26 / 30
第3章
№48
しおりを挟む
「なにか分かりましたか? 」
「いいえ、まだ」
首を捻る雅也。
「№48ってなんのことでしょう」
持ち帰った紙辺をテーブルに置いて伊坂、香坂、雅也が頭を突き合わせているが未だこれというものは浮かんでいなかった。
「ヒントのつもりですかねー、答えを教えてくれればいいのに。佐久間のじい様は食えないお人だから。」
香坂が顎をさすって言う。
「うーん、そうですよね。この数字に何か意味があるんでしょうけど…そもそも何を見つけさせようとしているんだろう」
「やっぱり犯人じゃないですか? 」
ひょいっと紙片を拾い上げる香坂。
「あぶってみるとか。水につけてみます? 」
「そういうんじゃないと思いますけど」と、思わず笑ってしまう雅也。
腕を組んで悩む伊坂の眉間にしわが寄る。
「この紙ツルツルしてますね。カレンダーの裏みたいな、」
「佐久間さんがわざわざカレンダーとかチラシの裏紙なんか使うか? 」
「分からないな」
双子の大きな手の中で弄ばれる紙片。
「すべてに意味があるんだと思うんですけど…。佐久間さんがあの場所にいたことも気になるし。古い桜の木、№48、上尾でなければならない理由、」
雅也の言に「え? 」と、香坂が声を上げた。
「うちじゃなきゃならない理由なんてあります? 押しつけるのにちょうどよかったんじゃないですか。単に舐められてるのかと」
「香坂、口が過ぎるぞ」
伊坂に窘められて「すみません」と軽く首を竦める。
そんな様子に苦笑する雅也。
「そうですね~。まあ、舐められてるとしたら僕なんだけど」
名門上尾家の次期当主がまだ年若い青年であればこそ、佐久間なら試すようなことをしないとも限らない。
「これくらいの謎が解けないと当主としては不足ってことですかね? 」
雅也のほっそりした指がコツコツと机を叩いた。
「そんなことはないと思いますが」
「俺たち探偵じゃないんだけどな」
「まぁそうなんですけど。この紙、なにか触ったことがあるような気がするんですよね…どこでだろう」
うーん、と天井を見上げてしまう。
閉塞した空気を打ち破るように軽いノックの音。「どうぞ」と声をかければ板チョコのような扉が開かれる。折よく現れたのは京子と望だった。
コツコツとハイヒールの音を響かせる京子。後に続く望は配膳台を押している。
「あら随分お悩みみたいですね。なにか分かりました? 」
「京子さん」「いいえ。まだ」と、それぞれがお手上げとばかりに首を横に振った。
「そうですか、根を詰めすぎてもよくありませんわよ。お茶でもいかがです? 」
「ありがとうございます」
雅也に感謝されて和んでいる京子の影から顔を出す望。
「まぁ、実際にそのお茶の用意したのはオレなんですけどね! 」
「ちょっと望君! 言ったのは私でしょ? いきなり裏切るとは…」
きりりと眉尻を上げる京子。ペロッと舌を出した望は、長身の香坂の後ろに回って彼を盾にした。
「もう俺を挟まないでくださいよー! 」
「あとで覚えておきなさいよ…」
低くつぶやかれて望が悲鳴を上げる。
「怖い怖い! 」
「まぁまぁ、」
「二人で用意してくれたんですよね。ありがとうございます。」
「え、ええ…まぁ」
雅也にニッコリ微笑まれれば京子もひとまず角をひっこめるしかない。気を取り直すように眼鏡を押し上げた。
「なんでもいいから早くお茶入れてくださいよ」と肩を竦める香坂。さすがの伊坂も苦笑せざるを得ない。
咳払い一つ、びしっと指図する京子。
「望君、淹れて差し上げなさい」
「やっぱり俺がやるんじゃないですか~」
「いいから早くしなさい」
きっぱり言われて慌てて望が給仕にかかる。
白磁のティーカップに注がれる琥珀色の紅茶。手際はぎこちないが、それでもふわりと漂う格調高い香りに一同は肩の力が抜ける。温かな湯気を見ているだけでほどよく緊張が解けていくのを感じられた。
「雅也さんには私がお入れしますわ」
「ありがとうございます」
明らかな贔屓だと思ったが突っ込むものは誰もいなかった。
伊坂は黙って紅茶をすすり、香坂は気にしないフリをした。望だけが「えぇ~」と嘆いた。
「いいえ、まだ」
首を捻る雅也。
「№48ってなんのことでしょう」
持ち帰った紙辺をテーブルに置いて伊坂、香坂、雅也が頭を突き合わせているが未だこれというものは浮かんでいなかった。
「ヒントのつもりですかねー、答えを教えてくれればいいのに。佐久間のじい様は食えないお人だから。」
香坂が顎をさすって言う。
「うーん、そうですよね。この数字に何か意味があるんでしょうけど…そもそも何を見つけさせようとしているんだろう」
「やっぱり犯人じゃないですか? 」
ひょいっと紙片を拾い上げる香坂。
「あぶってみるとか。水につけてみます? 」
「そういうんじゃないと思いますけど」と、思わず笑ってしまう雅也。
腕を組んで悩む伊坂の眉間にしわが寄る。
「この紙ツルツルしてますね。カレンダーの裏みたいな、」
「佐久間さんがわざわざカレンダーとかチラシの裏紙なんか使うか? 」
「分からないな」
双子の大きな手の中で弄ばれる紙片。
「すべてに意味があるんだと思うんですけど…。佐久間さんがあの場所にいたことも気になるし。古い桜の木、№48、上尾でなければならない理由、」
雅也の言に「え? 」と、香坂が声を上げた。
「うちじゃなきゃならない理由なんてあります? 押しつけるのにちょうどよかったんじゃないですか。単に舐められてるのかと」
「香坂、口が過ぎるぞ」
伊坂に窘められて「すみません」と軽く首を竦める。
そんな様子に苦笑する雅也。
「そうですね~。まあ、舐められてるとしたら僕なんだけど」
名門上尾家の次期当主がまだ年若い青年であればこそ、佐久間なら試すようなことをしないとも限らない。
「これくらいの謎が解けないと当主としては不足ってことですかね? 」
雅也のほっそりした指がコツコツと机を叩いた。
「そんなことはないと思いますが」
「俺たち探偵じゃないんだけどな」
「まぁそうなんですけど。この紙、なにか触ったことがあるような気がするんですよね…どこでだろう」
うーん、と天井を見上げてしまう。
閉塞した空気を打ち破るように軽いノックの音。「どうぞ」と声をかければ板チョコのような扉が開かれる。折よく現れたのは京子と望だった。
コツコツとハイヒールの音を響かせる京子。後に続く望は配膳台を押している。
「あら随分お悩みみたいですね。なにか分かりました? 」
「京子さん」「いいえ。まだ」と、それぞれがお手上げとばかりに首を横に振った。
「そうですか、根を詰めすぎてもよくありませんわよ。お茶でもいかがです? 」
「ありがとうございます」
雅也に感謝されて和んでいる京子の影から顔を出す望。
「まぁ、実際にそのお茶の用意したのはオレなんですけどね! 」
「ちょっと望君! 言ったのは私でしょ? いきなり裏切るとは…」
きりりと眉尻を上げる京子。ペロッと舌を出した望は、長身の香坂の後ろに回って彼を盾にした。
「もう俺を挟まないでくださいよー! 」
「あとで覚えておきなさいよ…」
低くつぶやかれて望が悲鳴を上げる。
「怖い怖い! 」
「まぁまぁ、」
「二人で用意してくれたんですよね。ありがとうございます。」
「え、ええ…まぁ」
雅也にニッコリ微笑まれれば京子もひとまず角をひっこめるしかない。気を取り直すように眼鏡を押し上げた。
「なんでもいいから早くお茶入れてくださいよ」と肩を竦める香坂。さすがの伊坂も苦笑せざるを得ない。
咳払い一つ、びしっと指図する京子。
「望君、淹れて差し上げなさい」
「やっぱり俺がやるんじゃないですか~」
「いいから早くしなさい」
きっぱり言われて慌てて望が給仕にかかる。
白磁のティーカップに注がれる琥珀色の紅茶。手際はぎこちないが、それでもふわりと漂う格調高い香りに一同は肩の力が抜ける。温かな湯気を見ているだけでほどよく緊張が解けていくのを感じられた。
「雅也さんには私がお入れしますわ」
「ありがとうございます」
明らかな贔屓だと思ったが突っ込むものは誰もいなかった。
伊坂は黙って紅茶をすすり、香坂は気にしないフリをした。望だけが「えぇ~」と嘆いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる