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第二章 平和の使者
第129話
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ジュンコがミノルの料理を口にしてから数日が経った。今の彼女の身の回りの様子はというと……
「………っ!!これも美味しくないでありんす!!」
ガシャアァァン!!
「あぁっ!!ジュンコ様!?」
ジュンコは一口食べた料理を皿ごと床に投げ捨てた。
あのアベル殿の料理人が作った料理を口にしてからというものの、ずっとこんな毎日が続いている。
「もっと美味しい料理を作れる者はいないでありんすか!?」
「そ、それが……国中に料理人募集の張り紙を出しても、今の料理長を超えられる人材が現れないんです。」
「………っ。」
実はジュンコは帰ってきてから、すぐに料理に自信がある者は名乗り出ること……と国中に報せたのだが。
その報せを聞いて集まった者は誰一人として、今のジュンコの専属料理人にすら敵わない腕だったのだ。
「い、いったいどうすればいいでありんすか……。」
食べるもの全てが美味しくなく感じるように、魔法でもかけられたでありんすか!?
でも、そんな魔法は存在しないでありんす。それにあの時魔力の反応は感じなかったでありんす。いくら酔っていたとはいえ、魔力反応に敏感なあちきがそれを見逃すはずないでありんす!!
ジュンコの尻尾は魔力のセンサーのような役割を果たしている。ゆえに少しでも魔力を使おうものならば、敏感に感じ取れるのだ。
しかし、現実は非情なことに……事実食べるもの全てを体が受け付けなくなっている。
ここ数日間は、水と少量の果物しか食べていない。当然栄養失調で、体は徐々に痩せ細り始めている。
「ジュンコ様、少しでも食べないと……御体が」
ジュンコのことを心配した召し使いの一人がそう言った。
「っ!!そんなことはいちいち言わなくても、あちきが一番分かってるでありんす!!」
でも……でも!!体が受け付けないでありんすよ!!
食べた瞬間に猛烈な不快感が沸き上がり、舌が味わうことを拒絶する。今までに味わったことがない感覚。
今までは普通に美味しいと思えていた物なのに……肉料理は血生臭さが際立ち、魚料理に至っては生臭くて……とてもじゃないが食べれたものじゃない。
あちきが今まで口にしていた料理は腐っていたでありんすか!?
そんなはずはないでありんす……きっと、きっと本当は美味しい物なはずでありんす。
そして確かめるように別の料理に箸を伸ばし、それを口に運んだ瞬間
「うっ……おぇぇぇっ!!」
口にした瞬間に何も入っていないはずの腹の奥から、嘔吐感が競り上がってきた。
「じゅ、ジュンコ様!!」
「うぅ……。も、もぅ料理はいらないでありんす。生の果物と水だけ持ってくるでありんす。」
「……かしこまりました。」
グロッキーなジュンコを残して、部屋から召し使いが立ち去っていく。
「くぅ……このままじゃ、いつか死んじゃうでありんす。……また、何か理由をこぎつけてアベル殿と食事会を……。」
頭を捻っていると、コツコツ……と窓をつつくような音が聞こえた。
「ん?なんでありんすか……。」
窓の方へふらふらとした足取りで向かうと、そこには手紙を咥えた一羽の鳥がいた。
「っ!!まさか!!」
窓を開けて鳥から手紙を受け取り、中身を読んでみるとそこには……
『親愛なる獣人族女王ジュンコ様へ……近々魔王城にて、同盟国のエルフを招いた大規模な食事会を開催いたします。その際はもちろん、専属の料理人であるミノルが料理を作らせて頂きます。よろしければ……親睦を深めるため、ジュンコ様もいらっしゃいませんか?いらっしゃるのであれば、こちらの手紙に署名していただければ、執事のシグルドがお迎えにあがります。』
「っ!!」
またとない機会があっちから来た!!と喜びにうち震えながら、ジュンコはすぐにその手紙に自分の名を書き、再び鳥に咥えさせた。
そしてその鳥が飛び立っていくのを、見送ってからジュンコはぐっ……と手を握りしめた。
「や、やったでありんす!!」
ようやく……ようやくこの生活から解放されるでありんす!!
喜びにうち震えていたジュンコだったが……そこでまた、ある問題に気が付く。
「はっ!?……で、でもこの食事会が終わった後は……ま、またこの生活に逆戻りでありんすか!?」
そ、それは嫌でありんす!!な、なんとか……なんとかなる方法を考えないと……。
おろおろとしながら、必死に頭を捻っていると……以前アベルが同盟を結びたいと言っていたことを思い出した。
「そ、そうでありんす!!同盟を結ぶ代わりに……あのミノルという料理人を、あちきに仕えさせれば解決でありんす!!」
人間との交流を断ち切り、魔族と同盟を結ぶのは経済的に得策ではないでありんすが……。
この地獄のような生活から抜け出して、極楽の生活を送ることができるなら……背に腹は代えられないでありんす!!
そうと決まれば、人間から得られる利益を埋め合わせる方法を食事会の日までに考えるでありんす!!
そしてジュンコは獣人族の重役達を集め、今後どうやって利益の穴を埋めるかをひたすらに話し合ったとか……。
「………っ!!これも美味しくないでありんす!!」
ガシャアァァン!!
「あぁっ!!ジュンコ様!?」
ジュンコは一口食べた料理を皿ごと床に投げ捨てた。
あのアベル殿の料理人が作った料理を口にしてからというものの、ずっとこんな毎日が続いている。
「もっと美味しい料理を作れる者はいないでありんすか!?」
「そ、それが……国中に料理人募集の張り紙を出しても、今の料理長を超えられる人材が現れないんです。」
「………っ。」
実はジュンコは帰ってきてから、すぐに料理に自信がある者は名乗り出ること……と国中に報せたのだが。
その報せを聞いて集まった者は誰一人として、今のジュンコの専属料理人にすら敵わない腕だったのだ。
「い、いったいどうすればいいでありんすか……。」
食べるもの全てが美味しくなく感じるように、魔法でもかけられたでありんすか!?
でも、そんな魔法は存在しないでありんす。それにあの時魔力の反応は感じなかったでありんす。いくら酔っていたとはいえ、魔力反応に敏感なあちきがそれを見逃すはずないでありんす!!
ジュンコの尻尾は魔力のセンサーのような役割を果たしている。ゆえに少しでも魔力を使おうものならば、敏感に感じ取れるのだ。
しかし、現実は非情なことに……事実食べるもの全てを体が受け付けなくなっている。
ここ数日間は、水と少量の果物しか食べていない。当然栄養失調で、体は徐々に痩せ細り始めている。
「ジュンコ様、少しでも食べないと……御体が」
ジュンコのことを心配した召し使いの一人がそう言った。
「っ!!そんなことはいちいち言わなくても、あちきが一番分かってるでありんす!!」
でも……でも!!体が受け付けないでありんすよ!!
食べた瞬間に猛烈な不快感が沸き上がり、舌が味わうことを拒絶する。今までに味わったことがない感覚。
今までは普通に美味しいと思えていた物なのに……肉料理は血生臭さが際立ち、魚料理に至っては生臭くて……とてもじゃないが食べれたものじゃない。
あちきが今まで口にしていた料理は腐っていたでありんすか!?
そんなはずはないでありんす……きっと、きっと本当は美味しい物なはずでありんす。
そして確かめるように別の料理に箸を伸ばし、それを口に運んだ瞬間
「うっ……おぇぇぇっ!!」
口にした瞬間に何も入っていないはずの腹の奥から、嘔吐感が競り上がってきた。
「じゅ、ジュンコ様!!」
「うぅ……。も、もぅ料理はいらないでありんす。生の果物と水だけ持ってくるでありんす。」
「……かしこまりました。」
グロッキーなジュンコを残して、部屋から召し使いが立ち去っていく。
「くぅ……このままじゃ、いつか死んじゃうでありんす。……また、何か理由をこぎつけてアベル殿と食事会を……。」
頭を捻っていると、コツコツ……と窓をつつくような音が聞こえた。
「ん?なんでありんすか……。」
窓の方へふらふらとした足取りで向かうと、そこには手紙を咥えた一羽の鳥がいた。
「っ!!まさか!!」
窓を開けて鳥から手紙を受け取り、中身を読んでみるとそこには……
『親愛なる獣人族女王ジュンコ様へ……近々魔王城にて、同盟国のエルフを招いた大規模な食事会を開催いたします。その際はもちろん、専属の料理人であるミノルが料理を作らせて頂きます。よろしければ……親睦を深めるため、ジュンコ様もいらっしゃいませんか?いらっしゃるのであれば、こちらの手紙に署名していただければ、執事のシグルドがお迎えにあがります。』
「っ!!」
またとない機会があっちから来た!!と喜びにうち震えながら、ジュンコはすぐにその手紙に自分の名を書き、再び鳥に咥えさせた。
そしてその鳥が飛び立っていくのを、見送ってからジュンコはぐっ……と手を握りしめた。
「や、やったでありんす!!」
ようやく……ようやくこの生活から解放されるでありんす!!
喜びにうち震えていたジュンコだったが……そこでまた、ある問題に気が付く。
「はっ!?……で、でもこの食事会が終わった後は……ま、またこの生活に逆戻りでありんすか!?」
そ、それは嫌でありんす!!な、なんとか……なんとかなる方法を考えないと……。
おろおろとしながら、必死に頭を捻っていると……以前アベルが同盟を結びたいと言っていたことを思い出した。
「そ、そうでありんす!!同盟を結ぶ代わりに……あのミノルという料理人を、あちきに仕えさせれば解決でありんす!!」
人間との交流を断ち切り、魔族と同盟を結ぶのは経済的に得策ではないでありんすが……。
この地獄のような生活から抜け出して、極楽の生活を送ることができるなら……背に腹は代えられないでありんす!!
そうと決まれば、人間から得られる利益を埋め合わせる方法を食事会の日までに考えるでありんす!!
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