鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

文字の大きさ
3 / 66
1章 奪う力と与える力

第2話 全てを奪われた日

しおりを挟む
 スキル鑑定式が終わり、会場から出ると、コレットが馬車の前で待っていた。僕は、自分に起きた大問題に気づかずにコレットに駆け寄る。

「ただいま!」

「おかえりなさいませ!ジュナ王子!スキル鑑定の結果はどうでしたか!?王子でしたらAランクとかでしょうか!?」

 コレットが期待した目を向けてきた。でも、さっき言われた鑑定結果とは似ても似つかないので、気まずくなる。

「えっと……」

「どうかされましたか?」

「あのね……僕、《スキル無し》って言われて……」

「……え?」

 コレットが僕の言葉を聞いて固まってしまう。そして、どんどんと顔色が青くなっていく。

「そんな!?まさか!!」

 コレットがキョロキョロと回りを見る。僕もつられて周りを見ると、何人かの衛兵が僕たちのことを指差して何か話していた。そして、その後ろから10人以上の衛兵が速足で集まってくる。なにか、王城に侵入者でも出たかのような騒ぎようだ。

「っ!?ジュナ王子!すぐに馬車に!私が必ずお守りします!」

「え?え?」

 僕は痛いくらい強く抱きしめられた後、腕を引っ張られて、馬車に放り込まれた。そして、コレットは御者を待たずに自分で馬車を動かしだす。いつものようにのんびりとした速度じゃない。ガタガタと馬車が揺れ転びそうになる。コレットはどうしてあんなに焦っているのだろうか。馬車の窓から顔を出し、コレットに話しかけた。

「ねぇ!どうしたの!コレット!ねぇってば!」

「ジュナ王子!すぐにこの国から出ます!アナスタシア様をお連れ次第、すぐにです!」

「ええ?なんで!?」

 コレットの後姿はそれはもう必死で、僕は怖くなって何も言うことができなくなってしまった。



 屋敷につくと、コレットは玄関に僕を待たせて、すぐにお母様のもとへと走っていった。屋敷中がバタバタとあわただしくなって、いつものドレス姿ではないお母様が走ってくる。平民のような身分の低い者の服装だ。

「ジュナ!ああ!私の可愛いジュナ!」

「お母様!」

 なぜだかわからないが抱きしめられた。いつもの、いい匂いのお母様だ。でも、痛いくらい強く抱きしめられる。さっきのコレットみたいに。

「アナスタシア様!ジュナ王子!お早く!」

 コレットが玄関の扉をあけようと、駆けだしたとき、突如としてそいつらは現れた。

 バン!玄関が乱暴に開き、20名を超える衛兵が入ってくる。そして僕たちは囲まれた。

「なんですかあなたたちは!こちらは王妃と王子の屋敷ですよ!」

 コレットは激昂するが、衛兵たちは微動だにしない。そこに、金髪の若い男が姿を現した。

「ジュナリュシア王子はこちらにいるでしょうか?」

 金髪でエメラルドグリーンの目を持つ男だった。王族だ。

「いません!」

「使用人風情が!無礼であるぞ!」

 衛兵の1人がコレットを取り押さえ、地面へと叩きつける。

「コレット!?コレットになにするの!やめてよ!!」

 僕はすぐに駆け寄って、衛兵の腕に抱き着いた。僕の大好きな人に乱暴しないで欲しかった。

「なんだこいつは!」

 思い切り殴られる。地面に転がって、頭がクラクラした。頬っぺたがすごく痛い。

「ああ!ジュナ!無礼者!王家の者に手を出すなど!その者を捕えよ!」

 お母様が倒れている僕を抱き寄せ、見たこともない顔で怒りを露わにする。しかし、衛兵たちは誰も動かない。

「そちらがジュナリュシア王子ですね?こちらに引き渡していただきましょう」

 金髪の男がお母様と僕に近づき、手を差し出してくる。お母様はそれを払いのけた。

「ジュナは私の大切な宝物です!誰にも渡しません!」

「……アナスタシア王妃を国家反逆罪の罪で拘束せよ。これは勅命である」

「なっ!?」

 金髪男が指示を出すと、お母様と僕は引き離され、お母様が衛兵に連れていかれる。

「お母様!お母様!」

「ジュナ!ジュナ!大丈夫です!私が!必ずなんとかします!だから!」

「黙れ逆賊が!!」

 お母様の頬を衛兵が殴りつける。

「ああ!」

「お母様!!なんで!その人は王妃だぞ!やめろ!お母様!!」

「ジュナ!生きて!強く生きて!」

 お母様がどんどんと離れていく。玄関から引きずり出され、どんどん小さくなっていく。今離れたら、もう会えなくなる。そう感じて、すごく不安な気持ちになった。なんで僕は、お母様がこんなことに?僕が、僕が《スキル無し》だから?

 涙が出てきて、両手を前に出すが、衛兵に取り押さえられて動くことができない。大好きな人が連れていかれそうなのに、僕にはどうすることもできなかった。自分の無力さが心底イヤになる。

「ジュナリュシア王子も連行しろ。別の馬車でだ」

 金髪男がそう言うと、僕を取り押さえていた衛兵が僕を抱えて歩き出した。そこに、

「ジュナ王子!私がお守りします!」

 いつの間にか拘束を抜け出したコレットが短剣を構えてぶつかってきた。衛兵の脇腹に剣がささり悲鳴があがる。聞いたこともない怒りの声、すごく恐ろしい声だった。
 僕は乱暴に地面に放り投げられる。

「このクソ女!」

 刺された衛兵が剣を抜く。僕は叫びたくても、怖くて叫べなかった。右手を前に出す。

「ジュナ王子!逃げて!」

 ズシャ!僕に手を伸ばそうとしてくれたコレットが僕の目の前で背中を斬られた。

「え?」

 僕はそうとしか発せられない。顔にコレットの血が飛び散って付着する。それを両手で触って、目の前にもってくると、たしかに赤かった。コレットが地面に倒れている。

 赤い、赤い、血の海が広がっていく。コレットの髪の色よりも赤くて、その周りは灰色だ。何が起こっているのかわからなかった。

「そこのメイドも連行しろ」

 血まみれのコレットが衛兵たちによって運ばれていく。

「そいつはそのまま火葬場へ連れていけ。私の部下に処分させる」

「はっ!」

 コイツは、一体なにを言っている?コレット?お母様?
 えっと、今日は、帰ってきたら、コレットのシチューを食べるはずで……えっと……なんだっけ……えっと……

「……ジュナリュシア王子、キミのこれからの人生は過酷なものになる。だが――」

 金髪男が何かを言っていた。何を言っているのかはわからなかった。でも、コイツが、コイツのせいでコレットとお母様が傷ついたんだ。許せない。絶対、許したらダメだ。

 僕は、止まらない涙の中、そいつのことを睨み続けた。

 この日、僕は、僕の大切なものを全て奪われた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...