39 / 200
第一章 龍の料理人
第38話
しおりを挟む
厨房へと足を運んだ私は早速カミル達のお菓子を作るために準備を始めた。
「さて……先ずは卵を割るところからだな。」
今回作るぷるっぷるでとろっとろのお菓子はプリンだ。使う材料も少なく、手軽に作れて尚且つ美味しい。それがこのプリンの魅力だろう。
「全卵1に対して卵黄を2の割合で卵液を混ぜて……そこに牛乳と蜂蜜を入れる。」
今回全卵1に対して卵黄を2の割合で卵液を作る理由は、蜂蜜を使うからだ。蜂蜜にはたんぱく質分解酵素という、卵の黄身などに含まれるたんぱく質が固まるのを阻害する働きを持つ酵素が含まれている。
故に少し多く卵黄を入れなければ固まらないことがあるのだ。
「しっかりと混ぜて目の細かい裏漉し器で裏漉せばプリン液の完成だ。」
次は……カラメルを作るとしようか。
意外と知られていないが、砂糖ではなく蜂蜜でもカラメルは作ることができる。砂糖でカラメルを作るときと同様に、鍋に蜂蜜を入れて火にかけ続ければ蜂蜜カラメルができるのだ。
蜂蜜でカラメルを作ることができたら型に流し込み、その上から先ほど作ったプリン液を重ねるように流し込む。
そして最後、蒸す前にプリン液の上に浮いている小さい泡を取り除いたら下準備は終了だ。
「天板にプリン液を流し込んだ型を並べて、水を張る。後はオーブンで蒸し焼きだ。」
150℃に予熱したオーブンで30分程度加熱してやれば固まるだろう。
後は待つのみ……となったので洗い物をしながらカミル達の方にチラリと目を向けてみると。こんな声が聞こえてきた。
「むふふふふ~……ぷるっぷるでとろっとろ……楽しみなのじゃ~。」
「ね~?どんな物なのか想像もつかないわ。」
カミルはにやけ面しながら、今にも口元からよだれがポタリと垂れそうになっている。一方のヴェルは平静を装ってはいるものの、やはり待ちきれないのか少しそわそわしている。
これは二人がプリンを食べたときの反応が楽しみだ。多分、クッキーよりも気に入ってくれると思うんだがな。
……そうだ。プリンかできるのを待つ間に、少しヴェルにこの世界の料理のことについて聞いてみるか。
「なぁ、ヴェル……」
「できたのかしら!?」
私が話しかけると、目を輝かせながらヴェルはこちらを振り向いた。
「あ、いや……もう少しかかる。」
「そ……そう、で?何か用かしら?」
少し残念そうにうつむいた彼女は、私に用件を問いかけてくる。
「ヴェルは私以外が作った料理ってやつを食べたことがあるんだよな?」
「うん、あるわ。……といっても料理っていう料理を食べたのは魔王様の城に召集された時だけかしら。それがどうかしたの?」
「いやな、私は自分以外の料理人が作った料理を見たことがなくてな。差し支えなかったらどんな料理があったのか教えて欲しいんだが……。」
「あぁ~……そういうことね。」
私の説明に納得したようにヴェルは頷いた。
「あの時は確か……豚の丸焼きと、生の野菜と、果物の盛り合わせだったかしら。」
「ふむ、豚の丸焼きは……どんな味がついていた?それと生野菜には何かかかってたか?」
「豚の丸焼きはすんごいしょっぱかったのを覚えてるわ。野菜には何も……本当にそのままだったわね。魔王様の前だったから我慢して食べたけど……。」
「なるほど?」
……今までは憶測の域を出なかったことが、今確信に変わった。適切な調理器具や調味料などがあるにも関わらず、この世界の料理文化は遅れている
魔王なんて魔族の中で一番偉い人がいる城で出される料理がそれならばなおのこと遅れているのだろう。
「だからミノル、貴方が作ったハンバーグってやつを食べたときはホントビックリしたのよ?美味しすぎてね。」
「むっふっふ、魔王様御抱えの料理人とやらよりも妾の御抱えのミノルの方が優れておる証拠じゃ!!」
えっへんと大きく胸を張り、カミルは言った。
「今はまだあれだけど~ミノルの噂がたったら魔王様に持ってかれちゃうんじゃな~い?」
「なっ……!?そ、それは困るのじゃ!!ミノルは妾の料理人なのじゃ!!…………後で本格的に対策を練らねばらなんやもしれんのぉ。」
真剣な表情を浮かべぶつぶつと何かを呟き始めたカミル。そんな彼女に私は苦笑いを浮かべながら言った。
「たかが料理が作れるってだけだぞ?それぐらいで魔王ともあろう者が他人のを奪ったりしないだろ。」
「む、むぅ……そうかのぉ~。」
未だ不安が拭えない感じのカミル。別にそんなに心配する必要ないと思うんだけどな……。
「それに、ヴェルが食事をしたとき魔王も一緒に食べてたんじゃないのか?」
「そうよ?」
「その時魔王はその料理を美味しそうに食べてたんじゃないのか?」
私の予想が正しければ……魔王はその料理人の作る味が気に入ったから雇っているのだと思う。たとえヴェルが美味しいと思わなくても、魔王本人は美味しいと……。
「え?魔王様は果物だけ食べてたわよ?他の料理には一切手を付けてなかったわ。」
うん……うん。……完全に予想外だ。
「なんなら私に美味しい?ってすごい不安そうな顔して聞いてきたもの。」
「その時は……?」
「もちろん美味しいって言ったわ。……不味いなんて言ったら私の首が危ないもの。」
どうやら魔王自身、専属の料理人の作る料理は美味しくないとわかっていたようだな。
そうなると、カミルの不安が万が一現実に起こりうる可能性が出てきたな。私にできるのはそうならないように祈ることだけ……か。
「……っとさて、そろそろ時間だ。」
オーブンを開け、プリンを取り出し冷蔵庫で冷やす。そして完全に冷えたものを皿に出して私は二人のもとへと運んだ。
さて、どんな反応をしてくれるかな?
「さて……先ずは卵を割るところからだな。」
今回作るぷるっぷるでとろっとろのお菓子はプリンだ。使う材料も少なく、手軽に作れて尚且つ美味しい。それがこのプリンの魅力だろう。
「全卵1に対して卵黄を2の割合で卵液を混ぜて……そこに牛乳と蜂蜜を入れる。」
今回全卵1に対して卵黄を2の割合で卵液を作る理由は、蜂蜜を使うからだ。蜂蜜にはたんぱく質分解酵素という、卵の黄身などに含まれるたんぱく質が固まるのを阻害する働きを持つ酵素が含まれている。
故に少し多く卵黄を入れなければ固まらないことがあるのだ。
「しっかりと混ぜて目の細かい裏漉し器で裏漉せばプリン液の完成だ。」
次は……カラメルを作るとしようか。
意外と知られていないが、砂糖ではなく蜂蜜でもカラメルは作ることができる。砂糖でカラメルを作るときと同様に、鍋に蜂蜜を入れて火にかけ続ければ蜂蜜カラメルができるのだ。
蜂蜜でカラメルを作ることができたら型に流し込み、その上から先ほど作ったプリン液を重ねるように流し込む。
そして最後、蒸す前にプリン液の上に浮いている小さい泡を取り除いたら下準備は終了だ。
「天板にプリン液を流し込んだ型を並べて、水を張る。後はオーブンで蒸し焼きだ。」
150℃に予熱したオーブンで30分程度加熱してやれば固まるだろう。
後は待つのみ……となったので洗い物をしながらカミル達の方にチラリと目を向けてみると。こんな声が聞こえてきた。
「むふふふふ~……ぷるっぷるでとろっとろ……楽しみなのじゃ~。」
「ね~?どんな物なのか想像もつかないわ。」
カミルはにやけ面しながら、今にも口元からよだれがポタリと垂れそうになっている。一方のヴェルは平静を装ってはいるものの、やはり待ちきれないのか少しそわそわしている。
これは二人がプリンを食べたときの反応が楽しみだ。多分、クッキーよりも気に入ってくれると思うんだがな。
……そうだ。プリンかできるのを待つ間に、少しヴェルにこの世界の料理のことについて聞いてみるか。
「なぁ、ヴェル……」
「できたのかしら!?」
私が話しかけると、目を輝かせながらヴェルはこちらを振り向いた。
「あ、いや……もう少しかかる。」
「そ……そう、で?何か用かしら?」
少し残念そうにうつむいた彼女は、私に用件を問いかけてくる。
「ヴェルは私以外が作った料理ってやつを食べたことがあるんだよな?」
「うん、あるわ。……といっても料理っていう料理を食べたのは魔王様の城に召集された時だけかしら。それがどうかしたの?」
「いやな、私は自分以外の料理人が作った料理を見たことがなくてな。差し支えなかったらどんな料理があったのか教えて欲しいんだが……。」
「あぁ~……そういうことね。」
私の説明に納得したようにヴェルは頷いた。
「あの時は確か……豚の丸焼きと、生の野菜と、果物の盛り合わせだったかしら。」
「ふむ、豚の丸焼きは……どんな味がついていた?それと生野菜には何かかかってたか?」
「豚の丸焼きはすんごいしょっぱかったのを覚えてるわ。野菜には何も……本当にそのままだったわね。魔王様の前だったから我慢して食べたけど……。」
「なるほど?」
……今までは憶測の域を出なかったことが、今確信に変わった。適切な調理器具や調味料などがあるにも関わらず、この世界の料理文化は遅れている
魔王なんて魔族の中で一番偉い人がいる城で出される料理がそれならばなおのこと遅れているのだろう。
「だからミノル、貴方が作ったハンバーグってやつを食べたときはホントビックリしたのよ?美味しすぎてね。」
「むっふっふ、魔王様御抱えの料理人とやらよりも妾の御抱えのミノルの方が優れておる証拠じゃ!!」
えっへんと大きく胸を張り、カミルは言った。
「今はまだあれだけど~ミノルの噂がたったら魔王様に持ってかれちゃうんじゃな~い?」
「なっ……!?そ、それは困るのじゃ!!ミノルは妾の料理人なのじゃ!!…………後で本格的に対策を練らねばらなんやもしれんのぉ。」
真剣な表情を浮かべぶつぶつと何かを呟き始めたカミル。そんな彼女に私は苦笑いを浮かべながら言った。
「たかが料理が作れるってだけだぞ?それぐらいで魔王ともあろう者が他人のを奪ったりしないだろ。」
「む、むぅ……そうかのぉ~。」
未だ不安が拭えない感じのカミル。別にそんなに心配する必要ないと思うんだけどな……。
「それに、ヴェルが食事をしたとき魔王も一緒に食べてたんじゃないのか?」
「そうよ?」
「その時魔王はその料理を美味しそうに食べてたんじゃないのか?」
私の予想が正しければ……魔王はその料理人の作る味が気に入ったから雇っているのだと思う。たとえヴェルが美味しいと思わなくても、魔王本人は美味しいと……。
「え?魔王様は果物だけ食べてたわよ?他の料理には一切手を付けてなかったわ。」
うん……うん。……完全に予想外だ。
「なんなら私に美味しい?ってすごい不安そうな顔して聞いてきたもの。」
「その時は……?」
「もちろん美味しいって言ったわ。……不味いなんて言ったら私の首が危ないもの。」
どうやら魔王自身、専属の料理人の作る料理は美味しくないとわかっていたようだな。
そうなると、カミルの不安が万が一現実に起こりうる可能性が出てきたな。私にできるのはそうならないように祈ることだけ……か。
「……っとさて、そろそろ時間だ。」
オーブンを開け、プリンを取り出し冷蔵庫で冷やす。そして完全に冷えたものを皿に出して私は二人のもとへと運んだ。
さて、どんな反応をしてくれるかな?
0
あなたにおすすめの小説
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】
普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます)
【まじめなあらすじ】
主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、
「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」
転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。
魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。
友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、
「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」
「「「違う、そうじゃない!!」」」
これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。
※他サイトにも投稿中
※旧タイトル
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる