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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)
第3-2節:いくつもの真相と違和感
しおりを挟むやがて感情が爆発するかのように、ゼファルさんは敵意を剥き出しにしてポプラを責める。
「これはっ……これはどういうことなんだっ、ポプラよぉッ? お前は裏切り者だったのかよっ!?」
「裏切り者? それは違うのです。私は最初からこっち側の人間なのです。元に戻っただけですよ」
「見損なったぜっ、ポプラ! お前とシャロン様の絆は嘘だったのかよ?」
その言葉にポプラは一瞬、体が小さく跳ねるように反応した。そしてわずかな間が空いたあと、ニタニタと薄笑いを浮かべながら侮蔑の感情を含ませて吐き捨てるように言い放つ。
「その通りなのですっ! 絆なんてものはないのです! 何もかもっ、全ては任務のための演技に決まってるじゃないですかぁ!」
「ってことは、まさか山道でアンデッドを手引きしたのもっ!」
「えぇ、私なのです。事前に魔方陣を仕掛けておいて、私たちがその近くに差し掛かったところで発動させたというわけです。私がシャロンを庇って怪我をしたのは、お前たちに疑われないようにするためだったのです」
「クズが……反吐が出るぜ……」
ゼファルさんは嫌悪感たっぷりに言い捨て、苦虫を噛み潰したような顔をした。リーザさんや兵士さんたちも同じような反応を示し、特にソフィアちゃんは号泣しそうになるのを必死に我慢している。
一方、リカルドとナイルさんは相変わらず厳しい表情のまま静かにそうしたやり取りを見守り、その心境は掴めない。
何かの策を考えているのか、それとも逆転の足かがりとなる隙が生まれる瞬間を見逃さないよう身構えているのか――。
いずれにせよ、少なくとも私には今のポプラの言葉が偽りにまみえているのではないかという気がしてならない。どうしても腑に落ちない。
だって山道で私がアンデッドから致命傷になりかねない攻撃を受けそうになったあの時、ポプラが演技であんな行動をしたとはどうしても思えなかったから。
下手したら彼女自身の命すらも失いかねない状況と深刻な怪我。みんなに疑われないようにするにしては度が過ぎている。その目的であれば、もっと軽傷で済ませるように仕組んでもいいはずだ。
なによりあれはポプラの体が咄嗟に動いて、本気で私を助けるためだったように思える。複雑なことを考えてのものじゃない。
――と、そんなことを考えていると、今まで沈黙していたリカルドがポプラに対してゆっくりと口を開く。
「……シャロンが当家に嫁いできた直後、僕の部屋に怪しい紙切れを差し込んだのもお前の仕業だな?」
「えぇ、そうなのです。シャロンとお前の仲がうまくいったら、都合が悪いらしいので」
「ほぅ? 都合が悪いとは誰がだ? そいつからの指示なんだな?」
「っ!?」
小さく息を呑み、目を丸くするポプラ。彼女がそのリカルドの巧みな誘導尋問に引っかかった様子を見て、暗殺者のひとりがすかさず怒鳴る。
「余計なことを喋るなっ、このドジがっ! また殴られたいのかっ?」
「ヒッ! も、申し訳ありませんっ! 許してほしいのですっ!」
ポプラは瞳に恐怖と怯えの色を浮かべ、慌てて謝罪の言葉を口にした。
またということは、今までにも何か失敗をするたびに暴力を振るわれてきたんだろう。その痛みと記憶が体と心に染みついていて、反射的に従順な反応をするようになってしまっているに違いない。
……あ……っ。そういえばポプラは、自分の体には誰にも見せたくない古傷があるとか言ってたっけ……。
それを他人に見られるのが嫌だから、誰かと一緒にはお風呂に入りたがらないんだった。なるほど、その傷は暗殺者やその一味から受けた虐待の痕だったのか……。
だとするとポプラがますます可哀想に思えてくるし、そんな酷いことをしたヤツらに対して怒りがこみ上げてくる。
(つづく……)
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