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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)
第4-6節:原初のゴーレムとその対処法
しおりを挟む「大丈夫だよ、ポプラ。私、対処法に心当たりがあるから。たぶん、あのゴーレムは単なるゴーレムじゃない。原初のゴーレム。古代ゴーレムと言ってもいいタイプのヤツだよ。実家にいる時、古い魔術書で読んだことがある」
「原初のゴーレム……ですか?」
ポプラはキョトンとしながら首を傾げた。それに対して私は小さく頷く。
「ゴーレムは大昔に魔術師が呪文と儀式によって粘土や岩石の人形に命を吹き込み、命令通りに動く兵士として生み出したものなの。魔力によって形状が維持されているから、どんなに体を粉々に砕いたとしてもすぐに復元してしまう」
「っ!? さっきゴーレムに起きたのと同じ現象なのです……」
「ただし、現代は呪文や儀式を簡略化して、容易に使役可能なタイプが主流になってる。その分、弱体化して倒しやすくもなってるけどね。だから通常のモンスターと同じように、大きなダメージを与えれば無力化できるわけ。でもあのゴーレムはそうじゃない」
おそらくかつてキールさんが戦ったことのあるゴーレムは、使役が容易なタイプの方だったのだろう。それなら確かにあれだけのダメージを与えれば、倒せていたとしても何ら不思議はない。
だから胴体を真っ二つに斬り裂いた時点で決着が付いたと思い込み、油断したところへ反撃を食らってしまったわけだ。
傍目にはどちらのタイプかなんて気付きにくいし、そもそもゴーレムに関する知識がなければ正しい対処法だって分からないから仕方のないことだけど。
「で、では、どうすれば倒せるのですか?」
「魔力の根源を絶つしかない。使役している者を倒すか、ゴーレムに掛かっている魔術を消し去るか。ただ、今は使役している者の正体も所在も分からない以上、後者しか選択肢はないけどね」
「ゴーレムに掛かっている魔術を消すなんて可能なんですか?」
「うん、私の持っている知識が間違っていなければ。原初のゴーレムは体のどこかに炎系の魔法で描かれた魔術文字が記されているはず。それが使役するための契約の印であり、魔力の源でもあるんだ。そこに炎系の魔法をぶつけて打ち消すんだよ」
ゴーレムの体に刻まれた魔術文字は、それを構成する同属性の魔法を使わなければ決して消えない。これは毛織物に付いた油汚れを落とす際に、水ではなく油を使う場合があるのとよく似ている。
つまり今回の場合、効果があるのは炎系の魔法だけということ。例え炎系と反属性の水系や氷系であったとしても、性質が異なるから弾かれてしまう。
原初のゴーレムは耐久力や攻撃力などが強力な反面、その弱点を衝かれると脆い。
というか、それが唯一の効果的な対処法でもあるんだけどね……。
「でもその魔術文字の記されている場所が分からなければ意味ないですよぉ」
「さっきゴーレムの額に小さな光が見えた。きっとそれだよ。だからそこに炎系の魔法をぶつけてみる。もし的外れだった時は、動き回って探してみるしかないかな?」
「そんな不確実な推測で動くのは危険なのですっ! それに弱点を攻撃されたら、さすがにゴーレムだって徹底的に邪魔者の排除を優先するようになるに違いないのですっ! 逆鱗に触れるってやつなのですっ!」
「でも虎穴に入らずんば虎児を得ずって言葉もあるでしょ? 活路を開くには危険を承知で動かなければならないこともあるよ」
「シャロン様……」
ポプラは眉を曇らせ、潤んだ瞳で私を見ていた。心の底から身を案じてくれているのがひしひしと伝わってくる。
だからこそ、ゴーレムを倒してポプラやこの場にいるみんなを守らないと!
「……っ……っ……っ……」
私は未だ水路の破壊を続けるゴーレムの方に体を向け、右手を掲げて炎系魔法の呪文を唱え始めた。それとともに体内に流れる魔法力が奔流となって徐々に手のひらで収束していく。
やがて手のひらからわずかに上の空間に小さな炎の塊が生まれる。それは少しずつ渦巻きながら拡大を続け、やがて私の頭と同じくらいの大きさにまで成長する。
あとはこれをゴーレムの魔術文字にぶつければいい。ただ、このままでは位置が離れすぎていて外してしまう可能性が高いから、ある程度は接近する必要がある。それだけ危険が高まるということでもあるけど。
私は大きく深呼吸をして覚悟を決めると、ゴーレムに向かって突進していった。
肺の中を出入りする乾いた空気と漂う土の匂い――。
砂埃が舞い上がり、足音と心臓の鼓動は耳の奥に大きく響いている。
刻一刻とゴーレムの巨体が迫ってくる。意識を集中させてその動きをしっかりと捉え、反撃や不測の事態に備える。そしてそれなりの命中率が保証されるギリギリの距離を見極め、手のひらでキープしていた炎の塊をゴーレムの額に向かって解き放つ。
(つづく……)
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