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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)
第1-4節:水路の工事現場へ
しおりを挟むその後、リカルドたちが束の間の休憩を終えるのを見計らい、私とポプラは水路の工事現場への移動を再開させることにする。
早速、私は荷車の取っ手を握ってそれを引っ張ろうとする。
でもその時、すかさずリカルドが私の背後に回りこんで取っ手を握ってくる。この体勢だとバックハグをされているみたいで、私としては照れくさいしドキッとしてしまう。
間近に感じる彼の息遣いと匂い。それを意識してしまって心臓は爆発寸前になる。
そんな想いを悟られないように平静を装っているけど、きっと顔が真っ赤に染まっていてバレしまっているだろう。頬も耳も顔全体も熱いのが何よりの証拠だ。
そして彼は私の耳元で優しく囁いてくる。
「シャロン、途中まで荷車を引くのを手伝うよ」
「っ!? わ、私は昨日も一昨日も、こうして畑から出発する際には『私に構わず農作業を続けて』ってリカルドに言っているのに……」
「僕の方こそ『そうもいかんだろう』とその度に答えている。妻に重労働をさせたまま、黙って放っておけるか」
「でもこれは私が勝手にやっていることだから、リカルドの農作業を邪魔したくなくて」
「僕は本来ならずっと付き添いたいところなのだが、キミがそう言うから手伝いは屋敷の敷地を出るまでということでお互いに妥協したんじゃないか。この期に及んでその約束が守れないなら、僕だって強情になるぞ?」
少し拗ねたような口調になり、声を尖らせるリカルド。後ろに立っているから顔は見えないのに、頬を膨らませている姿がハッキリと目に浮かぶ。
「……そうだったね。ゴメンね、リカルド」
「やれやれ……。キミは見ていないと無理をしたり、ひとりで抱え込もうとしたりする。それは悪いクセだぞ」
「う……」
図星を指され、私は何も言い返せない。これは耳にタコができるくらい父から言われてきたことでもある。反省しないとな……。
「キミを信じてはいるが、不安がないわけでもない。本当に無理はしないでくれ。もっと僕や周りを頼ってほしい」
「……うん、気を付けるよ」
「よしっ! ――ジョセフ、ナイル、ポプラ! お前たちも準備は良いな? 出発するぞっ! それっ!」
リカルドの掛け声とともに、私たちは全員で荷車を動かした。
確かに大きな力が必要な仕事もみんなで協力してやれば、ひとりでやるよりも楽になる。私も抱え込みすぎないように、意識して注意しないといけないな……。
◆
屋敷の敷地を出ると、途端に道は悪くなる。
大小の石ころが無数に転がっているデコボコとした道。私がフィルザードへ嫁いできた時には、馬車の中でお尻が痛くなってしまってこれには苦労させられた。
そして今は荷車を引く立場として、大変な想いをしている。思うように進むことが出来ないし、わずかな起伏を乗り越える際にも大きな力がいる。当然、体力は削られてヘトヘトになり、手足の筋肉には疲労が蓄積していく。
あの時のお馬さんもきっとこんな気分だったんだろうなぁ……。
いずれにしても、将来的にはこの悪路をある程度は直さないといけない。国内の商業活性化を考えるなら、荷車などで物資を運びやすくしておいた方が良いから。
ただ、あまりに道が平坦すぎると、敵兵に攻め込まれた時に侵攻が早まってしまうという面があるのも事実。だから整備するにも流通路だけに限定するとか、沿線に敵の侵攻を鈍らせる仕掛けを施すとか、何らかの対策は必要になるだろうとは思う。
一応、フィルザードは隣国と国境を接している最前線なんだもんね。今は友好関係にあるから平和が維持されているけど、いつそれが崩れるとも限らないわけだし。
治に居て乱を忘れず――って、以前にリカルドも言っていた。私も領主夫人なんだから、内政だけでなく軍事や防衛といった外政のことも意識しておかないと。
(つづく……)
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