『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙

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3 ◇不憫な娘

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3.

 娘がここまでになるまで、自分は手をこまねいていただけ
というなさけなさが、俺を襲う。


 ❀
 妻の様子を見ていると、俺に対しては出産前と同じように彼女からの愛情を
向けられているのを感じることができる。

 しかし、自分が腹を痛めて産んだというのに、何故か娘には愛情が湧かないようだった。

 しかも、俺が娘に愛情を注ぐことも妻は嫌がる素振りを見せるのだ。

 可愛いと思える嫉妬なら良かったが、妻の心情はそんなものを飛び越えたところに
あるようで、とてもじゃないがそれは理解に苦しむものだった。



 そんな妻だったので、娘も俺に甘えてくるのは妻の居ない時だけだった。

 娘が不憫でならなかった。
 そうして俺たちの家庭は妻中心の歪なモノになっていった。


 それで──
俺は娘の入院をキッカケに本気で妻との離婚を考えるようになっていった。


 そんな時、娘の入院先で看護師と患者の保護者という立場で
高橋砂央里と出会った。

 砂央里は暖かみのある美人看護師で娘の紀子によくしてくれた。


 娘、紀子はその経験したことのない暖みに触れ、それこそ全身全霊で
砂央里に縋りついていった。

 そんな紀子の気持ちに応えるのは、きっと彼女には荷が
重すぎるのではないだろうかと俺は密かに懸念していた。


 だから、砂央里はどこかで線引きするだろうと諦観していたのだが
彼女は職業の範疇での割り切った対応ではなく、出来る限りの許容範囲で
紀子を受け止めてくれた。


 そのような恵まれた環境下で日々を過ごし、紀子は20日間の
入院を終えて退院した。


 夢のような入院生活からあの母親の居る殺伐とした家へ
帰らねばならない娘が可哀想でならなかった。

 娘が栄養失調で運ばれたということが病院からの通報により
詳らかにされたため、その後行政から注意と指導が入ることになった。

 そのため幸いにも、このことで妻からは一切の反対もなく、紀子を
俺の実家でしばらく預かってもらえることになった。


 そして紀子が実家での生活に馴染んだ頃、俺は妻にいつ離婚を
切り出そうかと、そればかりを考えるようになっていた。



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