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第一章 龍の料理人
第76話
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褒美についての話をアルマスが切り出すと、カミルはうんざりしたように言う。
「ふん……妾は欲しいものなど特にはない。ヴェルお主はどうじゃ?」
「う~ん、そうねぇ~……これと言って欲しいものはないかも……ね。」
「……というわけじゃ。この褒美の件についてはミノルに一任するぞ。」
ポンとカミルに肩を叩かれ、褒美のことについて任されてしまった。幾分か悩んだ末、私はアルマスに今欲しいものを告げた。
「……であれば、世界樹の花を使って作られた薬が欲しいですね。」
「ほぅ?つまりエルフの秘薬が欲しい……と?何か病でも患っている……というわけではなさそうだけどね?」
「実はこの子、何が理由かはわからないんですが……言葉が話せなくなってしまったようで、そのエルフの秘薬とやらならどうにか治せるのではと思った次第です。」
私の上に座るノノの頭を撫でながら私は言った。
「なるほどね。……いいよ。だけど、ちょっと待っててくれるかな?せっかくだから新鮮な花を摘んで、それで作ってあげるよ。」
アルマスは私の申し出に頷くと、スッと立ち上がる。すると、私達を残して部屋を後にした。
そして私達だけが部屋に取り残されると、カミルが口を開く。
「ふ~む、ミノル。お主は本当に欲がないのぉ?」
「……?どういうことだ?」
「せっかくエルフの王直々に褒美が貰えるのじゃ、何か本当に自分の欲しいものをねだれば良かったではないか?」
「私も特に自分が欲しいものは無かったし……その、エルフの秘薬ってやつでノノが話せるようになるならいいなって思ったんだ。」
ノノがいったいどういう理由で話せなくなってしまったのかは、私にもわからない。病院なのか……それとも奴隷になってしまったことからの精神的ショックなのか。いずれにせよ、少しでも可能性があるのなら試してみたかった。
「あう……あう!!」
「……ノノが何でそこまでしてくれるの?って言ってる。」
ノノの言葉をマームが訳して私に伝えてくれた。
「どうして……って、そりゃあ話せないのってツラいだろうし……。それにノノは私の弟子であり、この世界の家族みたいなものだしな。私ができることはやってあげたいんだよ。」
「あう~……。」
私の膝の上で耳をペタンとさせているノノの頭を撫でながら私は言った。
「ふっ、まぁミノルらしいと言えばミノルらしいのかもしれんのぉ。」
「ね~?それ私も思ったわ。」
カミルとヴェルはお互いに顔を見合わせながら笑った。
「にしても、まさかエルフの秘薬をこの目で見る日が来るとは思ってもみなかったのじゃ。」
「ん?カミルも見たことなかったのか?」
「まぁの、エルフの秘薬は門外不出の伝説の薬と言われておるぐらい外には流通しない薬じゃ。この国に住むエルフどもでもなかなか手に入らない……と聞いたことがあるぞ?」
「そ、そうだったのか。」
いや、そんなものをアルマスは良く承諾してくれたな。改めて彼の心の広さを知ってしまったかもしれない。
「カミルさんの言っていることは大分昔のことですよ。」
ふと、声がした方に目を向けると、アルマスが一輪の綺麗な白い花を手に持ち戻ってきた。そして、再び私達の前に座ると話し始めた。
「僕は父と違って、苦しんでいる民には惜しみ無くこの秘薬を作ります。まぁ……それでもこうやって他国の人のために薬を作るのは初めてですけどね。」
アルマスが手に持った白い花に向かってなにやら呪文のような物をぶつぶつと唱えると、突然その花を光が包んだ。その光をアルマスが優しく手で包み込む。
そして、光が収まりアルマスが手を開くとそこには、花ではなくまるで真珠のように白く輝く丸薬のようなものがあった。
「ほぉ~……それがエルフの秘薬か。妾達の前で作るのを見せてよかったのかの?」
「別に構いませんよ。これは現妖精王である僕にしか作れませんから。」
どういうからくりかはわからないが、この秘薬はアルマスにしか作れないらしい。彼はそれを丁寧に箱に入れると、それを私に差し出してきた。
「はい、どうぞ。これがエルフの秘薬……どんな病も治す万能薬だよ。処方するときは口のなかでコロコロと転がすようにして、少しずつ溶かしながら食べるんだ。」
「ありがとうございます。」
帰ったら早速ノノに食べてもらおう。これを食べて言葉が話せるようになればいいんだが……。そんなことを思いながら私はその秘薬をインベントリにしまう。
「さて……カミルさん達はこれからこの国を観光していくんですか?」
「うむ、そうじゃな。ミノルが料理に使えるようなものがあれば買って帰ろうかと思っておった。」
「そうですか、では僕の古い友人が営んでいる店に行くといいですよ。あそこならこの国でしか手に入らない物がたくさんありますから……。」
「ほぅ?その店の名はなんと言うのじゃ?」
「エルードの問屋です。店主のエルードには僕から声をかけておきますよ。」
アルマスはそう言うと、部屋の中の籠にいた1羽の鳥の足に何かを書いた紙をくくりつけ外へと解き放った。
「これでエルードに僕の言葉が伝わるはず……。彼の店はここを出て道なりに行けば看板が見えてきます。」
「そうか、では……ありがたく褒美ももらったことじゃ。妾達はそろそろお暇させてもらうとしようかの。」
すると、カミルはスッと立ち上がる。私達もそれに続いて立ち上がった。
そんな私達にアルマスはにこやかに微笑みながら言った。
「この国を存分に楽しんでくださいね。」
「うむ、そうさせてもらうぞ。では失礼するのじゃ。」
カミルの後に続き私達は部屋を後にする。そんな私達の後ろ姿をアルマスは手をヒラヒラと振りながら最後まで眺めていた。
「ふん……妾は欲しいものなど特にはない。ヴェルお主はどうじゃ?」
「う~ん、そうねぇ~……これと言って欲しいものはないかも……ね。」
「……というわけじゃ。この褒美の件についてはミノルに一任するぞ。」
ポンとカミルに肩を叩かれ、褒美のことについて任されてしまった。幾分か悩んだ末、私はアルマスに今欲しいものを告げた。
「……であれば、世界樹の花を使って作られた薬が欲しいですね。」
「ほぅ?つまりエルフの秘薬が欲しい……と?何か病でも患っている……というわけではなさそうだけどね?」
「実はこの子、何が理由かはわからないんですが……言葉が話せなくなってしまったようで、そのエルフの秘薬とやらならどうにか治せるのではと思った次第です。」
私の上に座るノノの頭を撫でながら私は言った。
「なるほどね。……いいよ。だけど、ちょっと待っててくれるかな?せっかくだから新鮮な花を摘んで、それで作ってあげるよ。」
アルマスは私の申し出に頷くと、スッと立ち上がる。すると、私達を残して部屋を後にした。
そして私達だけが部屋に取り残されると、カミルが口を開く。
「ふ~む、ミノル。お主は本当に欲がないのぉ?」
「……?どういうことだ?」
「せっかくエルフの王直々に褒美が貰えるのじゃ、何か本当に自分の欲しいものをねだれば良かったではないか?」
「私も特に自分が欲しいものは無かったし……その、エルフの秘薬ってやつでノノが話せるようになるならいいなって思ったんだ。」
ノノがいったいどういう理由で話せなくなってしまったのかは、私にもわからない。病院なのか……それとも奴隷になってしまったことからの精神的ショックなのか。いずれにせよ、少しでも可能性があるのなら試してみたかった。
「あう……あう!!」
「……ノノが何でそこまでしてくれるの?って言ってる。」
ノノの言葉をマームが訳して私に伝えてくれた。
「どうして……って、そりゃあ話せないのってツラいだろうし……。それにノノは私の弟子であり、この世界の家族みたいなものだしな。私ができることはやってあげたいんだよ。」
「あう~……。」
私の膝の上で耳をペタンとさせているノノの頭を撫でながら私は言った。
「ふっ、まぁミノルらしいと言えばミノルらしいのかもしれんのぉ。」
「ね~?それ私も思ったわ。」
カミルとヴェルはお互いに顔を見合わせながら笑った。
「にしても、まさかエルフの秘薬をこの目で見る日が来るとは思ってもみなかったのじゃ。」
「ん?カミルも見たことなかったのか?」
「まぁの、エルフの秘薬は門外不出の伝説の薬と言われておるぐらい外には流通しない薬じゃ。この国に住むエルフどもでもなかなか手に入らない……と聞いたことがあるぞ?」
「そ、そうだったのか。」
いや、そんなものをアルマスは良く承諾してくれたな。改めて彼の心の広さを知ってしまったかもしれない。
「カミルさんの言っていることは大分昔のことですよ。」
ふと、声がした方に目を向けると、アルマスが一輪の綺麗な白い花を手に持ち戻ってきた。そして、再び私達の前に座ると話し始めた。
「僕は父と違って、苦しんでいる民には惜しみ無くこの秘薬を作ります。まぁ……それでもこうやって他国の人のために薬を作るのは初めてですけどね。」
アルマスが手に持った白い花に向かってなにやら呪文のような物をぶつぶつと唱えると、突然その花を光が包んだ。その光をアルマスが優しく手で包み込む。
そして、光が収まりアルマスが手を開くとそこには、花ではなくまるで真珠のように白く輝く丸薬のようなものがあった。
「ほぉ~……それがエルフの秘薬か。妾達の前で作るのを見せてよかったのかの?」
「別に構いませんよ。これは現妖精王である僕にしか作れませんから。」
どういうからくりかはわからないが、この秘薬はアルマスにしか作れないらしい。彼はそれを丁寧に箱に入れると、それを私に差し出してきた。
「はい、どうぞ。これがエルフの秘薬……どんな病も治す万能薬だよ。処方するときは口のなかでコロコロと転がすようにして、少しずつ溶かしながら食べるんだ。」
「ありがとうございます。」
帰ったら早速ノノに食べてもらおう。これを食べて言葉が話せるようになればいいんだが……。そんなことを思いながら私はその秘薬をインベントリにしまう。
「さて……カミルさん達はこれからこの国を観光していくんですか?」
「うむ、そうじゃな。ミノルが料理に使えるようなものがあれば買って帰ろうかと思っておった。」
「そうですか、では僕の古い友人が営んでいる店に行くといいですよ。あそこならこの国でしか手に入らない物がたくさんありますから……。」
「ほぅ?その店の名はなんと言うのじゃ?」
「エルードの問屋です。店主のエルードには僕から声をかけておきますよ。」
アルマスはそう言うと、部屋の中の籠にいた1羽の鳥の足に何かを書いた紙をくくりつけ外へと解き放った。
「これでエルードに僕の言葉が伝わるはず……。彼の店はここを出て道なりに行けば看板が見えてきます。」
「そうか、では……ありがたく褒美ももらったことじゃ。妾達はそろそろお暇させてもらうとしようかの。」
すると、カミルはスッと立ち上がる。私達もそれに続いて立ち上がった。
そんな私達にアルマスはにこやかに微笑みながら言った。
「この国を存分に楽しんでくださいね。」
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