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第5幕:分水嶺の奏鳴曲(ソナタ)
第4-7節:お姫様と親衛隊長
しおりを挟むおそらくゼファルさんたちは実際に戦闘能力が高いのだと思う。若い頃から冒険者稼業をしているみたいだし、それならある程度の修羅場だってくぐり抜けてきているはずだから。これは私たちにとって非常に心強いことだ。
一方、現在は任務中にあまりモンスターと遭遇しないということは、過度に危険な仕事は受けないようにしているに違いない。例えば、洞窟の探索とか凶暴なモンスターの討伐とか。
理由はもちろん、ソフィアちゃんの存在。彼女を庇いながらでも対処できる仕事を選んでいるということだろう。それなら比較的安全だけど報酬がそれなりに良さそうな『街道での荷物の警護』を請け負っているのも納得がいく。
だとすると、彼らが私たちの護衛を引き受けてくれたのはなぜだろう? 荷物の警護の延長線上という認識なのか、雇い主のクレストさんに対する義理立てか。あるいは何らかの理由があって、少しでもおカネを稼いでおきたいのか……?
まぁ、今の段階では情報が少なすぎて分からないから、機会があったらそれとなくリーザさんに訊いてみよう。もちろん、教えてくれるとは限らないけど。
――と、考え込んでいると、不意にソフィアちゃんは握ったままの私の手を何度か軽く引っ張ってくる。
「ねぇ、シャロン様。シャロン様はお姫様なんですよね?」
「お姫様っ!? ……えっと、ソフィアちゃんが想像しているお姫様とはちょっと違うかもしれないけど、広い意味では確かにそうだね。王族の血筋らしいし、貴族であるリカルド様のお嫁さんだし」
「わぁっ、やっぱりお姫様なんだぁ! だってシャロン様は綺麗で美人だし、気品があるし、雰囲気も温かい感じがするもん。さっきのお部屋でお会いした瞬間から、素敵だなぁってずっと見とれちゃってた」
「そ、そうなの? でもそう言ってもらえると嬉しいな」
「いいなぁ、シャロン様に憧れちゃうなぁ……」
ソフィアちゃんは羨望の眼差しを私に向けていた。そして裏がなく本心からそう思っているであろう彼女に褒められ、私は本当に嬉しい。もしこれでお世辞だったとしたら、彼女は超一流の演技派女優だ。
そっか、応接室でずっと私をキラキラとした瞳で眺めていたのはそういうことだったんだ。照れくさくて私の頬は熱くなってくる。
「それなら私がお姫様のシャロン様を守ってあげる。安心して良いよ」
「ありがとう。なんだかソフィアちゃんは私の王子様みたいだね」
「違うよ! 私は王子様じゃないよっ! だってシャロン様の王子様はリカルド様でしょ! そんなこと言ったらリカルド様が可哀想だよ!」
私はソフィアちゃんに激しく叱られてしまった。彼女は眉を吊り上げ、頬を大きく膨らませている。その迫力に私は思わずたじろいでしまう。
……でもよく考えてみれば、確かに私の今の発言は不用意だった。
実際に彼がそれを聞いていたら怒ったり、大人げなくソフィアちゃんに対して嫉妬したりしていたかも。ゴメンね、リカルド……。
私は心の中で彼に謝罪し、気を取り直してソフィアちゃんと話を続ける。
「そ、そうだね。私の王子様はリカルド様だったね。謹んで訂正させていただきます」
「だから私は将来、シャロン様の親衛隊長をする! えっへん!」
「なるほど、親衛隊長かぁ。ふふっ、それは頼もしいなぁ。でもお父さんやお母さんと一緒に冒険者を続けなくていいの?」
「親衛隊長をしながら冒険者もするの」
「そっか。ちゃんと夢を持っていて、ソフィアちゃんは偉いなぁ」
何度も思ったことだけど、本当にソフィアちゃんは賢くてしっかりとした性格をしている。きっと天賦の才がある。リーザさんはゼファルさんのことを親バカだなんて言っていたけど、第三者の私であっても絶賛したくなる気持ちがよく理解できる。
彼女は私を守ってくれるって言ったけど、私も彼女を守ってあげたい。そしていつかみんなが平和に暮らせて、お腹一杯に食べられるフィルザードにするんだ。
その日が来るまで一緒に頑張ろうね、リカルド……。
(つづく……)
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