嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)

第3-5節:真夜中のお茶会はゲストを迎えて

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 目を白黒させてたたずんでいる私に対し、リカルドは恐縮して小さくなっているノエル様の肩をつかんで目の前に押し出してくる。

「コイツがどうしてもシャロンと話がしたいというのでな。連れてきてやったんだ」

「そ、そうだったんだ……。とりあえず中へどうぞ」

 私はドアを大きく開け、それを抑えたまま横に退いた。

 するとリカルドはノエル様の背中を押しながらふたり揃って室内に入ってくる。そして彼は真っ直ぐクローゼットのところへ向かうと、その横に置いてある椅子をふたつ持ってくる。

 すっかり収納場所を理解して、もはや勝手知ったる私の部屋といった感じだよね……。まぁ、いいんだけど……。

 それを私のデスクの正面に並べて置き、そこに彼とノエル様が腰を掛ける。確かにその位置関係なら、私がデスクの席に座れば向かい合わせで会話をすることが出来る。

 ただ、私はすぐにそこには移動せず、室内の片隅にある簡易キッチンでポットやカップなどの準備を始める。

「リカルド、アブラズナ茶をれるからちょっと待ってて」

「うん、ありがとう」

「いつものように濃い目でいいんだよね? しかも温度は熱めで。リカルドはその方が好きだもんね」

「ははは、さすがシャロン。よく分かってるな」

 背後から聞こえてくるリカルドの声は穏やかで、すっかりリラックスしている様子だった。

 彼は緊張の糸が張り詰めた状態で過ごすことがほとんどだから、せめて私とのお茶の時間くらいは気兼ねなくのんびりと過ごしてほしい。

「さて、と……」

 私は水瓶に入っている水を陶器のポットにみ、それを流し台に置いてから両手をその胴にかざす。これから私は炎系魔法の呪文スペルを唱え、中の水を沸騰ふっとうさせようというわけだ。

 炎系はほかの属性の魔法と比べるとあまり得意ではなくて、初歩的なものしか使えない。でも少量のお湯を沸かすくらいならそれでも全く問題はない。

「……っ……っ……っ……」

 心を静かにして呪文スペルを唱えると、手のひらから小さな炎の帯が放たれる。そして魔法力の消費と引き換えに、発生した炎は継続的にポットを熱していく。

 やがてコポコポとフタがダンスを始め、その隙間すきまから蒸気がき出してきたところで私はポットの中にアブラズナ茶の粉を定量より少し多めに入れた。それとともに室内には芳醇ほうじゅんな香りが広がり、いでいると精神が落ち着いていやされるような感じがしてくる。

 それをさらに一分ほど加熱してせんじ終えると、私はそれをカップにれてリカルドたちのところへ運んだのだった。

 私たちは揃ってそれをすすり、ひと息をついてからリカルドは借りてきた猫のようになっているノエル様に声をかける。

「どうした、ノエル? やけに大人しいじゃないか」

「おふたりの間の雰囲気も口調も、公の場と全然違うので驚きまして。すごく自然で柔らかくて、温かいなぁと」

「そりゃそうだ。僕とシャロンは想い合っている夫婦なのだからな。公私混同しない主義だから、普段は堅苦しくしているだけだ」

「あっ、そうは言ってもたまにリカルドは公の場であることを忘れて、私に歯が浮くようなセリフを言う時があるよね。確信犯でやる場合もあるし。あれは照れくさくて困るんだけどなぁ……」

 私は苦笑を浮かべ、ひとつ結びにしている髪の先端を指でいじった。

 それに対してリカルドは私の指摘なんてどこ吹く風で、むしろ開き直って堂々としている。

「まぁ、それについては否定しない。だが、シャロンだって公の場で平民の口調になることがあるぞ? だからお互い様ということで、少しくらいは許せ」

「うんうん、分かってるっ。ふふっ」

「……そうでしたか。いずれにせよこんなにもむつまじいおふたりのお姿を拝見したら、くやしいですがシャロン殿をリカルド兄様の奥方様として認めざるを得ないですね」

「ノエルが認めようが認めまいが、シャロンは僕の妻だぞ? その事実は変わらん。何を言ってるんだ、お前は?」

「あはは、そうですね。失礼しました……」

 ノエル様はペロッと舌を出すと、リカルドに向かって軽く頭を下げた。


(つづく……)
 
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