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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第5-2節(第6幕:完結編):揺らめく影
しおりを挟む……あぁ、なんて素敵な時間なんだろう。私も心と体が温かくなって、幸せを感じる。
「リカルド、私はあなたの妻なんだから素直にもっと甘えて良いんだよ。これくらいのことなら、いくらでもしてあげる。ただし、その姿を見せるのは私にだけだからね?」
「もちろんだ……。こんな姿、キミにしか見せられない。だからキミも僕に甘えてくれていい。いや、僕にだけ甘えてくれ」
「……じゃ、今度は私のお願い。私をギュッと抱き締めて」
「うん、分かった……」
リカルドは体勢を変えて正面に座り、私の体を少し引き寄せるようにして強く抱き締めてきた。
その際に私たちの使っていたカップがベッドの上に落ちて転がったけど、幸いにもお互いに中身をほとんど飲み干した状態みたいだったから零れなかったし、割れてもいない。
なんだか……いつもよりリカルドの体が熱いような気がする……。
彼の匂いも息遣いもハッキリと分かる。頭の奥が痺れるような感じがしてきて心地良い。まるで夢の世界にでもいるかのようだ。
「シャロン……キミの心臓がドキドキしているのが伝わってくる……」
「それはリカルドも同じだよ……。でも私、こんなにも熱くて心が満たされて落ち着くなんて。ずっとこうしていたいな」
「お望みとあらばいつまででも。ただ、残念ながらそうもいかないようだ。無粋なお客さんがおいでのようだからな……」
「……え?」
状況が分からず、目を丸くする私。まるで冷や水を浴びせられたかのように意識が現実へと引き戻される。
一方、すかさず身を翻して立ち上がったリカルドはベッドの横に置いてあったショートソードを手に取り、私を庇うような体勢で身構える。彼の鋭い視線の先には出入口のドアがある。
さすがにこの段階になれば、私もその向こう側から漂ってくるドス黒い感情に気付く。ゆえに万が一に備えてベッドのサイドボードに置いてあった護身用のナイフを反射的に手に取り、警戒心を最大限に高める。
程なくドアが静かに開き、室内に黒装束の人物が入ってくる。
相手はひとり。体格は私よりも少し小柄だろうか。目元以外は布で覆われ、表情は分からない。ただ、その鋭く光る瞳には敵意と殺意が満ちている。
その人物に向かってリカルドは静かに声をかける。
「暗殺者か……。誰の差し金だ?」
「…………」
「フッ、黙秘か……。まぁ、プロであればそれは当然の反応だな。ならば力尽くで口を割らせるだけだ」
「無理をしないで、リカルド。まずは大声でみんなを呼んで対処を――」
リカルドに対して私が冷静に声をかけていると、その途中でそれに割り込む形で暗殺者が口を開く。
「それは不可能だ。今ごろ我が同志たちがこの建物内やその周囲にいる者たちを薬で深い眠りに落としているはずだからな。場合によっては命をも奪っているかもしれぬ」
「なるほど……。だから貴様は単独で静かに僕らを襲撃したワケか。下手に騒いで、城から僕らを護るための増援がやって来ては困るものな」
「闇に紛れてターゲットを静かに始末する。誰にも気付かれぬようにな。それが真の暗殺者よ」
「考え方は理解する。実に合理的だ。だが、相手の実力を見誤ったのは失敗だったようだな。僕もシャロンもそう簡単にはやられんぞ?」
「貴様こそ状況が分かっていないようだな。もうすぐ、我が同志たちがこの部屋に集まってくる。暗い中、夜目の利く我ら暗殺者数人を退けられると思うのか?」
「ぐ……」
リカルドはやや焦りの表情を見せながら強く奥歯を噛んだ。
確かにこの狭い空間と暗さでは充分に剣を振るえない。しかも相手の実力や戦い方だって分からないから、どうしても防戦重視になる。そして時間が経てば敵の数が増える。
かといって強大な攻撃魔法を使おうにも、こんな狭い場所では私たち自身も巻き添えを食ってしまう。建物そのものだって崩壊しかねない。何もかもが不利だ。
これは絶体絶命のピンチかも……。
(第6幕:終幕/第7幕へつづく……かも……!?)
※次回の更新は未定ですっ。気長にお待ちいただければ幸いですっ!!
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