【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第三章

58. ガバラ

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レイに離されつつも見失うまいと必死に後を追う。魔獣の鳴き声と人の怒号が近づいてきた。

「ライファ!!」

緊迫を帯びたレイの声に身の周りに神経を配り倒れてきた木を回避した。レイがああいう声を出した時は大抵私の身に危険が迫った時だ。

「さんきゅ。」

短く礼を言ってシューピンを急上昇させる。そこから見えたのは5つの首のある生き物だった。まるで花のようだ。鱗を纏った硬そうな肌、中心部で繋がり、そこから花びらのように5つの体が伸びておりその体の先にそれぞれ顔がついている。しかもその体はどんどん大きくなり続け、今や4mを超える大きさになっていた。その魔獣相手に4人のハンターが戦っている。魔力ランクの高そうな5つ頭の魔獣相手では実質4対5で戦っているようなものだ。ハンターの中には肩から血を流している者もいた。

血・・・。

ゾクリと赤黒い闇が近づいてくる。足が小刻みに震えはじめ、かろうじてシューピンの上にしゃがみ込んだ。このままではいつ墜落するか分からない。頭の中では分かっているのに体が言うことを利かず、シューピンに捕まっているのが精いっぱいだ。

「うわあああああああ!!」

耳をつんざく叫び声。点と点が重なり引き戻される。
暗転する世界。ここはターザニアだ。

「ライファ!」

レイのお守りに助けられ、守られ、誰一人助けることも出来ず、自分だけがのうのうと生き残った。次々と消えていく灯りと血の臭い、月に照らされた残虐。

「ライファ!!」

皆死んでしまった。みんな。

「ライファ!!ちゃんと見ろ!ここを見ろ!」

何もできなかった。

「ライファ!助けが必要だ!助けろ!」

もう終わってしまった。

「ライファ!出来ることがあるだろ!!」

出来ることが・・・ある?



バチンっと何かが私にぶつかり、肩に止まり耳をかじられた。

「いっ!」

ベルだ。キューン!!と大きな声で叫ぶ。

「ライファ!」

鮮やかなレイの声。シューピンの上に腹ばいになりながら声の方を覗く。自分の置かれている状況が一気に流れ込んできた。私にできることはある。今、正に一人のハンターに魔獣が噛みつこうと身構えたところだった。そのままの体勢で小弓を取り出しウニョウ玉を撃つ。ウニョウ玉が魔獣に絡まり魔獣が怯んだ。噛みつかれようとしていたハンターがその隙に攻撃に転じたのを見て、シューピンの上に立ち上がろうとしたが足が心許ない。

だめだ、ちゃんと力が入らない。
チッ、軽く舌打ちをしてシューピンの上に横向きに座った。現状を嘆いている暇などない。助けるんだ。

レイが一つの頭を切り落とした。

グガーーーーッ!!

痛みに魔獣の3つの頭が天を仰ぎ、怒りの眼差しで大きな口を開けてハンターたちに体当たりをする。レイは負傷しているハンターの元へ駆け寄り、ハンターの代わりに応戦した。私がウニョウ玉を投げつけた頭は、ウニョウによって口を封じられたままハンターの剣で地面に縫い付けられていた。残りは頭3つ。

「ライファ!」
「了解!」

私がレイに向かってウニョウ玉を打つとウニョウ玉はレイを避けて魔獣の頭にヒット。そのまま頭に巻き付いた。シューピンで移動しながら残り二つの頭にもウニョウ玉を発射する。魔獣がウニョウに口を塞がれ首を振って暴れまわった。

レイは空中に3つのリング型の魔力を浮かべるとそれぞれの頭に飛ばし、リングが魔獣の首におさまる。レイが目を少し伏せて右手で何かを握りつぶすような動きをすると魔獣の首にかかったリングが明らかに締まっていく。

グッググ

魔獣は叫ぶことも出来ずに苦しそうに悶え、少し痙攣したのちその場に崩れ落ちた。すると体はみるみると縮まり2m程の大きさになった。魔獣が絶命したのを確認すると皆が怪我人の元へと集まった。その中心にいるのはレイだ。レイが怪我をしたハンターにヒーリングを施しているのだ。ありがとう、ありがとうと頭を下げているハンターたち。その様子を少し離れた所から見ていた。

「一応傷は塞がったけど、街に戻ったらちゃんとしたヒーラーに診てもらった方がいいと思います。」
「ありがとうございます。本当に助かりました。お二人にはなんとお礼を申し上げたら良いか。」

皆の視線が一気に私に集まる。

「すみませんが、その服の血の部分を何かで隠してもらえますか。連れは血が苦手でこちらに近付けないみたいで。」

レイの言葉に血を見ないように視界から外したまま曖昧に微笑む。震えは止まったもののザワザワとした感覚が抜けない。

「ライファ、大丈夫?」
「うん、なんとか。」

ベルが空から降りてきて私の肩に止り、心配そうに私の頬に頭をこすりつけた。

「ベル、さっきはありがとう。助かったよ。」

レイは私の側まで来ると安心させるように背中に手を回した。レイと一緒にハンターたちの元へ行くと、みんな擦り傷は追っているものの大きなけがをしたのは噛まれたハンターだけだった。

「二人とも凄いですね。あれだけの魔力を扱っておきながらまだ余裕があるとは。もしかして貴族様ですか?」

後半の方はレイに向けての言葉だ。

「貴族なのは私だけで、訳あって旅をしているのです。」
「旅のお方でしたか。お二人が通りかかってくださったおかげで命拾いしました。」

ハンターたちはどっとその場に座り込んだ。

「ガバラに遭遇した時はもう生きて帰れないかと思いました。」
「ガバラですか?」

私が尋ねると20代の若いハンターが教えてくれた。

「ガバラはこの森に住む魔獣ですが普段は地中深くで生活しているため、遭遇することは殆どないのです。」

続いてこのハンターチームの最年長、リーダーと思われる40代後半の男が言った。


「あなたたちがいなければ倒すことは出来なかったのに、図々しいお願いですがガバラを皆で均等に分けさせていただくわけにはいかないでしょうか。皆生活がありますので・・・。」

「均等だなんてとんでもない。この魔獣は皆さんでどうぞ。旅人の私たちではこんなにたくさんの量を持ち歩くことは大変なので。いいよね?ライファ。」

「うん、勿論。」

「いやいや、さすがにそれは・・・。ガバラは珍しく複製効果を持つ魔獣なのです。珍しい効果で夢のある薬材なので調合師には人気がある薬材なんですよ。売ってもいい値段で売れますし持っておくと旅に役立つと思います。」

珍しい効果、調合師に人気、夢ある薬材、なんと魅力的な言葉たちだろう。

「ぜひ!!ぜひいただきます!!」
「あなたたちが仕留めた魔獣なんだけどね。」

リーダーはそう笑うと、他のハンターたちはリーダーの指示に従い魔獣を解体していった。

「効果を持っているのはこの鱗です。肉は獣らしい肉だが食べられなくはないから食料として持っていくといいですよ。」

リーダーが3分の1の量を分けてくれたが、元が2mの大きさの魔獣だ。体の半分ほどの魔獣の山から半分くらいを頂くことにした。

「これだけでいいのですか?命を助けていただいた上にヒーリングまで施してもらって、なんだか申し訳ない。」

「ん~、では、この辺に薬材がたくさん生えているおススメの場所を教えていただくことは出来ますか?回復系の薬材が欲しくて。」

「命の恩人になら喜んで案内しますよ。」

その日手に入れた薬材はアオイ虫の蜜【引力効果4】、ガバラの鱗【複製効果6】、ザーミャの葉【疲労回復効果4】、ムグゥーの実【マッサージ効果3】、パーラップの蕾【筋肉増強効果3】だ。この他に果物を4つと、サラダ葉という野菜、チチの実という木の実も手に入れ大満足の収穫になった。ハンターたちと別れ街に戻るとブローチを受け取り宿へ帰宅した。


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