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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第1-9節:信じる気持ち
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もしかしたら、フィルザード家に関する情報があちこちに筒抜けなのかも。アンデッドに襲撃された件だって、そう考えると納得がいく。ノエルくんのように私たちの側ならまだマシだとして、相手が敵対的だと本当に厄介だな……。
ただ、私がそう頭を悩ませる一方で、リカルドはどこ吹く風という感じであっけらかんとしている。
「アイツの部下がフィルザードで極秘に諜報活動でもしていたんじゃないのか? あるいは誰かが気を利かせて伝えたか。まぁ、相手がノエルなら気にしなくてもいいじゃないか」
「いくら仲の良い間柄であっても、勝手に他家の領地でそういうことをしているのを容認するのは、領主としてどうかと思うけど……」
「それはそうなのだが、どこの領主も裏では諜報活動くらいしているもんさ。その全てを排除するのは不可能に近い。だから警戒はしつつ、場合によってはそれを利用してやるくらいの気構えでいる方がいいのさ」
「でもそのせいで、私たちは山道でアンデッドに襲われたんじゃないの?」
「……あれはどれだけ警戒しても情報漏洩が不可避な事案だった。僕の反省点としては、あんなにも大規模に仕掛けてくるとは思わなかったことだな」
リカルドは視線を逸らし、眉を曇らせている。
その様子から彼には何か思うところがあるような感じがするけど、今はこれ以上の追求をしない方が良い気がしたので、この話題は打ち切ることにする。
ただ、気になるのは彼の言った『情報漏洩が不可避だった』という点だ。情報が漏れると事前に分かっていたにもかかわらず、それを防ぐことが出来なかったのはなぜか?
それにどこの領主も裏では諜報活動をしているというなら、フィルザード家でもそういうことをしているのだろうか?
――あっ! そういえば、以前にジョセフが自身には直属の諜報部隊がいると話していたような気がする。彼らによって私の行動は密かに監視されていて、その情報を元に間者ではないかと疑われたんだった。
当然、その存在についてはリカルドだって承知しているはずだし、むしろリカルドから彼らに対して何かの指示を出していることだってあり得る。
そうか、ゴーレム事件の真相についても、その諜報部隊が主体となって調査しているのかも。そしてそのことを未だに私に話せないのは、話せないだけの何か大きな理由があるからに違いない。
だとすると……。
やっぱりそういうことなのかもしれない。
私の嫌な予感は当たってしまいそうな気がする。その予感の内容が正しいとするなら色々と辻褄が合うし、納得も出来るから。もちろん、まだ信じたくないという気持ちがあるし、その人の動機だって分からないままだけど。
私は悔しさと悲しさで思わず唇を噛む。ただ、すぐに気持ちを切り替えて何事もなかったかのように振る舞う。
だってもし私の態度がきっかけでその人に何かを悟られてしまったら、今までリカルドたちが極秘に調査を進めてきた努力が無駄になってしまいかねない。私としては素知らぬ振りをして、彼らが全てを明らかにする瞬間を待つしかない。
だから私はこの場の空気を変えるためにも、リカルドに対してそれとは全く違う話題を振ってみることにする。
「ちなみになんだけど、リカルドとしては私が少しはアリアさんに対して嫉妬した方が良かったかな?」
「ふふっ、ノーコメントだ。そもそもキミはそういう感情を抱いていたとしても、余程のことがない限りは口には出さないタイプだろう?」
「どうかな? 自分じゃ分からないよ」
「なるほど、本当にキミは変なところで素直じゃないな……」
そう言うと、リカルドはフッと微かに口元を緩める。そして次の瞬間、私を強く抱き締めてくる。
熱い体温と彼の匂いが私の心を優しく包み込む。
「リカルドっ? ど、どうしたの、急にっ?」
「なんとなく抱き締めたくなった。嫌だったなら謝るし、すぐに離れるが」
「……ううん、このままでいい。むしろもう少しこうしていてほしい」
そう返事すると、私の方からも彼に身を委ねた。
ほんの少し前まで胸がざわついていたのに、今は不思議と安心する。きっと誰よりも間近にリカルドの存在を感じるからかな。
(つづく……)
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