嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)

第4-7節:万策尽きて

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「いっけえぇええええぇーっ!」

 うなりと火花を上げながら、真っ直ぐに飛んでいく炎。それは私の狙い通りにゴーレムの額に命中し、顔の全体までも巻き込んで爆発する。

 天まで届く爆音と私のところまで伝わってくる熱波。衝撃はゴーレムの体の一部さえも砕き、未だに赤い炎と黒い煙に包まれたまま細かな破片がガラガラと地面に落ちている。

 やがて炎や煙が収まっていき、私の位置からでもゴーレムの全身が目視できるような状態になった。うまくいっていれば魔術文字を打ち消すことに成功し、体は維持できなくなって崩れ落ちるはずだけど……。

「――なっ!?」

 そこには依然としてたたずむ巨体があった。破損した部分もすでにすっかり復元されてしまっている。私の対処法が間違っていたのだろうか? それとも魔術文字の位置が違っていたのか?



 …………。

 ……ううん、ちゃんと効いてる。

 明らかに動きは鈍り、よく見ると体のところどころが維持できずに崩れたままになっている。ということは、単に私の炎系魔法の威力が弱かっただけなんだ。

 でも私の使える炎系魔法は今のが最大威力。連続して放とうにも呪文スペルの詠唱には多少のタイムラグが生じるし、明確に敵として認識されてしまった今後は警戒されて、その全てを命中させられるかどうか分からない。

「至近距離から炎系魔法を放てばあるいは。でも……」

 当然、相手に近付けば近付くほど危険は高まる。しかも攻撃の直後こそ最大のすきが生まれるわけで、そこをかれたら一巻の終わりだ。だからこそ、戦いではいかに自分の間合いを維持し、逆に相手の間合いに入らないかが重要なのだ。

 しかもこれだけの体格差があると、額に接近するには剣でゴーレムの足や体を斬り裂くなどして体高を低くさせなければならない。そしてそれが復元するまでに頭や肩に登って、そこから炎系魔法を食らわせる必要がある。

 もちろん、炎の精霊を使役すれば、遠距離からでも充分な威力の一撃を放つことは出来ると思う。でもそんな時間的余裕なんてないし、私が精霊使いだと周りに知られてしまう可能性もある。それゆえにこの方法は使えない。



 …………。

 ……参ったな、これは私にはかなりハードな状況かも。

「っ! でもっ、なんとかするしかないッ!」

 気弱になりかけた自分にかつを入れるように、私は自分のほほを両手で叩いた。ジンワリとした痛みと熱が私の目を覚まさせ、勇気と覚悟を呼び起こす。

 そしてショートソードをさやから抜き、今にもゴーレムに向かって駆け出そうとした時のこと――。

「……えっ?」

 頭上のはるか上、後方から巨大な炎の塊が目にも止まらぬスピードで私を追い抜いてゴーレムに向かって飛んでいった。それはゴーレムを包み込むほどの大きさで、通り過ぎると同時に猛烈な熱風が私のところにも伝わってくる。

 直後、その炎の塊はゴーレムに命中し、その体全体が灼熱しゃくねつの炎に包まれた。彼は業火ごうかの中でもだえ苦しむかのような仕草を見せつつ、辺りには焦げ臭さがただよっている。

 当然ながらその状態では、額の魔術文字も簡単に焼き消されたに違いない。その証拠に程なく体は形状を保てずボロボロと崩壊し始め、地面には単なる岩石の山が築かれていく。

 そんな様子を見ていると最期は呆気あっけないというか、可哀想かわいそうな気持ちさえしてくる。



「――間に合って良かった!」

「リカルドっ!? それにナイルさんも!」

 振り向くとそこには息を切らせて駆け寄ってくるリカルドとナイルさんの姿があった。

 おそらく全速力でここへやってきたのだろう。ふたりとも私のところへ到着するなりかがんで両膝に手を添え、肩で大きく息をする。

 特にやや余裕が残っているナイルさんと違い、リカルドは一杯一杯で苦しそう。額には珠のような汗がにじみ、前髪やもみあげなどもぐっしょりと濡れている。


(つづく……)
 
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