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第一章 龍の料理人
第77話
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ミノル達が去った後、自室に戻ったアルマスはポツリと呟く。
「……彼が君のお気に入りだね?アベル?」
アルマスが一人そう呟くと、何もない空間に切れ目が入りそこからひょっこりとアベルが顔を出した。
「ちぇ~、な~んだ気付いてたんだ。」
「まぁ君のことだからね、来てるんじゃないかなって思っただけさ。」
つまらなそうに口を尖らせながらアベルはアルマスの自室の部屋に置かれていた椅子に腰かける。すると、クスリと笑いながらその正面にアルマスが腰かけた。
「それで?彼が君が異世界とやらから呼び出した平和の使徒……で間違いないのかい?」
「平和の使徒か。彼にその力があるのかどうかは……正直ボクもわかってないんだよね~。だって世界の抑止力になるような圧倒的な力を持っているわけでもなさそうだし。」
「確かにね、僕が見た限りでもそんなに強い力を持っているようには見えなかったな。カミルさんとヴェルさんの血を取り込んでいるみたいだけどね。」
アルマスの屋敷で働く小さな妖精が持ってきたお茶を飲みながらアベルとアルマスはミノルのことについて話し合っていた。そんな最中、アベルはアルマスのある言葉に再び口を尖らせた。
「む~、なんでカミルとヴェルにはさん付けでボクのことは呼び捨てなのさ~。」
「君が昔そう呼んでくれって言ってたじゃないか。もう忘れちゃったのかい?」
「あ、あれ?そうだっけ?ボクそんなこと言ったかなぁ~。」
「最近魔王としての責務に追われて、ついに物忘れまで発症しちゃったかい?なんなら秘薬でも作ってあげようか?」
くつくつと笑いながらアルマスはアベルのことをからかうように言った。
「うるさいなぁ~、間に合ってるよ!!」
「ふふふっ……まぁ、冗談はこの辺にしておいてだね。最近どうなの?勇者との関係は。」
「何回も話し合いの誘いを送ってるんだけどね~、全っ……然!!返事が返ってこないよ。国境を守ってる兵にもできる限り人間は殺さないように~って言ってるけど、最近なんでか知らないけど襲撃が多くて……不殺ってのもそろそろ限界に近いんだよね。」
はぁ~……と大きくため息を吐きながらアベルは言った。
「アルマスの方はどうなのさ、この前人間にエルフの秘薬を寄越せ~とかって言われたって言ってなかったっけ?」
「あぁ、それはしっかりと断ったんだけど……断った次の日にコレが届いてね。」
アルマスはスッと立ち上がると、机の中から一枚の紙を取り出してアベルに見せた。その手紙を見たアベルは大きく目を見開いく。
「……!!これって……。」
その手紙にはご丁寧にエルフの言葉でこう……書いてあった。「我等はこれから精霊種すべてを、魔族と見なし攻撃を開始する。民を守りたくばエルフの秘薬を定期的に我等に供給されたし。」と。
「どうするのさ、これ……。」
「どうするもなにも、こんな脅しに屈するわけにはいかないよね。僕らは真っ向から人間と対立することになりそうだよ。」
半ば呆れ気味に鼻から息を吐き出しながらアルマスは言う。そんな彼にアベルはある提案を持ちかけた。
「それなら、ボクと同盟を結ばない?同盟を結べばボクの方からアルマスの方に応援を送れるし……それにっ……。」
「いや、その同盟は結べないよ。残念だけど……ね。」
アベルの話を遮るように手を前に出し、アルマスは同盟の申し入れを断った。
「どうしてさ!?」
「確かにアベルは僕の方に応援を送れるかもしれない。……でも僕の方は自分の国を守るので精一杯だ。だから対等な同盟にはなれないよ。」
「対等じゃなくていい!!ボクは……ボクはもう、魔王と勇者の為に誰かが死ぬのは嫌なんだよ……。」
心の底から絞り出すような声で、アベルはアルマスに自分の本心を打ち明ける。それを聞いたアルマスは、目をつぶり一度考える素振りを見せた後口を開いた。
「…………わかった。じゃあ、こうしよう。今日から七日後……彼の持っているはずの力、平和をもたらす力を僕に示してくれないか?」
「いいよ。ミノルにはボクからお願いしておくから……。その代わり、ミノルの力に納得したら……絶対にボクと同盟を結んでもらうからね?」
「あぁ……約束するよ。」
約束する……そうアルマスの口に言わせたアベルは、にんまりと口角を吊り上げて笑う。
「じゃあ、それで決まりっ!!さっきの言葉この水晶にしっかり録音したからね~?」
アベルは何もない空間から透き通った水晶玉を取り出すと、それに魔力を流し込んだ……すると、さっきのやり取りの一部始終が全て流れた。
「……もしかして、僕のこと嵌めた?」
「あはっ、嵌めたなんて~……そんなぁ~ねぇ人聞きが悪いよ?ただ、ボクはさっきのやり取りを録音してただけ。逃げられないようにね~。」
悪魔的な笑みを浮かべるアベル。そんな彼女を見てアルマスはすっかり嵌められていたことに気が付いた。
「んふふ~、それじゃあ七日後……今度はボクがミノルを連れてくるよ。じゃ、まったね~!!」
「あ、アベル……。」
逃げるようにアベルは空間を裂き、その中に飛び込んでいった。アルマスは彼女を呼び止めようとしたが、時既に遅かった。既に裂けた空間はピッタリと閉じ、彼女の気配は微塵も無かったのだ。
「はぁ~~~……昔っから変わらないなぁ。」
ポリポリと頬を人差し指で掻きながらポツリとアルマスは呟く。そしてミノル達が向かった方角を見据えた。
「七日後……か。楽しみにしておくよ、平和の使徒君。」
「……彼が君のお気に入りだね?アベル?」
アルマスが一人そう呟くと、何もない空間に切れ目が入りそこからひょっこりとアベルが顔を出した。
「ちぇ~、な~んだ気付いてたんだ。」
「まぁ君のことだからね、来てるんじゃないかなって思っただけさ。」
つまらなそうに口を尖らせながらアベルはアルマスの自室の部屋に置かれていた椅子に腰かける。すると、クスリと笑いながらその正面にアルマスが腰かけた。
「それで?彼が君が異世界とやらから呼び出した平和の使徒……で間違いないのかい?」
「平和の使徒か。彼にその力があるのかどうかは……正直ボクもわかってないんだよね~。だって世界の抑止力になるような圧倒的な力を持っているわけでもなさそうだし。」
「確かにね、僕が見た限りでもそんなに強い力を持っているようには見えなかったな。カミルさんとヴェルさんの血を取り込んでいるみたいだけどね。」
アルマスの屋敷で働く小さな妖精が持ってきたお茶を飲みながらアベルとアルマスはミノルのことについて話し合っていた。そんな最中、アベルはアルマスのある言葉に再び口を尖らせた。
「む~、なんでカミルとヴェルにはさん付けでボクのことは呼び捨てなのさ~。」
「君が昔そう呼んでくれって言ってたじゃないか。もう忘れちゃったのかい?」
「あ、あれ?そうだっけ?ボクそんなこと言ったかなぁ~。」
「最近魔王としての責務に追われて、ついに物忘れまで発症しちゃったかい?なんなら秘薬でも作ってあげようか?」
くつくつと笑いながらアルマスはアベルのことをからかうように言った。
「うるさいなぁ~、間に合ってるよ!!」
「ふふふっ……まぁ、冗談はこの辺にしておいてだね。最近どうなの?勇者との関係は。」
「何回も話し合いの誘いを送ってるんだけどね~、全っ……然!!返事が返ってこないよ。国境を守ってる兵にもできる限り人間は殺さないように~って言ってるけど、最近なんでか知らないけど襲撃が多くて……不殺ってのもそろそろ限界に近いんだよね。」
はぁ~……と大きくため息を吐きながらアベルは言った。
「アルマスの方はどうなのさ、この前人間にエルフの秘薬を寄越せ~とかって言われたって言ってなかったっけ?」
「あぁ、それはしっかりと断ったんだけど……断った次の日にコレが届いてね。」
アルマスはスッと立ち上がると、机の中から一枚の紙を取り出してアベルに見せた。その手紙を見たアベルは大きく目を見開いく。
「……!!これって……。」
その手紙にはご丁寧にエルフの言葉でこう……書いてあった。「我等はこれから精霊種すべてを、魔族と見なし攻撃を開始する。民を守りたくばエルフの秘薬を定期的に我等に供給されたし。」と。
「どうするのさ、これ……。」
「どうするもなにも、こんな脅しに屈するわけにはいかないよね。僕らは真っ向から人間と対立することになりそうだよ。」
半ば呆れ気味に鼻から息を吐き出しながらアルマスは言う。そんな彼にアベルはある提案を持ちかけた。
「それなら、ボクと同盟を結ばない?同盟を結べばボクの方からアルマスの方に応援を送れるし……それにっ……。」
「いや、その同盟は結べないよ。残念だけど……ね。」
アベルの話を遮るように手を前に出し、アルマスは同盟の申し入れを断った。
「どうしてさ!?」
「確かにアベルは僕の方に応援を送れるかもしれない。……でも僕の方は自分の国を守るので精一杯だ。だから対等な同盟にはなれないよ。」
「対等じゃなくていい!!ボクは……ボクはもう、魔王と勇者の為に誰かが死ぬのは嫌なんだよ……。」
心の底から絞り出すような声で、アベルはアルマスに自分の本心を打ち明ける。それを聞いたアルマスは、目をつぶり一度考える素振りを見せた後口を開いた。
「…………わかった。じゃあ、こうしよう。今日から七日後……彼の持っているはずの力、平和をもたらす力を僕に示してくれないか?」
「いいよ。ミノルにはボクからお願いしておくから……。その代わり、ミノルの力に納得したら……絶対にボクと同盟を結んでもらうからね?」
「あぁ……約束するよ。」
約束する……そうアルマスの口に言わせたアベルは、にんまりと口角を吊り上げて笑う。
「じゃあ、それで決まりっ!!さっきの言葉この水晶にしっかり録音したからね~?」
アベルは何もない空間から透き通った水晶玉を取り出すと、それに魔力を流し込んだ……すると、さっきのやり取りの一部始終が全て流れた。
「……もしかして、僕のこと嵌めた?」
「あはっ、嵌めたなんて~……そんなぁ~ねぇ人聞きが悪いよ?ただ、ボクはさっきのやり取りを録音してただけ。逃げられないようにね~。」
悪魔的な笑みを浮かべるアベル。そんな彼女を見てアルマスはすっかり嵌められていたことに気が付いた。
「んふふ~、それじゃあ七日後……今度はボクがミノルを連れてくるよ。じゃ、まったね~!!」
「あ、アベル……。」
逃げるようにアベルは空間を裂き、その中に飛び込んでいった。アルマスは彼女を呼び止めようとしたが、時既に遅かった。既に裂けた空間はピッタリと閉じ、彼女の気配は微塵も無かったのだ。
「はぁ~~~……昔っから変わらないなぁ。」
ポリポリと頬を人差し指で掻きながらポツリとアルマスは呟く。そしてミノル達が向かった方角を見据えた。
「七日後……か。楽しみにしておくよ、平和の使徒君。」
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