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お父様から執務室に呼ばれた。
「ミシェル…ビルダー侯爵家からスタイン子息の婚約者をミシェルからリシェルに変更したいと言ってきた」
「まぁそれは本当ですか?」
「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」
「畏まりました。では失礼致します」
私が部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。
「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。お姉様はスタイン様と結婚が出来なくなって残念ね♪」
残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!
ビルダー侯爵家スタイン様とアモス伯爵家の私ミシェルとの結婚は、政略結婚だった。
負債を抱え、このままでは没落も免れない我がアモス伯爵家に、援助をしてくれると言ってきたのがビルダー侯爵家。
但し、その援助には、条件が付いていた。
それは娘をビルダー侯爵家に嫁がせる事。
お父様は、私とリシェルのどちらを嫁がせるか悩んだ。
決め手は、お母様の「リシェルは、淑女教育が終わっていないわよ」の一言。
侯爵家に嫁ぐとなれば侯爵夫人教育を受けなくてはならない。
淑女教育も終わっていないリシェルに侯爵夫人教育は、無理だと判断したのだ。
お父様から、ビルダー侯爵家のスタイン様との結婚が決まったと言われた時、私とリシェルは驚き、悲しんだ。
私には、皆に内緒で最近、放課後の僅かな時間を一緒に過ごす彼がいたから…。
リシェルは、侯爵家に嫁ぐのが自分ではなかったからだろう。
スタイン様と婚約するからとバルナ伯爵家サイモンと放課後に会うのを止めた。
変な噂が立ち、サイモンを傷付けたくなかったのだ。
サイモン様は三男の為、バルナ伯爵家を継ぐ事は出来ない。その為、剣術を磨き、学園卒業後は騎士団に入隊する。
伯爵家の令嬢として生まれたミシェルは、サイモンと結婚したかったが、家の為の結婚が当然の貴族世界。
お父様に話してサイモンとの結婚を認めてもらいたい。と思いながらも話せずにいた。
サイモンもミシェルと結婚したいと思いながらも、爵位を継げない自分が伯爵令嬢との結婚を許される筈がないと諦めていた。
リシェルは、姉のミシェルがスタイン様の事を何とも思っていないとは知らなかったのだ。
ただ姉の婚約者を奪い取って、悔しがる顔が見たかい。自分こそ侯爵夫人に相応しい!と思っていたのだ。
お姉様からスタイン様を奪い取れば良いんだわ♪
姉に会いに来るスタインに胸の開いたワンピースを着て、上目遣いで胸を押し付けた。
「ずっとスタイン様をお慕いしておりました。…お姉様の婚約者になってしまうなんて…お願い、1度だけで良いのです。思い出を下さい…」
「今日はミシェルと出掛ける約束をしている。明日、ビルダー侯爵家へ来れるか?」
「はい、必ずお伺い致します!」
次の日、ビルダー侯爵家に行くと、スタインは、当然の様にリシェルをベッドに押し倒した。
「ス、スタイン様…やっぱり駄目ですわ。お姉様を裏切ってこんな事…私がスタイン様を諦めれば…」
「ならばミシェルと婚約を解消し、お前と婚約すれば問題あるまい」
「あぁスタイン様、本当に?嬉しい~♪」
ふふふ、お姉様の悔しがる顔が目に浮かぶわ♪
スタイン様とミシェルの婚約が解消された。
ミシェルは、サイモンに会いに行きたかったが「今さら何しにきた!?」と言われたらと怖くなり行く事が出来ない。
サイモンは、友達からミシェルがビルダー侯爵家子息と婚約を解消したと聞いた。
彼はミシェルの元に走り出す。
「ミシェル!」
「サイモン」
初めて2人は抱き合った。
各々の屋敷に戻ると、直ぐに父親に会いに行った。
「お父様(父上)お話が有ります。私はバルナ伯爵家サイモン(アモス伯爵家ミシェル)と結婚したいと思っております。どうか許して頂けないでしょうか?」
「サイモン君と…彼は、三男だったね…」
「あら?ミシェルを貰ってくれるのなら良かったじゃない。婚約解消された娘を嫌がる貴族は多いわ。私は賛成よ!」
お母様の一言で、バルナ伯爵が申し込んできたら了承すると決まった。
「アモス伯爵家のミシェル嬢は、最近婚約解消されたと聞いたが…」
「妹のリシェル嬢とスタイン様が婚約されました」
「周りは良く言わんかも知れんぞ?」
「私は爵位を持ちません。父上と兄上は、少しの間、何か言われるかも知れませんが、どうか私とミシェルの結婚を許して下さい!」
「父上、サイモンが頭を下げて頼んでいるのだから、許してあげてはいかがです?私はサイモンが幸せになるなら何を言われても気にしませんよ」
兄の言葉に父上も了承し、アモス伯爵へと縁談の申し込みをしてくれた。
「お姉様、次の婚約者は家を継がない三男なんて可哀想に…ふふふ」
「リシェル、勘違いしている様だけれど、私がサイモン様との結婚を望んだのよ」
「まぁ負け惜しみですか?」
「そう思いたければ、そう思えば良いわ!」
卒業後、リシェルは、私達より先に結婚式を挙げた。
まだ目立ってはいないが妊娠してしまったのだ。
貴族社会で、結婚前に妊娠がバレたら何を言われるか分からない。
慌てて結婚式を挙げるしかなかったのだ。
式が終わり、披露宴会場に移ろうとした時に、1人の男爵令嬢がナイフを持ってスタイン目掛けて走ってきた。
それにいち早く気が付いたサイモンが取り押さえる。
「スタインを殺して、あたしも死んでやる!!」
彼女はスタインに遊ばれ捨てられた男爵令嬢だ。
「えっ!?スタインどういう事?」
どうやらリシェルは、知らなかった様だ。
スタインは、女遊びが激しく、隠し子も居るんじゃないかと、もっぱらの噂だ。
「リシェル、まさか知らなかったの?スタイン様は、遊び人で勉学も下位なのよ。弟のルバルト様は
真面目で勉学も上位。ルバルト様が家を継ぐのではと噂されているわ。本当にそうならないと良いわね」
披露宴は中止になり、怒ったビルダー侯爵は、スタイン様は親子の縁を切られ、弟のルバルトに爵位を譲ると宣言した。
私から奪い取りたい為だけに、婚約者を寝とって優越感を得た妹。
貴女は、それで幸せになれたの?
「帰ろう」そう言って差し出されたサイモンの手を取り私達は歩き出した。
END
*****
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
「ミシェル…ビルダー侯爵家からスタイン子息の婚約者をミシェルからリシェルに変更したいと言ってきた」
「まぁそれは本当ですか?」
「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」
「畏まりました。では失礼致します」
私が部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。
「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。お姉様はスタイン様と結婚が出来なくなって残念ね♪」
残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!
ビルダー侯爵家スタイン様とアモス伯爵家の私ミシェルとの結婚は、政略結婚だった。
負債を抱え、このままでは没落も免れない我がアモス伯爵家に、援助をしてくれると言ってきたのがビルダー侯爵家。
但し、その援助には、条件が付いていた。
それは娘をビルダー侯爵家に嫁がせる事。
お父様は、私とリシェルのどちらを嫁がせるか悩んだ。
決め手は、お母様の「リシェルは、淑女教育が終わっていないわよ」の一言。
侯爵家に嫁ぐとなれば侯爵夫人教育を受けなくてはならない。
淑女教育も終わっていないリシェルに侯爵夫人教育は、無理だと判断したのだ。
お父様から、ビルダー侯爵家のスタイン様との結婚が決まったと言われた時、私とリシェルは驚き、悲しんだ。
私には、皆に内緒で最近、放課後の僅かな時間を一緒に過ごす彼がいたから…。
リシェルは、侯爵家に嫁ぐのが自分ではなかったからだろう。
スタイン様と婚約するからとバルナ伯爵家サイモンと放課後に会うのを止めた。
変な噂が立ち、サイモンを傷付けたくなかったのだ。
サイモン様は三男の為、バルナ伯爵家を継ぐ事は出来ない。その為、剣術を磨き、学園卒業後は騎士団に入隊する。
伯爵家の令嬢として生まれたミシェルは、サイモンと結婚したかったが、家の為の結婚が当然の貴族世界。
お父様に話してサイモンとの結婚を認めてもらいたい。と思いながらも話せずにいた。
サイモンもミシェルと結婚したいと思いながらも、爵位を継げない自分が伯爵令嬢との結婚を許される筈がないと諦めていた。
リシェルは、姉のミシェルがスタイン様の事を何とも思っていないとは知らなかったのだ。
ただ姉の婚約者を奪い取って、悔しがる顔が見たかい。自分こそ侯爵夫人に相応しい!と思っていたのだ。
お姉様からスタイン様を奪い取れば良いんだわ♪
姉に会いに来るスタインに胸の開いたワンピースを着て、上目遣いで胸を押し付けた。
「ずっとスタイン様をお慕いしておりました。…お姉様の婚約者になってしまうなんて…お願い、1度だけで良いのです。思い出を下さい…」
「今日はミシェルと出掛ける約束をしている。明日、ビルダー侯爵家へ来れるか?」
「はい、必ずお伺い致します!」
次の日、ビルダー侯爵家に行くと、スタインは、当然の様にリシェルをベッドに押し倒した。
「ス、スタイン様…やっぱり駄目ですわ。お姉様を裏切ってこんな事…私がスタイン様を諦めれば…」
「ならばミシェルと婚約を解消し、お前と婚約すれば問題あるまい」
「あぁスタイン様、本当に?嬉しい~♪」
ふふふ、お姉様の悔しがる顔が目に浮かぶわ♪
スタイン様とミシェルの婚約が解消された。
ミシェルは、サイモンに会いに行きたかったが「今さら何しにきた!?」と言われたらと怖くなり行く事が出来ない。
サイモンは、友達からミシェルがビルダー侯爵家子息と婚約を解消したと聞いた。
彼はミシェルの元に走り出す。
「ミシェル!」
「サイモン」
初めて2人は抱き合った。
各々の屋敷に戻ると、直ぐに父親に会いに行った。
「お父様(父上)お話が有ります。私はバルナ伯爵家サイモン(アモス伯爵家ミシェル)と結婚したいと思っております。どうか許して頂けないでしょうか?」
「サイモン君と…彼は、三男だったね…」
「あら?ミシェルを貰ってくれるのなら良かったじゃない。婚約解消された娘を嫌がる貴族は多いわ。私は賛成よ!」
お母様の一言で、バルナ伯爵が申し込んできたら了承すると決まった。
「アモス伯爵家のミシェル嬢は、最近婚約解消されたと聞いたが…」
「妹のリシェル嬢とスタイン様が婚約されました」
「周りは良く言わんかも知れんぞ?」
「私は爵位を持ちません。父上と兄上は、少しの間、何か言われるかも知れませんが、どうか私とミシェルの結婚を許して下さい!」
「父上、サイモンが頭を下げて頼んでいるのだから、許してあげてはいかがです?私はサイモンが幸せになるなら何を言われても気にしませんよ」
兄の言葉に父上も了承し、アモス伯爵へと縁談の申し込みをしてくれた。
「お姉様、次の婚約者は家を継がない三男なんて可哀想に…ふふふ」
「リシェル、勘違いしている様だけれど、私がサイモン様との結婚を望んだのよ」
「まぁ負け惜しみですか?」
「そう思いたければ、そう思えば良いわ!」
卒業後、リシェルは、私達より先に結婚式を挙げた。
まだ目立ってはいないが妊娠してしまったのだ。
貴族社会で、結婚前に妊娠がバレたら何を言われるか分からない。
慌てて結婚式を挙げるしかなかったのだ。
式が終わり、披露宴会場に移ろうとした時に、1人の男爵令嬢がナイフを持ってスタイン目掛けて走ってきた。
それにいち早く気が付いたサイモンが取り押さえる。
「スタインを殺して、あたしも死んでやる!!」
彼女はスタインに遊ばれ捨てられた男爵令嬢だ。
「えっ!?スタインどういう事?」
どうやらリシェルは、知らなかった様だ。
スタインは、女遊びが激しく、隠し子も居るんじゃないかと、もっぱらの噂だ。
「リシェル、まさか知らなかったの?スタイン様は、遊び人で勉学も下位なのよ。弟のルバルト様は
真面目で勉学も上位。ルバルト様が家を継ぐのではと噂されているわ。本当にそうならないと良いわね」
披露宴は中止になり、怒ったビルダー侯爵は、スタイン様は親子の縁を切られ、弟のルバルトに爵位を譲ると宣言した。
私から奪い取りたい為だけに、婚約者を寝とって優越感を得た妹。
貴女は、それで幸せになれたの?
「帰ろう」そう言って差し出されたサイモンの手を取り私達は歩き出した。
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