嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第5幕:分水嶺の奏鳴曲(ソナタ)

第5-8節(第5幕:完結編):大切な親友

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「あ゛ぁあああああぁーっ!」

 その場に絹を裂いたような悲鳴がとどろく。

 でもそれは私のものじゃない、ポプラだ!

 気付けば私は駆け寄ってきた彼女に突き飛ばされ、地面に倒れ込んでいたのだった。そして振り向いて見上げたと同時に、そこで目の当たりにした光景に私は息を呑む。

 スケルトンの振りかざした剣はポプラの背中を服ごと、右肩から腰の左側に掛けて斜めに切り裂いている。傷口から深紅の血液が吹き出ている。


 ……っ……ぁ……。

 本来であれば、その位置に立っていたのは私だ。そうなっていたのは私だ。でも咄嗟とっさにポプラが身を挺して私をかばってくれたんだ。

 目の前で起きたその惨劇さんげきを、私は呆然と眺めることしか出来ない。

「……っ! おのれぇええええええぇーっ!」

 一瞬の間が空いて我に返った私は、怒りととも剣を拾って握り直し、立ち上がるや否や咆哮ほうこうとともにスケルトンに向かって斬りかかった。

 未だヤツの剣にはポプラの血が滴っている。それを見ると、私の怒りはさらに膨れ上がり、一気に爆発する。こんなにも強い憎しみの感情を持ったのは、今まで生きてきて初めてかもしれない。

「うぉおおおおおおぉーっ!」

 私はスケルトンのボディを剣の連続攻撃で粉々に砕き、復元できないほどに無力化した。そして周囲に注意を払いつつ、うつ伏せに倒れ込んだままのポプラに駆け寄る。

 背中の切り傷から未だ血液がにじみ出し、目を背けたくなるほど痛々しい。

「ポプラっ! ポプラぁっ!」

「……っ……ぁ……」

しゃべらなくていいっ! 意識があるのさえ分かれば!」

 混濁こんだくしつつも私の声に対する反応はあるし、大怪我おおけがには違いないけど、傷口のその派手な見た目にしてはそこまで傷は深くないみたい。だってあの状況では、下手をしたら即死だったとしてもおかしくないから。


 ――これなら急いで回復魔法を使えば命が助かる!

 ただ、失血や痛みによるショックが起きないとも限らないから、予断を許さない状況であることには変わりない。

 私はなるべくポプラの傷口が広がらないよう慎重に彼女の腕を掴み、上半身を私の肩に抱え上げた。そしてソフィアちゃんのいる結界の中まで彼女を引きずるようにして運んでいく。

 さらにその場所に辿り着くと再びうつ伏せ状態で地面に寝かせ、ソフィアちゃんに向かって叫ぶ。

「ソフィアちゃん、少しの間だけ結界を持ちこたえてて!」

「う、うんっ! 大丈夫だよっ、結界はまだほぼ無傷だから、敵が攻撃してきてもしばらくは防げるよ! 今までシャロン様が結界に敵を近付けさせないようにしててくれたおかげだよ!」

「それは良かった!」

 私がソフィアちゃんに向かってニッコリと微笑むと、不安そうにしていた彼女もわずかに頬が緩んだ。こんなに厳しい現場を目の当たりにしているのに、ほとんど取り乱していないというのはさすが冒険者の卵だ。

 ――ううん、これは彼女自身の精神の強さ。あらためてすごいなって感じる。

 だって場慣れしていたとしても五歳の女の子だもんね、泣き叫んだり激しく動揺したりしてもおかしくないもん。

「もう少しだけ頑張って、ポプラ! ……っ……」

 私は自分の両手をポプラの背中にかざし、回復魔法の呪文スペルを唱えた。すると程なく私の両手から白くまばゆい光が放たれ、傷口の周辺を広く包み込む。

 魔法力が私の体から抜けていくと同時に、私は脱力感と目眩めまいに襲われる。

 ただ、それと引き換えにポプラの出血は次第に止まり、傷口も目に見えて修復されていく。苦悶に満ちた表情も少しずつ穏やかなものになる。これならもうしばらく回復魔法を続ければ、ポプラの命は確実に助かるだろう。

 彼女の治癒ちゆを祈りつつ、私は回復魔法に全力を注ぐ。

 そして程なく大きく目を見開き、ゆっくりと起き上がるポプラ。その姿を見て私は安堵あんどすると同時に、目には嬉し涙があふれてくる。

「シャロン様……私……」

「良かった! 命が助かって本当に良かったっ! まったく、ポプラったらあんな無茶をして!」

「シャロン様、ご無事でなによりなのです……」

「バカッ! 私の心配より自分の心配をしなさいよっ!」

「てはは……怒られてしまったのです……」

 ポプラは頭を掻きながら苦笑した。自分の身に起きたことが命に関わる大事だったという雰囲気がまるでない。でもそうした天然ボケなところこそ、普段の彼女らしい姿で私は安心する。

 やっぱりポプラは私にとって大切な親友だ。自らの命を危機にさらしてまで私を守ろうとしてくれるなんて、演技や生半可なまはんかな気持ちで出来るもんじゃない。少なくとも私はそう思う。



 その後、リカルドたちやゼファルさんたちはそれぞれ魔方陣の全てを解除することに成功し、目立った怪我けがもなく私たちのところへ戻ってきたのだった。また、兵士さんたちの活躍により、荷物の被害も最小限に抑えられたのも幸いだ。

 彼らの中には少し怪我人けがにんが出てしまったけど、みんな命に別状がない程度の軽傷だったので私やリーザさんの回復魔法や持ってきていた回復薬で全快できている。

 こうしてアンデッドたちが湧いて出ることもなくなり、ひとまずは危機を脱出。私たちはヴァーランドへ向けての歩みを再開させる。

 まだまだ油断は出来ないし、きっとこれからも何らかの障害が待ち受けていることだろう。でもその全てをみんなの力で乗り越えてみせる。私たちの夢を実現するまで負けるもんか!


(第5幕:終幕/第6幕へつづく……かも……!?)

※次回の更新は未定です。現在、執筆進行中です。もうしばらくお待ちいただければ幸いですっ!!
 
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