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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)
第3-3節:ポプラの本心?
しおりを挟む一方、そんなポプラと暗殺者のやりとりを達観したような様子で静かに眺めていたリカルドは、深いため息をつく。
「まぁ、事ここに至れば、それが『誰』なのかの察しは付いているがな。ならばジョセフにあらぬことを吹き込んだのも、ゴーレムを操ったり水路の作業員たちに眠り薬を盛ったりしたのもポプラ、お前だな?」
「…………」
「ふむ……。その沈黙や状況を考えれば、それは肯定ということなのだろうな」
さすがはリカルド、この場のやり取りにおいては彼の方が何枚も上手だ。
するとその様子を見て暗殺者のひとりがなぜか思わず小さく吹き出し、観念したかのように白状し始める。
「まぁ、すでに過ぎたことだし、それくらいなら教えてやる。ポプラは我らが従える前から類い希なる召喚魔法の使い手だったからな。ゴーレムの件もアンデッドの件も、だからこそ計画された作戦というわけだ」
「だとすると魔法以外――つまり眠り薬などの調合や扱い、そのほか間者としての様々な技術については貴様らに仕込まれたものということか」
「コイツはドジだが、裏稼業における技術的適性は高い。それでいて決して俺たちに逆らえん理由がある。実に使いやすい駒よ」
暗殺者たちは満足げにクククと薄笑いを浮かべた。それに対してポプラは誰にも分からないくらい、唇をわずかに噛んで眉を曇らせる。
そしてそれらの反応を見て、私の心の中で『あの推測』は確信へと変わる。
――やっぱり彼女は本心で間者をやっていたわけじゃない!
今までずっと薄々感じてきたことだけど、色々な事件を実行していたのは間違いなくポプラ。それは様々な状況証拠やさっきのリカルドとポプラ、暗殺者たちのやりとりから考えても明らかだ。
ただ、たくさんの葛藤や心の痛みを感じつつ、無理矢理にやらされていたに違いない。
なにより今まで私に見せてくれていた彼女の笑顔や好意的な感情が、全て嘘だとは思えない。ううん、あの姿が本当のポプラなんだ!
だったら私はもう迷わない。今後の行動は決まっている。そのある決意を胸に、この事態に臨むことにする。
「さぁ、俺たちを逃がしてもらおうか?」
暗殺者のひとりがリカルドに対してアゴで指図をした。
それに対してリカルドは相手を睨み付けたまま小さく首を横に振る。
「まずはシャロンを解放しろ。そうすれば僕たちは追わん。どこへなりとも勝手に行くがいい。フィルザード辺境伯の名誉にかけて、その約束は守る」
「ダメだ。信用できん。俺たちの安全が保証されるまで、人質を解放するわけにはいかない」
「やれやれ、貴様らこそ信用できんのだがな……」
「――おい、ポプラ。コイツらが少しでも変な動きをしたら、躊躇なくその娘を殺せ! いいなっ?」
「っ! ぁ……ぅ……」
暗殺者から強い口調で命令を受けたポプラだったけど、彼女は口をつぐんだまま苦悩と迷いに満ちた悲しい瞳で佇んでいる。
きっと私を殺すよう明確に、しかも私の目の前で言われて即答が出来なかったんだろうな。でもこんなにも心が傷つけられてなお暗殺者に従い続けるなんて、彼らに『逆らえない事情』というのは何なのだろうか?
「返事はどうした、ポプラ! 逆らえばどうなるか、分かっているよな?」
「は、はいなのです……。シャロン……を……殺すのです……」
辛うじてひねり出したような、細く弱々しい涙声をポプラは漏らした。
チラリと視線を下に向けてみると、私の首元に突きつけているナイフとそれを握る手が大きく震えている。もはや心情を隠す気はない――というか、感情の揺らぎが限界を超えて表に出てしまっている感じだ。
それを思うと私まで胸が苦しくなってきて、もう見ていられない。
(つづく……)
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