4 / 66
1章 奪う力と与える力
第3話 ジュナリュシア・キーブレスの処遇
しおりを挟む
-数ヶ月後-
僕は自室で本を読んでいた。数ヶ月前に住んでいた屋敷の部屋と比べると1/10くらいの部屋だった。その部屋に置いてある質素な勉強机で、キーブレス王国の歴史書を開いている。
お母様とコレットが連れ去られた後、僕は国王の間に連行され、父直々に「穢れた血」呼ばわりされた。あのときの冷たい目は、今でも忘れることはできない。父とは数回しか会ったことはなかったが、実の息子のことをあんな目で見る男を、もはや父親だとは思えなくなっていた。
そんなことよりも、お母様とコレットのことだ。「僕のことはいいから、お母様とコレットを助けてください!」僕は国王に対して必死に主張した。しかし、それも一蹴された。
「スキル無しなどという無能を生んだ女に王族たる資格はない。王族を名乗る魔女である。よって国外追放処分とした」と告げられた。呆然としている僕に対して「命があるだけ感謝せよ。おまえの使用人のように火葬されたくはないだろう」と矢継ぎ早に言われた。
「コレット……僕のせいで……ごめんなさい……ぐす……」
一人になると、血まみれのコレットのことが脳裏に浮かんでくる。僕のことを小さい頃から育ててくれたお姉ちゃんのような存在だった。その彼女が命懸けで僕を守ろうとしてくれて、命を落としてしまった。僕は、それがまだ、現実のことのようには認識できていなかった。夢の中にいるみたいだ。
でも、あのとき指揮を執っていた金髪男や国王、ひいてはキーブレス王国への憎しみは膨れ上がるばかりだった。僕の大切な人たちを傷つけたこの国を許せない。せめて、国外追放されたというお母様だけでも僕が助けるんだ、そう思って僕は勉強を続けていた。
僕が今いるのは、王城の外壁沿いに建てれた古びた家の中だ。僕自身の処罰は保留となり、この二階建ての小さな家に一人で住むように言い渡された。いつ、どうなるのかわからない状況で一人きりで過ごすのはとても心細かった。明日にでも突然呼び出され殺されるかもしれない。僕に才能がなくて《スキル無し》だから。
でも、だからといって、お母様が罰せられるのは違う。コレットが殺されるのは違う。それだけはわかったから、僕は二人のために生きて、お母様を助けてコレットの無念を晴らすんだ、そう思って歯を食いしばった。
睨みつけるように本を読みながら誓いを立てる。僕がしっかりとこの国のことを勉強して、お母様を助ける足掛かりを見つけ、行動に移すんだ。毎日勉強して、毎日訓練して、強い男になるんだ。
「ふぅ……なるほどなぁ……」
僕は本を閉じて、それを脇に抱えて立ち上がった。キーブレス王国の歴史書を読めば読むほど気が滅入ってくるので、外に出て散歩でもしよう。誰もいない一軒家の階段を降り、玄関を開ける。
王城の広い庭を歩いていくと、兵士たちや使用人たちとすれ違うが、みんな僕を見ると目を逸らして知らんぷりを決め込んだ。やっぱり、《スキル無し》は嫌われ者なんだなぁ、と改めて実感する。そして、誰にも取り押さえられないことで、僕に一定の自由が認められていることを再認識した。たぶん、〈王族を処刑する〉というのが政治的にまずいから、とりあえず放置しているんだろう。
「はぁ……でも、いつ、どうなるかなんてわからないんだよなぁ……だって、この国ではスキルが全てだから……」
この1ヶ月、キーブレス王国について勉強したのだが、この国はスキル史上主義で、高ランクのスキル持ちは地位が高く、その逆もしかりだということがわかった。
つまり、鑑定式でAランクと判定された第四王子はチヤホヤされて立派な屋敷に住み、Eランクと判定された第五王女は、僕ほどじゃないが質素な生活を強いられる。とは言っても、本来Eランクなんて奴隷落ちもあり得るらしいので、王家の血を引く王女だから、まだマシな処遇なのだという。
そして僕は《スキル無し》つまりゴミだ。
王宮の人たちは、同じ日に《Eランク》と《スキル無し》の王族が誕生してしまい、どうすればいいのか頭を悩ませていることだろう。今は処分を保留されているが、突然呼び出されて処刑されたり、国外追放されたりするなんてことも考えられる。
不安で不安で仕方がないが、誰も助けてはくれなかった。
「僕……これからは一人ぼっちなんだよね……ううん!ダメだダメだ!僕が頑張らないと!」
僕は人通りが少ない木陰のベンチに座り、また本を開いた。
------------------------------------------------------------------------------------------------
【キーブレス王家の歴史】
キーブレス王家には、唯一無二のスキル《ギフトキー》が伝わっている。王族にはランクの大小はあれ、そのギフトキーが発現し、ギフトキーの力を使うと、他人にスキルを授けることができる。
ギフトキーを使わない限り、王族以外の人間はスキルを得ることはできない。つまり、自然にスキルが発現するのは、王家の血を引くものだけなのだ。そのため、民たちは、キーブレス王家にひれ伏した。「我々にスキルを与えてください」、そう懇願したのだ。
こうして、キーブレス王国は、スキル史上主義国家となり、必然的にスキルを与えられる者は厳選されてきた。今となっては、〈貴族以上の地位を持つものにしかスキルは与えない〉とキーブレス王家が決めてしまった。
国民たちは王家に逆らうことができなくなっていった。しかし私が考えるに――
------------------------------------------------------------------------------------------------
これが今のキーブレス王国の内情らしい。
僕は一旦顔をあげ、本から目を離して考えを整理することにした。
僕は自室で本を読んでいた。数ヶ月前に住んでいた屋敷の部屋と比べると1/10くらいの部屋だった。その部屋に置いてある質素な勉強机で、キーブレス王国の歴史書を開いている。
お母様とコレットが連れ去られた後、僕は国王の間に連行され、父直々に「穢れた血」呼ばわりされた。あのときの冷たい目は、今でも忘れることはできない。父とは数回しか会ったことはなかったが、実の息子のことをあんな目で見る男を、もはや父親だとは思えなくなっていた。
そんなことよりも、お母様とコレットのことだ。「僕のことはいいから、お母様とコレットを助けてください!」僕は国王に対して必死に主張した。しかし、それも一蹴された。
「スキル無しなどという無能を生んだ女に王族たる資格はない。王族を名乗る魔女である。よって国外追放処分とした」と告げられた。呆然としている僕に対して「命があるだけ感謝せよ。おまえの使用人のように火葬されたくはないだろう」と矢継ぎ早に言われた。
「コレット……僕のせいで……ごめんなさい……ぐす……」
一人になると、血まみれのコレットのことが脳裏に浮かんでくる。僕のことを小さい頃から育ててくれたお姉ちゃんのような存在だった。その彼女が命懸けで僕を守ろうとしてくれて、命を落としてしまった。僕は、それがまだ、現実のことのようには認識できていなかった。夢の中にいるみたいだ。
でも、あのとき指揮を執っていた金髪男や国王、ひいてはキーブレス王国への憎しみは膨れ上がるばかりだった。僕の大切な人たちを傷つけたこの国を許せない。せめて、国外追放されたというお母様だけでも僕が助けるんだ、そう思って僕は勉強を続けていた。
僕が今いるのは、王城の外壁沿いに建てれた古びた家の中だ。僕自身の処罰は保留となり、この二階建ての小さな家に一人で住むように言い渡された。いつ、どうなるのかわからない状況で一人きりで過ごすのはとても心細かった。明日にでも突然呼び出され殺されるかもしれない。僕に才能がなくて《スキル無し》だから。
でも、だからといって、お母様が罰せられるのは違う。コレットが殺されるのは違う。それだけはわかったから、僕は二人のために生きて、お母様を助けてコレットの無念を晴らすんだ、そう思って歯を食いしばった。
睨みつけるように本を読みながら誓いを立てる。僕がしっかりとこの国のことを勉強して、お母様を助ける足掛かりを見つけ、行動に移すんだ。毎日勉強して、毎日訓練して、強い男になるんだ。
「ふぅ……なるほどなぁ……」
僕は本を閉じて、それを脇に抱えて立ち上がった。キーブレス王国の歴史書を読めば読むほど気が滅入ってくるので、外に出て散歩でもしよう。誰もいない一軒家の階段を降り、玄関を開ける。
王城の広い庭を歩いていくと、兵士たちや使用人たちとすれ違うが、みんな僕を見ると目を逸らして知らんぷりを決め込んだ。やっぱり、《スキル無し》は嫌われ者なんだなぁ、と改めて実感する。そして、誰にも取り押さえられないことで、僕に一定の自由が認められていることを再認識した。たぶん、〈王族を処刑する〉というのが政治的にまずいから、とりあえず放置しているんだろう。
「はぁ……でも、いつ、どうなるかなんてわからないんだよなぁ……だって、この国ではスキルが全てだから……」
この1ヶ月、キーブレス王国について勉強したのだが、この国はスキル史上主義で、高ランクのスキル持ちは地位が高く、その逆もしかりだということがわかった。
つまり、鑑定式でAランクと判定された第四王子はチヤホヤされて立派な屋敷に住み、Eランクと判定された第五王女は、僕ほどじゃないが質素な生活を強いられる。とは言っても、本来Eランクなんて奴隷落ちもあり得るらしいので、王家の血を引く王女だから、まだマシな処遇なのだという。
そして僕は《スキル無し》つまりゴミだ。
王宮の人たちは、同じ日に《Eランク》と《スキル無し》の王族が誕生してしまい、どうすればいいのか頭を悩ませていることだろう。今は処分を保留されているが、突然呼び出されて処刑されたり、国外追放されたりするなんてことも考えられる。
不安で不安で仕方がないが、誰も助けてはくれなかった。
「僕……これからは一人ぼっちなんだよね……ううん!ダメだダメだ!僕が頑張らないと!」
僕は人通りが少ない木陰のベンチに座り、また本を開いた。
------------------------------------------------------------------------------------------------
【キーブレス王家の歴史】
キーブレス王家には、唯一無二のスキル《ギフトキー》が伝わっている。王族にはランクの大小はあれ、そのギフトキーが発現し、ギフトキーの力を使うと、他人にスキルを授けることができる。
ギフトキーを使わない限り、王族以外の人間はスキルを得ることはできない。つまり、自然にスキルが発現するのは、王家の血を引くものだけなのだ。そのため、民たちは、キーブレス王家にひれ伏した。「我々にスキルを与えてください」、そう懇願したのだ。
こうして、キーブレス王国は、スキル史上主義国家となり、必然的にスキルを与えられる者は厳選されてきた。今となっては、〈貴族以上の地位を持つものにしかスキルは与えない〉とキーブレス王家が決めてしまった。
国民たちは王家に逆らうことができなくなっていった。しかし私が考えるに――
------------------------------------------------------------------------------------------------
これが今のキーブレス王国の内情らしい。
僕は一旦顔をあげ、本から目を離して考えを整理することにした。
86
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!
克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる