鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

文字の大きさ
20 / 66
1章 奪う力と与える力

第19話 虹色の鍵

しおりを挟む
「続きまして!第五王女ピアーチェス様より!ギフトを授けていただきます!セーレン・ブーケ殿!前へ!」

 隣で泣きじゃくるアズーのことを心配そうにしていたセーレンさんが名前を呼ばれ立ち上がる。ゆっくりと祭壇に向かい、階段をのぼる。青い篝火に照らされた彼の表情には、覚悟のようなものが見てとれた。

 これから、自分もEランクのスキルを授与されるかもしれない。さっき、隣で泣いていた男と同じことになるかもしれない。しかし、それでも、このチャンスを逃すなんてことは絶対にしない。
 城下町で語った彼の志は、その表情から嘘ではなかったのだと、僕には感じ取れた。

 セーレンさんが祭壇の中心あたりで膝をつくと、ピャーねぇがゆっくりと立ち上がり、階段を降りはじめる。

 まわりの貴族どもは、見た目だけがいいEランクがどうのこうのと、好き放題言っている。僕はそんな雑音を聞かないようにして、2人の姿に集中した。

 祭壇に到着するピアーチェス第五王女。中央まで歩いていき、目の前の男に語りかけた。

「セーレン・ブーケ殿」

「はっ!」

「この度は、わたくしの呼びかけに応えていただき、ありがとうございます」

「私の方こそ!このような機会を与えてくださり!身に余る光栄です!」

「ありがとうございます。それでは、ギフトの授与をはじめます」

 ピャーねぇが両手を前にかざす。目をつむって、一呼吸おいてから、祈るような詠唱がはじまった。

「……我、ピアーチェス・キーブレスは、キーブレス王国の名の下に、汝に祝福を授けよう。汝の培ってきた才、育ててきた才、それを超えるものを与えよう。この新たな才が、汝と、そして汝の大切な者たちに祝福あらんことを、切に願う。目覚めよ、何にも代え難い才覚よ。祝福の鍵、《ギフト・キー》」

 ピャーねぇの優しい祝詞が終わると、彼女の両手から、とても大きな光が溢れ出した。祭壇の上を埋め尽くすような大きな光だった。

 今日見たどの光よりも大きい。第四王子よりも、第二王子よりも、大きな光の筋がキラキラと輝き続ける。

「これは……」
「そんなバカな……」
 会場内のざわつきが聞こえてくる。

 当然だろう、彼女はEランクのはずだ。大きな光を発している当人すら、目を見開いて驚いた顔をしていた。
 でも、それよりも、『なんて美しい光なんだ』そう思って、目を奪われている人間の方が多いように感じた。

 神秘的な光景だったと思う。光が収束していく。そして、ピャーねぇの両手の間には、虹色の美しい鍵が顕現していた。その鍵を大切なものを扱うように、そっと、両手で握りしめる。

「それでは……授与させていただきます。セーレンさん、あなたに祝福を」

 カチリ。鍵を差し込まれたセーレンさんから、透き通るような音がなり、彼の身体が緑色の光を発して、すぐに消える。

「……」

「鑑定をお願いできるかしら」

「……は、はっ!ただちに!」

 ピーねぇに声をかけられるまで硬直していた司会の爺さんがあわてて2人に近づき、水晶をかざす。

「セーレン・ブーケ殿のスキルは!スキルは……Sランクの!治癒魔法なり!」

「おぉぉぉ……」
 司会の宣言に、会場から驚きの声があがる。

 祭壇にいるピャーねぇとセーレンさんは、頑張って平静を装おうとしているが、笑顔が溢れ出しそうな表情だった。
 ピャーねぇの方は、合わせた両手を握りしめている。ガッツポーズを取りたいのを我慢してるのかな、と思うと微笑ましかった。

「それでは、お二人とも、席にお戻りください」

 司会に促されて、ピーねぇとセーレンさんが席に戻ろうとする。しかしそこに、

「ふ、ふふ!ふざけるな!なにがSランクだ!何かの間違いだ!!」

 クワトゥル第四王子が立ち上がり、ピーねぇのことを指差してきた。

「クワトゥル様!神聖なギフト授与式の最中ですぞ!」

「うるさい黙れ!鑑定士風情が!おまえ!おまえがピアーチェスと結託して嘘のスキルを報告したんだな!この!国家反逆罪だ!そいつを捕らえよ!」

 大声でまくし立てるクワトゥル。しかし、衛兵たちは困り顔でお互いの顔を見合って、動くことはなかった。

「なっ!?私は国王陛下よりこの式典を任されております!誓って嘘の報告など致しません!儀式を汚す発言ですぞ!取り消されよ!」

「うるさいうるさい!そもそも!EランクのピアーチェスがSランクのスキルを授与できるはずがないんだ!なにか!なにか不正があったはずだ!誰か!誰か動かぬか!ブラウ!アズー!そやつらを捕らえよ!」

 声をかけられた取り巻きたちも、先ほどの失態があったからか、前に出ることはない。しかし、

「たしかに、EランクがSランクを授与できるはずがない……」
「なにか不正があったのなら、それこそ極刑なのでは?」

 そんな声が会場から聞こえてくる。何人かの貴族がクワトゥルに同調するようなことを言い出したのだ。
 それを聞いたものたちの声はどんどんと大きくなっていく。自分の味方がいるとわかり、ニヤけ顔になるクワトゥル。

「Sランクの治癒魔法というのなら!証拠を見せてみろ!」

「お兄様!いい加減になさってください!ギフト授与式は我が国の大切な行事!そのような醜態をさらすべきではありません!」

「黙れ!Eランク!おまえは私の物になっていればいいのだ!私の命令だけ聞いていろ!バカ女が!」

「なっ!?」

 はぁ……やっぱりすんなり終わらないか……
 ここまで大騒ぎになるとは思っていなかったが、クワトゥルのやつが文句を言い出すのは予想していた。
 だから僕は、覚悟を決めて、1階への階段に向かうことにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...