アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第二章 平和の使者

第140話

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 カミル達に料理を作ったり、買い出しに行ったりとしている間にあっという間にお昼時になってしまった。
 私は再びお粥を作って、勇者が寝ている部屋へと向かった。

 そして部屋の中に入り、彼女が寝ているベッドの隣の椅子に腰掛けた時だった。
 彼女と、目があった……。

「目が覚めたか。」

「ここ……は?」

 か細い声で彼女は私に問いかけてくる。

「ここは魔族の国だ。」

「魔族の……く、国!?ど、どう……して?」

 ここが魔族の国であるという事を聞いて、彼女はとても困惑している。あの時の事を覚えていないのだろうか?

「人間の国で囚われてた君を、私と魔王が協力して助け出して連れてきたんだ。」

「貴方と……魔王が……。私を…………。」

「にわかには信じられないかもしれないがな。これが事実だ。……余計なことをしてしまったか?」

「あ、いや……その、そうじゃなくて……ご、ごめんなさい。感謝の言葉を先に述べるべき……でした。……助けてくれて感謝します。」

 感謝の言葉が聞けたってことは、彼女自身あそこから開放される事を望んでいたってことだ。
 
「まぁ、詳しいことは後でゆっくり聞かせてくれ。今はそれよりも、体を回復させることの方が優先だ。ごはん……一人で食べれそうか?」

「ご、ごめんなさい。体が動かなくて……一人じゃちょっと……。」

「そうか、わかった。食べさせてやるから口を開けてくれ。」

 すると、彼女は少し顔を赤らめながら少し口を開けた。私はそこに少し冷ましたお粥を流し込んだ。

「ん……温かくて……美味しい。」

 意識が戻ったなら……そろそろ段階的に普通の食事に戻していっても良さそうだな。
 そしてお粥を全て食べ終えると、彼女は満足したようにほっ……と一息ついた。

「とっても、美味しかったです。優しい味で……心がほっとしました。」

「なら良かった。」

「もしかして……私の意識がない間、ずっと貴方がこうやって……介抱してくださったんですか?」

「まぁな。といっても……今日でまだ二日目だ。さて、それじゃあまた夜にごはんを食べさせに来るよ。それまでゆっくり休んでいてくれ。」

 空になった食器を持って立ち去ろうとすると……。

「あ、ま……待って!!もう少し……ここに居てくれませんか?そ、その……まだ貴方のお名前も聞いてないし……。」

 椅子から立ち上がった私を、必死に彼女は呼び止める。

 まぁ、別に……これといってやらないといけないこともないから、もう少しの間ここにいてあげるか。

 彼女の想いを汲み取り、私は再び椅子に腰掛けた。

「あ……ありがとうございます。そ、それで貴方のお名前をお聞きしたいんですけど……。」

「ミノルだ。この城で料理人として雇われてる。」

 私の名前を聞いてきた彼女に、私は簡単な自己紹介をする。

 すると、私の名前を聞いた彼女は少し嬉しそうな表情を浮かべながら、今度は自分の自己紹介を始めた。

「ミノルさん……。あっ、わっ、私の名前はノアって言います。勇者です……はい。」

ってのは、シルヴェスターに自分の力を奪われたから……か?」

「そこまで知ってるんですね……じゃあのことも?」

 ノアが言うというのは、恐らく人工勇者のことだろう。

「あぁ、君を助けるときに見たよ。シルヴェスターが引き連れてた。」

「やっぱり……シルヴェスターは仮に魔王がエルフと獣人とで同盟を結んだとしても対抗できるように、彼女達を造ったんです。そして、私の……勇者の核を一人一人に埋め込んでいきました。」

 おおかた、人工勇者が造られた理由は予想通り……。後は……

「君が戦うのを拒んだという話を耳にしたんだが……それは本当か?」

「……本当です。」

「どうしてだ?君が戦うならば、シルヴェスターはこのような手段をとらなかったんじゃないか?」

 私は彼女にとって少しツラい質問を投げ掛けた。ツラい質問だとわかっていて投げかけたのには理由がある。

「私は……魔族が悪者だとは思えなかったんです。それどころか、もしかしたら悪者なのは人間の方だったんじゃないかって思っちゃって。
 戦いに行くのはこっちばっかりだし、魔族は一回も攻めてこない上、戦場に赴いた人は皆軽い怪我だけ負ってくるだけで死人もでていないから……。」

「……なるほどな。」

「それに……もし私が戦場に出ていたとしてもシルヴェスターは……彼は人工勇者を作ったと思います。彼はそういう人間ですから。」

「そうか……ツラい質問をしてすまなかった。どうしても、君の本心が聞きたくてな。」

 ツラい質問を投げかけた事を謝る。だが、これでノアの意思の確認と、シルヴェスターという人間がいったいどういう人間なのか把握することができた。
 
「大丈夫です。ツラいのはもう慣れっこですから。」

 彼女は苦笑いを浮かべる。勇者なのにツラい思いに慣れているとはな……。残酷な運命もあったものだ。

 
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