嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第5節(第7幕:完結編):感謝と鎮魂の想いを込めて……

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『願いは叶えた……。ポプラは間もなく息を吹き返すことだろう……』

 不意に私の耳に響いてきた精霊の声――。

 途端に体には全ての感覚が戻ってきて、手足にも温かな流れが感じられるようになる。全身に巻き付いていた見えない圧力のようなものも一気に開放され、心と体は綿のように軽い。

『あれ……私……精霊さんの声が聞こえる……』

『当然だ。なぜならお前の精霊使いの力は失われていないからな』

『えっ?』

『我はお前の本当の覚悟と我にも関知できない深層意識の想いを試した。そういうことだ』

『じゃ、じゃあ、さっきおっしゃっていたというのは、少し誇張した表現だったんですね? 嘘とまではいかないけどハッタリみたいな?』

 私の問いかけに、賢者の石の精霊はわずかに微笑んだような気がした。つまりそれを肯定したという意味なんだろう。

 そして彼はすぐにおごそかな空気に戻って話を続ける。

『念のために言っておくが、万物の書庫アカシックレコードにアクセスすれば我に見通せぬことはない。ただ、心は常に変化し続けるものゆえ、どうしても多少のタイムラグが生じる。よって今その瞬間の【生きた心】を知るなら、自ら想いを表してもらうのが最善なのだ』

『今その瞬間の心……か……。そっか、そういうことか……』

『シャロンよ、お前は今後も精霊使いの力を行使することが可能だ。ただし、今回の件で反動が全くないわけでもない。これから数週間は力の行使が出来ないだろう』

『あ……。でもたったの数週間ですか? こういうのって数年とか、それくらい長い期間の反動がありそうなものなのに……』

 死んだ人間の蘇生って自然の摂理に逆らうようなことだから、それだけ大きな力も必要になるはず。実際、さっき私の心と体には今までに経験したことのない負担がかかっていた。

 そのせいで私の魔法力はすっかり空っぽだし、全力で一日走り回った時のような疲労感もある。そして精霊は何も言わないけど、もしかしたら多少は私の寿命も削られているかもしれない。

 だから力の行使の反動として、精霊使いの力が何年も使えなくなっていても不思議じゃないと思うのだ。でもその縛りが数週間で済むなんて、良い意味で驚きだ。

 すると賢者の石の精霊はそんな私の心情を察して説明を補足してくれる。

『実際に年単位で力が使えなくなる者もたくさんいる。ただ、お前は精霊使いの中でも力が強い方だからな。それゆえにその程度で済んでいるに過ぎない。今後もこの力を大切にせよ』

『はいっ!』

『そろそろ我の意識が消滅するようだ。欠片かけらに秘められていた力も完全に失われることだろう。あとは砂となって崩れ去るのみ。命の復活にはそれだけ莫大ばくだいな力を消費するからな』

『……ありがとう。賢者の石の精霊さん』

『さらばだ、シャ……ン……。誇り……の力を……者の……よ……』

 賢者の石の精霊は別れの言葉とともに弱々しく何かを言っていたけど、全てをハッキリと聞き取ることは出来なかった。精霊自身が力の枯渇を迎えたのか、それとも私自身の力が限界に達したのか、あるいはその両方なのかは分からない。

 いずれにしても半透明に見えていた彼の姿は次第に薄くなっていって、ついには気配まで含めて完全に消滅した。

 ただ、私はその時点ではオカリナの演奏を止めず、『復活の序曲』をキリの良いところまで演奏し続けた。そうすることでそれを彼への手向たむけとしたかったからだ。感謝と鎮魂ちんこんの想いを込めて……。



 その後、私は指を止め、あおき石へ捧げる鎮魂曲レクイエムの演奏を終える。

 すると次の瞬間、膝の上で微動だにしなかったポプラの体がピクリと動く。その反応に息を呑んでいると、今度はその閉ざされた目蓋まぶたがゆっくりと開き、キョトンとこちらを見つめる。

 途端に自然と私の視界全体があふれ出た涙で歪む。嬉しさと喜びとこらえられない様々な感情が爆発する。

 生き返るはずだと分かっていても、それでもやっぱり心のどこかには不安があったのかもしれない。でもポプラが生き返ったのをこうして実際に目の当たりにして、ようやくその奇跡を実感できたんだと思う。

 無意識のうちに私はポプラの上半身を抱え上げ、抱き締めて号泣する。



 温かい体温と静かな息遣いきづかいを感じる。生きてる……確かに生きてる……。

「ポプラっ! 良かった……っ……本当に良かった……」

「あ……れ……? 私……死んだはずでは……? だって黄泉よみの国に私は確かにちて……」

「生き返ったんだよ! ポプラは生き返ったのっ! 奇跡が起きて生き返ったんだよっ!」

「え……生き返った……? 私が……? なぜ……」

「理由なんてどうでも良いよっ! 奇跡が起きた、それだけでいいじゃないっ!」

「てはは……シャロン様は適当なのです……」

 チラリと視線を向けると、私の顔の横で苦笑をこぼすポプラ。そして視界の隅にはあおき石の消えた銀色の髪留めがある。

 今は表面的には台座の部分だけしかなくて空虚な感じがするけど、目を凝らせばあおい石がまだ付いているように見える気もする。少なくとも彼の魂のようなものは、永遠にこの髪留めとともにある。私はそう思う。

「……おかえり、ポプラ」

「っ!? ……シャロン様……っ……うぐっ……ぐすっ……すんっ……シャロン様ぁああああぁっ!」

 私の言葉でポプラは自分が生き返ったことをようやく実感したらしい。彼女の方から強く抱き締め返してくれて、激しくしゃくり上げる。

 周りのみんなはポプラが生き返ったことにまだ驚きを隠せないみたいだったけど、揃って温かな目で私たちを見守ってくれているのは確かだった。


(第7幕:終幕/第8幕へつづく……かも……!?)

※次回の更新は未定ですっ。気長にお待ちいただければ幸いですっ!!
 
 
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