嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
135 / 178
第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第2-1節:ノエルとの再会

しおりを挟む
 
 その後、私たちはアリアさんの先導のおかげで何事もなくスムーズにヴァーランド領内を進むことが出来た。そして最初の関所を通過してから二日後、ようやく城塞都市・ヴァーランドへ到着となったのだった。

 その町の中心部に大きくそびえ、圧倒的な存在感を放っているのがヴァーランド城。そこは地理的に小高い丘の上となっていることもあり、街中であればどこからでも眺めることが出来る。

 今、私たちが進んでいるメインストリートも例外ではなく、常に視界の隅に捉えている状態となっている。もちろん、遠くの位置ではこうして小さく見えていても、すぐそばまで近寄れば巨大で堅牢な建物群であろうことは想像に難くない。

 そのヴァーランド城こそ今回の地方会議の会場であり、スティール伯爵はくしゃくが居住して公務をおこなっている場所でもある。

「わぁ……すごいな……」

 私は街の賑やかさと活気に圧倒され、思わず驚嘆の声を漏らしていた。

 行き交う人々の多さだけでなく、店や市場には生鮮食品や加工食品、生活用品、衣服、武具、魔法道具、宝石や貴金属、薬品などのほか、家畜や家禽かきんといった動物まで揃っている。これならおカネさえあれば大抵の物が手に入ることだろう。

 さらに娯楽施設や飲食店、宿泊所、両替商、奴隷どれい商、遊郭ゆうかく、ギルドといったものも所狭しと林立し、傍目はためにも物的に豊かなのが明確に分かる。

 フィルザードで最も大きな市街地のエンシル地区だけど、まさかそれすらもかすんでしまうほどの規模だとは想像だにしていなかった……。

 そして私たちはそれらがあるメインストリートを進んでいき、やがて緩やかな坂道に差し掛かる。

 そこを上った先にあるのが、目的地であるヴァーランド城。巨大な主城に加え、いくつもの建物ややぐら、それらを取り囲む城壁が有無を言わさぬ軍事力や権力を誇示している。

 なお、山のように巨大な門の左右には多くの兵士さんたちが微動だにせず、整然と並んでたたずんでいる。私たちが町に到着したとの報告がどこからか伝わり、出迎えのために待機しているのだろう。

 彼らの中心には礼服やドレスなどを身に付けた人たち数人が立っていて、こちらの様子をうかがっている。彼らだけは周囲と明らかに違う高貴な身なりと雰囲気。その中に唯一、私の知っている人物がいる。


 もちろんそれはノエルくん――。


 ただ、最後に会った時と比べると精悍せいかんな顔つきをしていて落ち着きもある。また少し成長して、大人びたという感じだろうか。本当に男子はちょっと見ない間に大きく成長するものなんだなと感心する。

 そういえば、彼の親衛隊長を務めているキールさんの姿が見えないけど、どうしたのだろう? 怪我けがの治癒具合が良くないのか、それとも別の場所の警備任務に当たっているということなのか。まぁ、あとでいてみることにしよう。

 こうして私たちは門の前に到着し、リカルドと私が先頭に出て前へと進んでいく。

「リカルド兄様ぁーっ!」

 私たちが歩み寄っていく最中、ノエルくんが屈託くったくのない笑みを浮かべながら駆け寄った勢いのままにリカルドへ抱きついた。まるでこらえていた喜びの感情が爆発したかのようだ。

 さらにその後は愛しそうに彼の胸に顔をこすりつけて喜んでいる。

 それに対してリカルドは苦笑しながらノエルくんの後頭部を優しく撫でる。


 ……あはは、この光景には既視感デジャビュがあるなぁ。

 ただ、私たちは旅をしてきたままの格好だから、あんなに強くリカルドに抱きついたらノエルくんの服が汚れてしまうんじゃないかと心配になる。まぁ、リカルドと再会できた嬉しさの方が勝っていて、本人は気にしていないだろうけど。

「相変わらずだな、ノエル。だが、元気そうでなによりだ」

「リカルド兄様こそ、お変わりないようで。ようこそ、我がヴァーランドへ! 歓迎します!」

「うむ、しばらく世話になる。よろしく頼むぞ。もっとも、今回は会議で忙しいし、ほかの貴族たちもいるから、あまり相手をしてやれないかもな。その点は許せ」

「はいっ、分かっています」

「ほぉ? 随分と聞き分けが良くなったじゃないか」

「俺も伯爵はくしゃく家の嫡子ちゃくしですから。公私の区別を付けねばなりません」

 りんとした表情でリカルドを見つめ、ハッキリと言い放つノエルくん。その瞳には光と力強さがあって、成人男性のような雰囲気が感じられる。

 横に立って様子を見ている私も、それには思わず少しドキッとしてしまう。

 リカルドもそんな成長したノエルくんに間近で接して、目を丸くしている。

「……お前、本当にノエルか? ちょっと見ない間に大人になったな。正直、驚いたぞ」

「うぅ、その言い方は酷いですよ、リカルド兄様……」

「いや、めているんだ。――ノエル殿、これは失礼した。貴殿のお気遣きづかい、フィルザード辺境伯へんきょうはくとして御礼申し上げる」

 リカルドは一歩下がって軽く頭を下げ、かしこまって御礼を述べた。それは彼がノエルくんをひとりの貴族としてあらためて認め、敬意を表したということなのかもしれない。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...