言った描写はないが普通に考えれば戦争で死人が出ないなんてそっちの方がおかしいのだ。

準備だって必要だ、食料などがなければ餓死したり、栄養が足りず病気になる可能性もある、第二次世界大戦中の大日本帝国軍の死亡理由も物資がない事による飢餓が多いのだ。

「他にも質問はあるか？」

「はい」

「何だ？リューク？」

リュークは手を挙げてヒヨナに質問する。

「遠征はどれくらいかかるんですか？」

ゲームだとレベル上げする為に(ゲーム内で)何日も同じ場所にいたりする、学園編は何月何日何曜日と分かるがRPG編は全くわからないのだ。

「そうだな…順調に進めば1ヶ月で魔王城が見えてくるだろう」

1ヶ月…健康な人が歩ける距離は約5km~20km、ここは騎士団の人達だから20km毎日歩けるとしよう
20✖️30＝600km
約600kmとなる。
(大体東京から青森ら辺の距離)

「分かりました、しかし何故こちらから攻めるのですか？来るのを待つ籠城戦でも良いと思うのですが…」

「援軍も来ない籠城戦になった場合、食糧問題もある為、もしもに備えての進軍らしい」

「分かりました…ありがとうございます」

援軍がない場合、籠城戦は絶望的だ包囲されれば水や食糧は底を尽き、そしてゆっくりと苦しみながら死んで行くのだ。

羽柴秀吉が毛利軍と戦う時に行った水攻めは正にそれで、悪魔の所業と言ってもいいだろう。

「他にも質問はあるか？」

しばらくヒヨナは待ったが誰も手を挙げなかった為、質問する時間は終わった。

「分かった、今から1週間後、我々は魔王城に向かう、各々悔いのない様にしろ、いいな？」

「「「「「はい！」」」」」

「よし、ならば解散！」

その言葉と同時に騎士団達の話し合いが始まる、

「どうする？」と聞く者
「マジかよ」と驚愕する者
「休みか」と喜ぶ者
色々な人がいた。

「クロウ様」

「ん？どうしたメイディ？」

そんな中メイディはクロウの所へ来て声をかける。

「私わたし達はどういたしましょうか？」

「どうって？」

「一応私わたしも勇者パーティの1人です、旅に…いや遠征に行くのなら最後に家族に挨拶をすべきかと思いますが」

メイディの言葉はごもっともだ、勇者パーティに選ばれた時も騎士団に入って休学になったのも手紙で送るか既に他の者が伝えてしまった所為で一度も会えていないのだ。

「そうだな、2年以上も会えていないんだ、せめてこう言う時くらいは会うさ」

そうでもしないと今後一生会えない様な気がする、そんな予感をクロウは感じている。

「そうですか」

「メイディももちろん来るよな？」

「もちろんです、私わたしはクロウ様のメイドですから」

メイディにも家族はいるだろう、それでもクロウは自分と一緒に帰って欲しかったのだ。

色んな事があったが、最初はメイディと2人だけだったのだ、それから色々な人と出逢いここまで来た、だからこそ全ての始まりの地(と言うと大袈裟だが)である我が家に来て欲しいのだ。

「良いのか？家族に会えなくても？」

「私わたしにとっての家族はクロウ様とそのご両親です、この戦いが終わればそれは真実に変わるんですから」

そう言ってメイディは訓練所から出て行った、クロウはその言葉を聞いて「ありがとう」と小さく口をこぼした。

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秋なくね？