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第3幕:重なる想いの交響曲(シンフォニー)
第1-1節:作戦会議
しおりを挟むジョセフの誤解が解けてから数日後の午後、私はお義姉様の部屋を訪れていた。風車の導入に関する商人ギルドとの交渉について、相談をしたりアドバイスを受けたりするためだ。
今回も部屋の中にいるのは私とお義姉様だけで、ルーシーさんとポプラはドアの外で待機している状態となっている。部屋に入った直後、お義姉様が私の雰囲気から何かを察して、そのふたりにこの場から外すよう言ってくれたから。
ちなみにルーシーさんには『お義姉様に相談事があるから予定を調整してほしい』としか伝えていないし、ポプラは水路関係のことをまだ何も知らない。
さすがにまだ周りに話せる段階ではないもんね……。
早速、私は椅子に腰掛け、正面のベッドに座るお義姉様に状況や経緯について話をする。そして真摯な顔でその全てを聞き終えたお義姉様は息を吐いて小さく頷く。
「――なるほど、そういう状況になっているのね。それで私に相談しに来たというわけか。でもさすがはシャロン。水路を造ろうなんて、私には思いつかなかったことだよ。水の精霊さんの使い方もうまいなぁ」
「いえ、私はまだ大したことはしてないですよ……。それにこの計画の実現には困難もたくさんありますし」
「でも動き出したことは評価されるべきだよ。どんなに長い道も一歩から。私も全力でシャロンに協力するよ」
「ありがとうございます! あ、でも無理はなさらないでくださいね。お義姉様に何かあったら私はもちろん、リカルド様やジョセフ、ルーシーさん、ほかにもたくさんの人が心配しますから」
これは何よりも優先したい想い――。
お義姉様のお体に過度な負担が掛かるなら、私はほかの方法を考える。フィルザードでたくさんの作物が採れるようになった時、すぐ隣にお義姉様の姿がないのは嫌だから。
私は絶対に彼女と一緒に幸せを分かち合いたい。緑に染まる大地や笑顔に満ちた領民の皆さんを眺めながら、お腹一杯にパンを食べてほしい。自らの命を削ってまで守った『未来』というタネが、大きく実ったことを実感してもらいたいんだ。
そんな想いを胸に真っ直ぐお義姉様を見つめていると、彼女はフッと小さく頬を緩める。
「……ん、分かってる。それじゃ、交渉の方針と話を有利に進めるやり方を考えていきましょう」
「はいっ! お願いします、お義姉様っ!!」
「……っ……」
その時、元気に返事をした私に対してお義姉様はなぜか頬を赤く染めたまま、無言でモジモジしていた。軽く俯き、上目遣いでこちらの様子を窺っている。
「お義姉様、どうしたんですか? もしかして今回の計画について、何か気になることでもあるのですか?」
「あ……えとえとぉ……そういうことじゃなくて……その……」
「っ?」
「レクチャーが終わったら、また一緒にアンサンブルをしてもらえる?」
耳まで赤くしながら、照れくさそうに問いかけてくるお義姉様。こういう何かを強請る仕草は幼い子どもみたいでちょっと可愛らしい。
もちろん、私としてはプロ級に演奏が上手なお義姉様とアンサンブルが出来るのは嬉しいし楽しいから、即座に大きく首を縦に振る。
「ふふっ、もちろんです! むしろ私からお願いしたいくらいです。お義姉様の演奏は勉強になりますし」
「やったぁっ!」
お義姉様は満面に笑みを浮かべ、屈託なくはしゃいでいた。その姿を見る限り、なんだか顔色が良くていつもより元気そうにも見える。『病は気から』とも言うし、楽しいことは心身に良い影響があるのかも。
もしそうなら、今後も定期的にアンサンブルをしていきたいな……。
その後、私はお義姉様から交渉事に関するレクチャーをしっかりと受け、それが終わるとオカリナとヴァイオリンのアンサンブルを堪能した。夕食の時間が迫っていたこともあって演奏できたのは1曲だけだったけど、お義姉様はいつになく活き活きしていたような気がする。
もっとも、レクチャーも手を抜いていた様子は全くなくて、そうしたメリハリがきちんとしている点はさすがだと思う。真面目なところはリカルド様にそっくりだ。
(つづく……)
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