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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第5-1節:ふたりきりの夜、同じ寝室で……
しおりを挟むこうして夜もすっかり更けた頃に舞踏晩餐会が終了し、私たちは宿所へと戻る。ポプラやナイルさんも同じ建物内にある別室にそれぞれ入り、今ごろはゆっくりと休息をとっていることだろう。
もちろん、建物の内外はフィルザードの兵士さんだけでなく、スティール家の兵士さんたちも交代で警護してくれている。
――そして今、室内にいるのは私とリカルドだけ。
喧噪に包まれていた舞踏晩餐会の会場とは打って変わって、辺りは沈黙に包まれている。また、ランプの柔らかく温かみのある光が室内を優しく照らしている。
「ふぅ……」
私はフィルザードの屋敷にいた時と同じように、お茶を淹れてリカルドとともにそれを啜る。当然、水も茶葉もフィルザードから持ってきたものだけど、念のため口にする前にも毒などが仕込まれていないか魔法で確認してあるので心配はない。
口と鼻の中に広がるお茶の旨味と香り。やっとひと息がつけたような気がする。
「お疲れ様、シャロン。緊張状態が続いて大変だっただろう」
ベッドの上、私の隣に腰掛けているリカルドがお茶を啜ってから声をかけてきた。
すでに私たちは部屋着に着替え、いつでも眠る準備は出来ている。ただ、寝る前にお茶を飲んで会話をするのがクセになっているというか、お互いにそれをするのが自然のような感じになっている。
だからどちらが言い出すともなく私はお茶を淹れていたし、彼はそれが出てくるのを待っていたのだった。
ちなみに着替えだけど、リカルドはクローゼットのドアに隠れながら素早くやっていたみたい。私はリカルドになら見られても良いやって感じで、堂々と着替えていたけど……。
ただ、やっぱり昼間と違って暗いからか、少しドキドキしていたのも事実。結果的には何もなくて、悲しいやらホッとするやら複雑な気分かな。
「さすがに今日は僕も疲れた。こうしてキミの淹れた美味しいお茶を飲んで、ようやく息をつくことが出来たところだ」
「まぁ、大変なのは覚悟していたことだけどね。それでも……うん……やっぱり私も想像以上に疲れたかも」
「そうだろうな。……で……だな……その……」
なぜかリカルドは急に口ごもった。しかも軽く俯き、頬を赤らめながらモジモジしている。ハッキリと意思表示をしないなんて、ちょっと彼らしくないような気がするけど……。
訝しんだ私はキョトンとしながら首を傾げる。
「っ? どしたの?」
「えっと……もし良かったら……頭を……撫でてくれないか……?」
「えっ?」
「な、なんでもないっ! き、聞かなかったことにしてくれっ!」
リカルドは顔や耳を真っ赤にして明後日の方を見ると、夢中でカップのお茶を飲み干した。ただ、お茶は淹れたばかりでまだそんなに温度が冷えていないはずだから、口の中が熱かっただろうに。
やせ我慢をしているのか、熱さに意識が向かないほど照れているのか……。
ただ、そんな普段とは違った子どもっぽい姿を見せる彼が可愛らしく思えて、私は穏やかに微笑んでしまう。
「ふふ、ダーメ! もうしっかり聞いちゃったもん。……リカルド、お疲れ様」
私は座り直して彼との距離をさらに詰めると、その頭を愛おしく優しく撫でた。
彼は最初こそ体をビクッと震わせて驚いていたけど、すぐに体から力が抜けていくようになって大人しくなる。そして彼からも頭や体を私の上半身に預け、熱病にかかったかのようなボーッとした表情でリラックスしている。
(つづく……)
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