嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
87 / 178
第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)

第3-6節:ノエルからのお願い

しおりを挟む
 
 そうした様子から察するに、一時的にギクシャクしていたふたりの関係はすっかり修復して、仲の良い兄弟に戻っているみたい。それには私としても安堵あんどして、ホッと胸をで下ろす。

「でも、ノエル様にも私とリカルドの仲を認めていただけて嬉しいです。――ところでノエル様、私に話とは何でしょうか? そのためにここへいらっしゃったんですよね?」

「あ……えっと……その……」

「ほら、ノエル。さっさと言ってしまえ」

 躊躇ちゅうちょして口ごもっているノエル様の背中をリカルドは力強く叩いた。

 ただ、それでもなお踏ん切りがつかない様子のノエル様は、うつむいてモジモジしたりキョロキョロと視線を動かしたりするばかりでなかなか言葉を発しない。

 もちろん、私としては彼の心の整理が付くまで静かに見守ることにする。

 やがて彼は意を決したように目を見開いたかと思うと、すかさず私に向かって深々と頭を下げてくる。

「シャロン殿! 今までの数々の無礼、お許しください!」

「……あぁ、そのことでしたか。もうお気になさらないでください」

「俺っ、きちんとおびをしたくて! このまま有耶無耶うやむやにしたら、シーファ姉様にもしかられてしまいそうですし!」

律儀りちぎなんですね、ノエル様は。お義姉様に頭が上がらないところといい、リカルドとそっくりです。さすが弟分というだけありますね」

「恐縮です!」

 すっかり平身へいしん低頭ていとうしているノエル様を見て、私は彼に心の成長を感じた。自分のしたことをきちんと反省して、素直に謝れている。そんな今のノエル様はちょっと格好良い。

 本当に男子はちょっと見ない間に大きく成長するものだと思う。そのスピードには目を見張るものがある。素敵な紳士への階段を確実に上っているのだと感じる。

 だからこそ私も自身の言行をかえりみなければならない。謙虚な気持ちになって彼に深く頭を下げる。

「私もあの時、もう少し配慮できていればと反省しています。ごめんなさい」

「いえっ、シャロン殿は悪くないです! 悪いのは本当に俺なんです!」

「それではお互いに悪かったということで手を打って、あのことはおしまいにしましょう」

「はいっ! それでシャロン殿にお願いがあるのです。……あのっ、シャロン殿のことを『シャロン姉さん』とお呼びしてもよろしいでしょうか? それと俺にもリカルド兄様と同じように、私的な場では砕けた話し方をお願いします!」

「っ!? き、急にどうしたのですか?」

 ノエル様からの思いも寄らない申し出に、私は目を丸くした。だって『姉さん』だなんて……。

 彼はほほを真っ赤に染め、期待と不安の入り混じったような面持ちで私の返事を待っている。まるで一世一代の愛の告白でもしたかのような印象。もちろん、そこに恋愛感情はないんだろうけど。

 ただ、私を慕う気持ちは確かにあるのだと思う。そして打ち解けたことは嬉しいけど、私としては戸惑いが全くないというわけでもない。数時間前まではツンツンして、私を拒絶していたんだから。

 そんな感じで私が色々と考えを巡らせていると、不意にリカルドがクスッと笑う。

「シャロン、ノエルはキミに甘えたいのだ。呼び方や話し方くらいなら許してやれ。ただし、ベタベタするのは厳禁だ! それをしていいのは僕だけなのだからな」

「……リカルド、もしかして独占欲が強い?」

「っ!? そ、そんなことはないだろう。もしそうであれば、絶対に男をキミに近付けんはずだ。ノエルもジョセフもナイルもモーリスもな。あるいは女性であってもポプラくらいに親密度の高い者なら遠ざけるかもしれん」

「どうかな? だってリカルド、ちょっとムキになって否定してるし」

「き、気のせいだ! あまり僕をからかうな」

 リカルドはほほを真っ赤に染め、外方を向いてしまった。そんな純真無垢むくな反応がなんだか可愛かわいらしい。思わず私はほくそ笑んでしまう。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...