アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

文字の大きさ
5 / 200
第一章 龍の料理人

第4話

しおりを挟む
 来た道を戻り、再び中庭へとやって来たが……

「ただでさえこちらの世界の野菜や植物のことを知らないのに……こんなに雑草だらけでは、食べられそうな植物を探すことすら大変そうだな。」

 下手したらこの植物の中に毒があるものも紛れているかもしれない。だがまぁ……ひとまず食べられるか食べられないかは別として探してみないことには始まらないか。

 念のため見つけられたものはカミルに見てもらった方がよさそうだ。
 わからないことは聞く。それが一番失敗せず上達する方法だ。変に意地を張って、わからないことをそのままにして失敗するよりかは遥かに合理的。まぁ時には自分で調べることも大事だがな。

 ……っと、さてここで立ち往生している暇があったら手を動かすとしようか。

 生い茂った腰の背丈程もある雑草を手で掻き分け、食べられそうな植物を探す。芋とか、香り高い香味野菜みたいなのがあれば最高だが、そんなに都合よく自生しているものだろうか?

 少し不安になりつつも根気よく、雑草を掻き分けながら周辺を歩き回っていると……。

「…………おっ?これは……芋づるか?」

 雑草を掻き分けているとようやく、城の城壁へと向かって伸びている蔓のようなものを見つけることができた。
 その蔓にはむかごのような実もくっついていることから、芋づるで間違いないだろう。

「よしっ、後はこれを辿って根本を掘り起こしてみよう。」

 自然薯のようなものがあるのなら、それを使った付け合わせとかスープとかが作れるだろう。

「こんなことになるんだったらスコップとかも買っておくべきだったな。」

 まぁまさかこんな異世界に急に放り出されるなんて日本にいた頃は思っても見なかったけどな。

 愚痴を言いながらも、その辺に転がっていた石と自分の手を使って蔓の根本を掘る。幸い土が柔らかいし、土の中に石がごろごろと転がっているわけではないからサクサクと掘り進められた。

 そして蔓の根本を少し掘り進めると、私が求めていたものが姿を現した。

「よし……よしっ!!芋だ。」

 自分の予想が当たっていたことに大きな喜びを覚える。何せ日本で取得した知識が、こちらの世界でも通用することがわかったのだから。

 一度喜びというものを味わうと、途端に楽しくなってしまい掘るペースも上がった。するとあっという間に……。

「採れたッ!!」

 泥だらけになった両手で土の中から自然薯のような芋を丁寧に取り出す。これでまず一つだ。

「そういえば……これをインベントリとやらに仕舞うことはできるのか?」

 ひとまずインベントリを呼び出してみるか。

「インベントリ。」

 念を込めてインベントリと言うと、目の前にさっき見た画面が表示された。

「えっと?どうすればいいんだ?近づけてみればいいのか?」

 どうすれば仕舞い込めるのか分からないので、ひとまずこの芋を画面に近づけてみることにした。

 するとどうだろう?手に持っていた芋が一瞬で消え、インベントリの欄に追加されたのだ。

「この方法で合ってたみたいだな。」

 よし……この調子でどんどんいくぞ。開いたインベントリを閉じて私は再び雑草を掻き分け、食べられそうな植物を探し始めるのだった。









「ふぅ……意外に集まったな。」

 顔を伝っていた汗を拭い、私はインベントリを開く。するとそこには、採取した食べられそうな植物がいくつか並んでいる。

 あの自然薯のような芋を採取した後、私はいくつか見たことがあるような植物を見つけていた。
 例えば球根が玉葱のようになっていた植物や、アサツキのように細いネギのような植物、後は大根や人参等の根菜のような植物等々様々なものを集めることができた。
 
「後はカミルが帰ってくるのを待つだけ……だな。」

 カミルはこの野菜っぽい植物を見たときどんな反応をするだろう?「そんな草なんかを食べるのか!?」とか言いそうだな。
 
 と、そんなことを思っていると私の上空で何かが羽ばたく音が聞こえてきた。ふと、上を見上げるとそこには……ドラゴンの姿になっているカミルがいた。その手には大きな鶏のような生き物が抱えられている。

「待たせたようじゃなミノル!!」

 バサバサと大きな翼を羽ばたかせ、カミルは私の前に降り立った。

「おぉ?それは……鶏か?」

「うむコカトリスじゃ!!……と言ってもわからぬよな。まぁちょっと大きな鶏という認識で構わぬ。ちと石化の魔眼が厄介じゃがな。」

 くつくつと笑いながらカミルはさらっとコカトリスのことを教えてくれた。
 なにやら視線を合わせると相手を石に変えてしまう、厄介な魔眼という物を持っているらしい。

「今これと目を合わせても大丈夫なんだよな?」

「問題ない、もう既に息絶えておる。死んだものは魔法を使うことはできぬからな。」

「なら安心だ。調理中に石にされたらたまったもんじゃないからな。」

 にしても鶏……か。また色々と使い道があるやつを用意してくれたな。解体して余ったガラからはいいブイヨンがとれそうだ。それに焼いて出てきた脂は鶏油としても活用できるだろう。
 まさに棄てるところが見当たらないな。全て活用させてもおう。

「さてじゃあ早速料理に……と言いたいところなんだが、その前にカミルに確認してほしいものがあるんだ。」

「ふむ、なんじゃ?」

「これらの植物に毒があるかないかを確認して欲しい。」

 私はインベントリから先ほど採取した植物をカミルの前に並べた。

「まっ、まさかミノルお主!?」

「もちろん、毒がなければな。」

 まさかカミルが本当に予想通りの反応をしてくれるとは思っていなかった。思わず笑みがこぼれてしまう。

「うぅ~これらに毒はないが……本当にこんな物が食べられるのかの?こいつなんかネバネバして土の味しかせんし、こっちの丸いのは辛いし……。」

 どうやらカミルは一度これらを食べたことがあるらしい。しかしながら美味しく食べることはできなかったようだが……。

「まぁ任せてくれ。もし、私の料理を食べて美味しくなかったら……。」

「そ、そこまで言うのなら……わかったのじゃ。」

 よし……それじゃあ一つ、存分に腕を振るわせてもらうとしようか。カミルに私がこの世界とは違う世界で学んできた料理というものを見せてやろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...