嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第5幕:分水嶺の奏鳴曲(ソナタ)

第4-8節:リカルドとの混浴!?

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 やがて私たちは大浴場の前まで辿り着いた。

 もちろん、服を脱ぐ前に大浴場内に踏み込んで、特にモーリスさんなどが入っていないかを確認。そして先客がいないことが分かると、更衣室の出入口には『使用中』と書かれた札を掛けておく。

 これは中で誰かと鉢合わせしないように、普段でも私がここの温泉に入る際にやっていることだ。

 そのあと、私は更衣室でソフィアちゃんの服を脱がせてあげて、それを空いたカゴの中へ入れていく。続いて私も服を脱ぐ。周囲には温かな湯気が漂いつつも、やっぱり肌が露出していると湯を浴びるまでは少し寒い。

 ちなみにここにはどこから持ってきたのか、ソフィアちゃん用のサイズの着替えが綺麗きれいに畳まれて用意されていた。スピーナさんの筆跡でその旨が書かれたメモが添えられ、私の分と一緒に並べて置かれている。

 もしかしたら、これはお義姉様が幼い頃に使っていたものかもしれない。それをクローゼットの奥から引っ張り出してきたということか……。

 さすがスピーナさん、リカルドから事情を聞いてすぐに準備してくれたのだろう。

「シャロン様、このお屋敷のお風呂って広いの?」

「うん、湯船なんか池みたいに広いよ。……あ、そうだ。ちょっとお湯が熱いかもしれないから、水を混ぜてぬるくしてあげる。火傷やけどしたら大変だからね。ソフィアちゃんは私が良いって言うまで湯船に入らずに待っていること。約束だよ?」

「……約束するから……泳いでいーい?」

 遠慮がちな口調で私に問いかけ、上目遣うわめづかいで返事を待っているソフィアちゃん。

 確かに子どもなら広い湯船で泳ぎたくなる気持ちも湧いてくるだろうし、公衆浴場と違ってここには私たちしかいない。だけどリーザさんの許可を得ずに甘やかすようなことをしてしまうのも気が退ける。

「……うーん、どうしようかな」

「あまりバシャバシャしないから。だからシャロン様、お願い」

「分かった。お行儀が悪いし、ほかの人の迷惑になるから本当はやっちゃダメなんだけど、今日だけは特別に許してあげる。ただし、普段は絶対にしないこと。それとこれは私とソフィアちゃんだけの秘密だよ?」

「ありがとう、シャロン様!」

 ソフィアちゃんは目を輝かせ、飛び上がってはしゃいでいた。そして早く大浴場内に行こうと私の腕を強く引っ張って誘う。そういう姿を見ると、彼女もしっかりしているようでいて年相応に無邪気なんだなってちょっと安心する。

 そういえば、私はこうして誰かと一緒に当家の温泉に入るのは初めてかも。以前、一度だけポプラを誘ったことがあるんだけど、丁重に断られてしまったし。立場の違いがあるという理由のほか、体には誰にも見せたくない古傷があるんだとか。

 その時に見せた彼女の重苦しい雰囲気と悲しげな表情から、あまり触れたくない事情があるんだと察してそれ以来は誘っていない。

 お義姉様は体調の関係があるから難しいし、スピーナさんやルーシーさんはメイドとしての立場を第一にするからきっと断られてしまうだろう。そして温泉好きのモーリスさんを始め、男性たちとの混浴というのは私が照れくさすぎてあり得ない。


 …………。

 ……ただ、相手がリカルドなら……まぁ……彼がどうしてもと言うなら……少しは考えてもいいかな。だって私の旦那様だし、彼が強く望むなら受け入れてもいいって気持ちはあるし……。

 その時は彼の背中を流してあげたり、一緒に湯船に入ったり。そしていつも以上に近い距離感で、しかも肌と肌が触れ合って――。



 ――っ!? って、何を考えてるんだっ、私ッ! バカバカっ! 想像しただけで顔や耳が熱くなってきちゃったよっ!

 なんだかさっきリカルドに抱き締められた時のことを思い出して、温かさや匂いが恋しい。そして切ない。やっぱり私、なんか変だ……。

「どうしたの、シャロン様っ? まだ温泉に入ってないのに顔が赤いよ?」

「えっ!? そ、そうかなっ? ソフィアちゃんの気のせいだよ、あはははっ!」

 いぶかしげな顔でこちらを見上げているソフィアちゃんに対し、私は慌てて笑って誤魔化ごまかした。ただ、体が熱いのは事実だし、汗もダラダラと噴き出してくるのは事実だ。

 だからこれ以上、様子がおかしいと思われないためにも、私は彼女を連れてそそくさと大浴場内に入ったのだった。


(つづく……)
 
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