嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
158 / 178
第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第5-2節(第6幕:完結編):揺らめく影

しおりを挟む
 
 ……あぁ、なんて素敵な時間なんだろう。私も心と体が温かくなって、幸せを感じる。

「リカルド、私はあなたの妻なんだから素直にもっと甘えて良いんだよ。これくらいのことなら、いくらでもしてあげる。ただし、その姿を見せるのは私にだけだからね?」

「もちろんだ……。こんな姿、キミにしか見せられない。だからキミも僕に甘えてくれていい。いや、僕にだけ甘えてくれ」

「……じゃ、今度は私のお願い。私をギュッと抱き締めて」

「うん、分かった……」

 リカルドは体勢を変えて正面に座り、私の体を少し引き寄せるようにして強く抱き締めてきた。

 その際に私たちの使っていたカップがベッドの上に落ちて転がったけど、幸いにもお互いに中身をほとんど飲み干した状態みたいだったから零れなかったし、割れてもいない。


 なんだか……いつもよりリカルドの体が熱いような気がする……。


 彼の匂いも息遣いきづかいもハッキリと分かる。頭の奥が痺れるような感じがしてきて心地良い。まるで夢の世界にでもいるかのようだ。

「シャロン……キミの心臓がドキドキしているのが伝わってくる……」

「それはリカルドも同じだよ……。でも私、こんなにも熱くて心が満たされて落ち着くなんて。ずっとこうしていたいな」

「お望みとあらばいつまででも。ただ、残念ながらそうもいかないようだ。無粋なお客さんがおいでのようだからな……」

「……え?」

 状況が分からず、目を丸くする私。まるで冷や水を浴びせられたかのように意識が現実へと引き戻される。

 一方、すかさず身をひるがえして立ち上がったリカルドはベッドの横に置いてあったショートソードを手に取り、私をかばうような体勢で身構える。彼の鋭い視線の先には出入口のドアがある。

 さすがにこの段階になれば、私もその向こう側から漂ってくるドス黒い感情に気付く。ゆえに万が一に備えてベッドのサイドボードに置いてあった護身用のナイフを反射的に手に取り、警戒心を最大限に高める。



 程なくドアが静かに開き、室内に黒装束の人物が入ってくる。

 相手はひとり。体格は私よりも少し小柄だろうか。目元以外は布で覆われ、表情は分からない。ただ、その鋭く光る瞳には敵意と殺意が満ちている。

 その人物に向かってリカルドは静かに声をかける。

暗殺者アサッシンか……。誰の差し金だ?」

「…………」

「フッ、黙秘か……。まぁ、プロであればそれは当然の反応だな。ならば力尽くで口を割らせるだけだ」

「無理をしないで、リカルド。まずは大声でみんなを呼んで対処を――」

 リカルドに対して私が冷静に声をかけていると、その途中でそれに割り込む形で暗殺者アサッシンが口を開く。

「それは不可能だ。今ごろ我が同志たちがこの建物内やその周囲にいる者たちを薬で深い眠りに落としているはずだからな。場合によっては命をも奪っているかもしれぬ」

「なるほど……。だから貴様は単独で静かに僕らを襲撃したワケか。下手に騒いで、城から僕らを護るための増援がやって来ては困るものな」

「闇に紛れてターゲットを静かに始末する。誰にも気付かれぬようにな。それが真の暗殺者アサッシンよ」

「考え方は理解する。実に合理的だ。だが、相手の実力を見誤ったのは失敗だったようだな。僕もシャロンもそう簡単にはやられんぞ?」

「貴様こそ状況が分かっていないようだな。もうすぐ、我が同志たちがこの部屋に集まってくる。暗い中、夜目の利く我ら暗殺者アサッシン数人を退しりぞけられると思うのか?」

「ぐ……」

 リカルドはやや焦りの表情を見せながら強く奥歯をんだ。

 確かにこの狭い空間と暗さでは充分に剣を振るえない。しかも相手の実力や戦い方だって分からないから、どうしても防戦重視になる。そして時間が経てば敵の数が増える。

 かといって強大な攻撃魔法を使おうにも、こんな狭い場所では私たち自身も巻き添えを食ってしまう。建物そのものだって崩壊しかねない。何もかもが不利だ。

 これは絶体絶命のピンチかも……。


(第6幕:終幕/第7幕へつづく……かも……!?)

※次回の更新は未定ですっ。気長にお待ちいただければ幸いですっ!!
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...