嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第1-1節:逆転への一手

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 沈黙と暗闇に支配された深夜の寝室で、私とリカルドは暗殺者アサッシンの襲撃を受けた。

 敵は夜目がいて自由に動き回れる一方、私たちはその暗さと狭い空間のせいで充分に剣を振るえない。また、相手の実力や戦い方だって分からないから、どうしても防戦重視になる。

 しかもこの建物の内部や周辺にいる人たちは薬によって眠らされているらしいから、助けが来るのも期待できない。むしろ時間が経てば経つほど、そちらに回っていた暗殺者アサッシンの一味がここへ集まってくる。

 強大な攻撃魔法を使って敵を排除しようにも、こんな狭い場所では私たち自身も巻き添えを食ってしまう。建物そのものだって崩壊しかねない。

 何もかもが不利な状況で、絶体絶命の大ピンチ。どうすればいいんだろう……。

 額には自然と汗がにじみ、頭の中では焦りだけが募っていく。私は護身用のナイフを握り締めつつ、敵の動きに意識を集中させ続ける。

 一方、リカルドは私をかばうような位置関係で暗殺者アサッシンと対峙し、ショートソードを構えている。その間近にそびえる背中は大きくて頼もしい。

 そんな中、彼は視線を敵に向けたまま、私にささやきかけてくる。

「シャロン、照明ライティングの魔法は使えるか?」

「あ、う、うんっ!」

「それなら眠り解除ウェイクの魔法は?」

「ゴメン、それは使えない……」

「ん……む……」

 リカルドは少し複雑そうな声を上げつつ、わずかにうつむいて考えこんだ。もちろん、意識は暗殺者アサッシンへ向けたまま、常に警戒を続けているけど。

 ちなみに彼が私に対してパッとしない反応をしたのは、自分の目論見もくろみが外れたということだからなんだろうな。私による照明ライティング眠り解除ウェイクのサポートがあれば、この場はなんとかなるというような計算があったんだと思う。

 きっとリカルドは防御に徹して時間を稼ぎ、目覚めたみんなの助けを待つという戦術を取ろうと考えていたに違いない。

 そして私が眠り解除ウェイクを使えないと知った瞬間、それと同様の効果を発揮させるがあるということも頭の中によぎったはず。ただ、彼は優しいから『その決断』を下せないでいる。だから複雑そうな声を上げたのだ。


 その決断というのは、私が精霊の力を使うこと――。


 眠りを司る精霊の力を借りれば、深い眠りに落ちているみんなを目覚めさせることも暗殺者アサッシンたちを眠らせることも出来る。もっとも、同時にその両方を扱うのは無理だから、より確実な選択をするなら前者ということになるだろうけどね……。

 魔法でも敵にかけるより味方にかける方が色々と安心。敵はどんな魔法耐性を持っているか分からないし、けられてしまう可能性だってあるから。その点、味方ならそうした心配がない。

 とにかく善は急げだ。私は瞬時に決断をして、リカルドに提案する。

「――分かった。まずは照明ライティングの魔法でこの室内を明るくするよ。そのあと、『あの力』で建物内にいるみんなを起こしてみる。だからリカルドはその間、時間を稼いで」

「っ! ダメだ、『あの力』だけは絶対に使うな! 絶対にだ!! キミは照明ライティングの魔法だけを使ってくれればいい。あとは僕がなんとかする」

「でも緊急事態なんだし……」

「今は議論しているひまなどない。さぁ、早く照明ライティングの魔法を」

「う、うん……」

 私は渋々ながらもうなずいた。

 強く反対しなかったのは、リカルドの気迫に押されたということもある。でもそれよりも、彼の提案は私を気遣きづかう優しさから来るものだというのも分かるから。

 だから早速、私は手振りを交えて呪文スペルを唱える。

照明ライティング!」

 私の力強い声がその場に響いた。これで室内はまばゆいばかりの光に照らされる――って、えっ!?

 不可解なことに、なぜか辺りは深い暗闇のままだった。

 呪文スペルを間違えたということはないし、なにより私の魔法力は確かに体から発散されている。ワケが分からず、私は少し混乱する。

「なんでっ!? なんで魔法が発動しないのっ!?」

「くっ、対抗魔法カウンターマジックかっ!」

 即座に焦ったような声を上げるリカルド。それを聞いて私はハッとする。


(つづく……)
 
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