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第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)
第3-7節:秘めた可能性
しおりを挟むそれはさておき、この地形や状況は私の想像していた通りだった。さらに今までに得た情報で、領内に井戸がたくさんあることや豊富に温泉が湧いていることが判明している。
そしてそれらの結果から導き出した私の推測が正しければ、もしかしたら今のフィルザードの状況を好転させられるような起死回生の一手が打てるかもしれない。その裏付けを取るためにも、ますます領内の地図が見たい。
やっぱりダメ元でもう一度、リカルド様にお願いしてみるしかないか……。
そう私が思い悩んでいると、ポプラが川を眺めながらナイルさんに話しかける。
「なるほどぉ、この地形では川の水を領内の各地へ引いて利用するのは難しいかもですねぇ。水は低いところから高いところには上れませんから。だからこの水は全く活用されていないわけですねぇ」
「その通りだ、ポプラ。それに川の水を汲み上げる労力があるなら、畑の傍に掘った井戸から水を汲み上げて使った方が効率的だ」
「ですです。川の水は汲み上げたあとに畑まで運ぶ手間もありますもんね。私みたいなドジだと途中で転んで、零してしまう危険性だって考えられますし」
「それでスピーナさんに大目玉を食う、と」
「や、やめてくださいです、ナイルさん! 想像しただけで寒気がするのです!」
「あはははっ! ごめんごめん!」
冗談を言って明るく微笑むナイルさんと慌てふためいているポプラ。特にナイルさんは私と話す時より硬さがないような気がする。彼女へ向けている瞳も温和で穏やかだし、普段は本当に優しいお兄さんという感じなのだということを再発見する。
立場を考えれば私に対して畏まってしまうのは仕方ないけど、彼に自然な姿で接してもらえるポプラがちょっとだけ羨ましい。私ももっとみんなと打ち解けたいな。
…………。
……それにしても、確かに畑に水を撒くという点だけで考えるなら、わざわざこんな遠いところから汲んで運ぶよりは井戸から汲み上げた方がよっぽど効率的だ。
でも井戸の水量は高が知れてるし、撒ける範囲だって限定的なのも事実。だからこそ耕作面積がある程度で頭打ちになってしまうわけで、収穫できる作物の種類も量も相応のものとなる。
一方、川の水を水路で領内へ広く引ければ水撒きの手間は大きく減らせる上、土地の状況によっては堰を開閉するだけで畑に水を行き渡らせることだって出来る。
少なくとも井戸水を撒くよりも広い範囲で水の恩恵が得られるのは間違いない。
ただ、当然ながら水路を造るには莫大な労働力と資金、時間が必要になる。そもそもポプラが話していたように川がフィルザード内でも低い位置にあるから、水路を掘ったところでそこには流れていかないという問題もある。
だからといって領内全域の土地を低くしたり川全体の底を上げたりするのはもっと困難というか、ほぼ不可能だから結局は汲み上げるしかない。
そうしたことが分かっているからこそ、現在の状況に至っているんだもんね……。
もちろんそれは逆に言えば、そうした諸問題を解決できればフィルザードの農業環境は大きく改善するということでもある。
――そして私の頭にはその策が思い浮かんでいる。
決して荒唐無稽じゃない、実現性のあること。たくさんの困難はあるけど、一つひとつ乗り越えていけばいい。
なんとしてでもリカルド様と私の夢を実現するんだ!
(つづく……)
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