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第一章 龍の料理人
第30話
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カミルとヴェルの二人と共に街までやって来たのはよかった……だが、いよいよ街に着いてから問題は起こった。
「…………人がいないぞ?」
昨日のように街の入り口に降り立ち、街の中を覗いてみるが人一人見えない。この街の入り口を守っていた兵士らしき人もいなくなってしまっている。
「カミル、あんたまさかここで何かやったの?」
「言いがかりも良いところじゃ!!妾は何にもしておらんのじゃ!!」
ジト目でカミルを見つめ問いかけるヴェルにカミルは無実を訴える。
「ふ~ん?この街の中から恐怖の感情が風に乗って流れてきてるんだけど?」
「ホントに妾は何もしておらんのじゃ!!」
必死に自身の潔白を訴えるカミルから少し視線をずらし、ヴェルは何かを確かめるように私の方を向いた。彼女に向かって私は一つ頷きながら言った。
「カミルの言う通り、何にもしてなかったぞ?」
「そっか……じゃあこれはいったいどうなってるのかしらね~?」
「多分単純に二人のことが怖いだけじゃないのか?カミル一人の時でさえ相当みんな怖がってたし……。」
カミル一人の時でさえ、街にいた皆は道端で跪いて怯えていたというのに、そこに今回はヴェルが加わってしまった。昨日以上に命の危険を感じているのだろう。
そんなことを話していると、街の奥から一人の魔族の男性が顔を真っ青にしてこちらに走ってきた。
「ん?誰か走って来たぞ?」
バタバタと慌てて息を切らしながら走ってきた魔族の男は、ひどく怯えながらカミルとヴェルの前にひれ伏した。
「はっ……!!はぁっ!!か、カミル様にヴェル様……ら、ライネルに何の御用でしょうか?」
「別に?私は特に用はないわ。カミルがここに用事があるっていうから着いてきただけよ。」
「妾はただ食料を買いに来ただけなのじゃ。別にお主らを如何こうしようというわけではない。安心せよ。」
「ま、まことでございますか?」
「ふん、私達が本当にこの街を滅ぼすつもりならこんな無駄な会話なんてしないわよ。」
だらだらと冷や汗を流す男に、ヴェルは至極もっともな理由を突きつける。
「ヴェルの言う通りじゃ。ほれ、そうと分かったのならばそこを退かんか。妾の腹の虫が機嫌を拗らせたら……本当に街が消えるやもしれんぞ?」
「~~~っ!!も、申し訳ございません!!」
カミルに退くように半分脅された魔族の男はすぐに私たちに道を開けた。まぁ、あれだけ言われては道を譲らない理由がないだろうな。
いざ街の中に入ると、やはり外に人はいない。皆建物の中に隠れてしまっているようだ。そんな人の気配が全くしない街の中を歩きながらも私は魔族の言葉に目を向けていた。
来る前に勉強していたおかげで多少はその辺に書いてある言葉が理解できるようになっていて、私はそれにかなりの達成感を感じていた。
そして街の中を歩いている最中私はあることをカミルに問いかける。
「カミル、今日は何が食べたい?」
「妾か?……う~む、そう問われてものぉ~。この街では肉しか手に入らんのじゃろ?」
「まぁ、そうだな。」
カミルとそんなやり取りをしていると、隣を歩くヴェルが首を傾げた。
「え?魚もそこに並んでるじゃない?」
「美味い魚は手に入らぬという意味じゃ。このような陸街では新鮮な魚なんぞ買えぬのじゃ~。」
カミルは盛大にドヤ顔をかましながら私からの受け売りの知識をヴェルに教えていた。へぇ~……と納得したようなヴェルの様子に満足したらしいカミルは私にニヤリと笑いかけてくる。
「ふぇ~……カミルってばいつからそんなに食通になったのよ?」
「妾は昔っから食通なのじゃ~。」
「うっそぉ~、百年ぐらい前なんて腹に入れば何でもいいって言ってたじゃない?」
「そんなわけなかろう!!妾の腹に入ってよいのは最高に美味いものだけなのじゃ!!」
ヴェルの言う通り確かに昔のカミルはそんな感じだったのだろう。話を聞く限りあのキラーフィッシュを生で食べていたらしいし、食というものにそんなに興味がなかったんだと思う。
「ふ~ん……でもカミルが美味しいものを作れるとは思えないし~。消去法でミノルがカミルにご飯を作ってあげてるってこと?」
「そういうことだな。」
「ミノルの作る料理は最高に美味しいのじゃぞ~?」
「へぇ?それを聞いてたら私もお腹空いてきちゃったな~。」
わざとらしく横目でヴェルは私の方を見てくる。
「どうするカミル?」
「そんなの決まっておろう!!ヴェルにお主の料理の腕を存分に見せつけてやるのじゃっ!!」
ビシッと私のことを指差しながらカミルは言った。それを聞いたヴェルは狙い通りと言わんばかりに、にんまりと笑う。
カミルの性格を完全に理解した上ですべて計算尽くだったのだろうな。長い付き合いじゃないとできない芸当だ。
「了解した。じゃあ……今日は二人分の食材を買わないといけないな。」
……今簡単に二人分って言ったが、間違いなくかなりの量になるんだろうな。カミルだけでさえかなりの量を食べるというのに、そこにヴェルが加わったらって考えると……少なく見積もってもカミル二人分と言ったところだろう。
今日は大量調理になることを覚悟しなければいけなさそうだ。
「うふふ……カミルが買ったその料理の腕ってやつを見せてもらうわよ?」
「ま、美味しいものを作れるように頑張らせてもらうさ。」
さて、カミルよりかは食というものに多少敏感そうなヴェル相手に何を作ろうか?単に焼いただけの肉とかでは一般的すぎるかもしれない。高級な肉であれば良いのだろうが、それはすでにカミルが昨日食してしまっている。さぁ……困ったな。
「…………人がいないぞ?」
昨日のように街の入り口に降り立ち、街の中を覗いてみるが人一人見えない。この街の入り口を守っていた兵士らしき人もいなくなってしまっている。
「カミル、あんたまさかここで何かやったの?」
「言いがかりも良いところじゃ!!妾は何にもしておらんのじゃ!!」
ジト目でカミルを見つめ問いかけるヴェルにカミルは無実を訴える。
「ふ~ん?この街の中から恐怖の感情が風に乗って流れてきてるんだけど?」
「ホントに妾は何もしておらんのじゃ!!」
必死に自身の潔白を訴えるカミルから少し視線をずらし、ヴェルは何かを確かめるように私の方を向いた。彼女に向かって私は一つ頷きながら言った。
「カミルの言う通り、何にもしてなかったぞ?」
「そっか……じゃあこれはいったいどうなってるのかしらね~?」
「多分単純に二人のことが怖いだけじゃないのか?カミル一人の時でさえ相当みんな怖がってたし……。」
カミル一人の時でさえ、街にいた皆は道端で跪いて怯えていたというのに、そこに今回はヴェルが加わってしまった。昨日以上に命の危険を感じているのだろう。
そんなことを話していると、街の奥から一人の魔族の男性が顔を真っ青にしてこちらに走ってきた。
「ん?誰か走って来たぞ?」
バタバタと慌てて息を切らしながら走ってきた魔族の男は、ひどく怯えながらカミルとヴェルの前にひれ伏した。
「はっ……!!はぁっ!!か、カミル様にヴェル様……ら、ライネルに何の御用でしょうか?」
「別に?私は特に用はないわ。カミルがここに用事があるっていうから着いてきただけよ。」
「妾はただ食料を買いに来ただけなのじゃ。別にお主らを如何こうしようというわけではない。安心せよ。」
「ま、まことでございますか?」
「ふん、私達が本当にこの街を滅ぼすつもりならこんな無駄な会話なんてしないわよ。」
だらだらと冷や汗を流す男に、ヴェルは至極もっともな理由を突きつける。
「ヴェルの言う通りじゃ。ほれ、そうと分かったのならばそこを退かんか。妾の腹の虫が機嫌を拗らせたら……本当に街が消えるやもしれんぞ?」
「~~~っ!!も、申し訳ございません!!」
カミルに退くように半分脅された魔族の男はすぐに私たちに道を開けた。まぁ、あれだけ言われては道を譲らない理由がないだろうな。
いざ街の中に入ると、やはり外に人はいない。皆建物の中に隠れてしまっているようだ。そんな人の気配が全くしない街の中を歩きながらも私は魔族の言葉に目を向けていた。
来る前に勉強していたおかげで多少はその辺に書いてある言葉が理解できるようになっていて、私はそれにかなりの達成感を感じていた。
そして街の中を歩いている最中私はあることをカミルに問いかける。
「カミル、今日は何が食べたい?」
「妾か?……う~む、そう問われてものぉ~。この街では肉しか手に入らんのじゃろ?」
「まぁ、そうだな。」
カミルとそんなやり取りをしていると、隣を歩くヴェルが首を傾げた。
「え?魚もそこに並んでるじゃない?」
「美味い魚は手に入らぬという意味じゃ。このような陸街では新鮮な魚なんぞ買えぬのじゃ~。」
カミルは盛大にドヤ顔をかましながら私からの受け売りの知識をヴェルに教えていた。へぇ~……と納得したようなヴェルの様子に満足したらしいカミルは私にニヤリと笑いかけてくる。
「ふぇ~……カミルってばいつからそんなに食通になったのよ?」
「妾は昔っから食通なのじゃ~。」
「うっそぉ~、百年ぐらい前なんて腹に入れば何でもいいって言ってたじゃない?」
「そんなわけなかろう!!妾の腹に入ってよいのは最高に美味いものだけなのじゃ!!」
ヴェルの言う通り確かに昔のカミルはそんな感じだったのだろう。話を聞く限りあのキラーフィッシュを生で食べていたらしいし、食というものにそんなに興味がなかったんだと思う。
「ふ~ん……でもカミルが美味しいものを作れるとは思えないし~。消去法でミノルがカミルにご飯を作ってあげてるってこと?」
「そういうことだな。」
「ミノルの作る料理は最高に美味しいのじゃぞ~?」
「へぇ?それを聞いてたら私もお腹空いてきちゃったな~。」
わざとらしく横目でヴェルは私の方を見てくる。
「どうするカミル?」
「そんなの決まっておろう!!ヴェルにお主の料理の腕を存分に見せつけてやるのじゃっ!!」
ビシッと私のことを指差しながらカミルは言った。それを聞いたヴェルは狙い通りと言わんばかりに、にんまりと笑う。
カミルの性格を完全に理解した上ですべて計算尽くだったのだろうな。長い付き合いじゃないとできない芸当だ。
「了解した。じゃあ……今日は二人分の食材を買わないといけないな。」
……今簡単に二人分って言ったが、間違いなくかなりの量になるんだろうな。カミルだけでさえかなりの量を食べるというのに、そこにヴェルが加わったらって考えると……少なく見積もってもカミル二人分と言ったところだろう。
今日は大量調理になることを覚悟しなければいけなさそうだ。
「うふふ……カミルが買ったその料理の腕ってやつを見せてもらうわよ?」
「ま、美味しいものを作れるように頑張らせてもらうさ。」
さて、カミルよりかは食というものに多少敏感そうなヴェル相手に何を作ろうか?単に焼いただけの肉とかでは一般的すぎるかもしれない。高級な肉であれば良いのだろうが、それはすでにカミルが昨日食してしまっている。さぁ……困ったな。
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