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番外編
青春・安藤(アレクシスさま)
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俺、安藤耕太。男盛りマシマシの29才、恋人募集中。
未だに9才にさかのぼったまま、戻ってこれない。
冷司の両親から訪問を受けた、あの日。
話し合いの結果――コロの精神的不安を考えて、やっぱりうちで暮らし続けることに決まった。そのかわり、冷司の訪問も再開。
さらに、専属獣医、ドッグフードソムリエ、パーソナルトレーナー、美容師、そしてマッサージ師までフル装備。
冷司の食指が他に向いて迷惑をかけないよう、コロにはVIP待遇で長生きしてもらう計画らしい。
そんな特別扱いに、コロもまんざらでもなさそうだった。
そして俺は――
弟たちまで英才教育してもらえるし、ここは恩返しに一肌脱いで、冷司をまともにしてやろうと決めた。
「お前はさ、いつもじーっと見てるだけだからコロも怖がんだよ。撫でてやれよ」
頬をバラ色に染める冷司。……うん、黙ってれば天使だ。
「……お触りタイム、解禁」
ん?なんか違う?
コロを見ながらはぁはぁ息荒くなる冷司に、尻尾を丸めてぷるぷる震えるコロ。
「ま、まずはっ!」
思わず声を上げ、俺は慌ててコロに手を出した。
「コロ、お手!」
「ワンッ!」
さっとお手をするコロ。
それを見た冷司も真似して、コロに手を差し出した。
「コロにゃん、どうかこの手をとって、わたちと一生を――」
ガブッ!!
コロがそのまま白い腕に噛みついた。
「ひっ!!! コロ!!!」
やめろ、うちのぶっといスポンサーの御曹司を噛むんじゃねぇ!
飼い主の責任ってことで父ちゃんと母ちゃんは牢屋にぶち込まれて、俺たち兄弟は孤児院に放り込まれて――またまた一家離散の危機!?
見れば、雪のように白い肌に赤い噛み跡がくっきり。
駆け付けた弟たちと母ちゃんまで真っ青になって固まってる。
次の瞬間――
「コロにゃんの……キスマーク」
うっとりと見つめる冷司。
……うん、ただの変態バカで良かった。
それからも冷司が手を出すたびに、コロは容赦なく噛みつき撃退。
……けれど冷司は、毎回うっとり恍惚の笑みを浮かべてたけどな!
そしてコロは15年の犬生を全うした。
それは俺たちが24の時――冷司が医大を卒業し、医師免許を取った直後だった。
彼は外科に進み、臨床研修と並行してオンラインでMBAの勉強まで抱え込み、ただコロのことを考えないように、ひたすら時間を埋めているように見えた。
やがて表情を失い、誰にも――自分自身にさえ心を閉ざしてしまった冷司を、俺はずっと心配していた。
こうして彼の性癖は影をひそめ、ただ外科医として名を上げていった。
……が。
コロを亡くして早2年。
冷司の、あの悪い予感しかしないうっとり笑いが戻ってきた。
……やっと感情が戻って嬉しい反面、またあのヤバいスイッチが入るのかと思うと、正直こわい。
「レオぴょんの――」
やれ、野生味あふれるきりりとした瞳に射抜かれたいだの、
接客業仕込みで罪なほど上がった口角が色っぽすぎるだの、
ふとした瞬間にのぞく真っ白な歯に見とれるだの、
つやつやの毛並みに顔を埋めたいだの、
極めつけは、ぴんと立った耳に鼻を突っ込んで、すんすん嗅ぎたいだの……。
いや毛並みって動物だろ? 接客業って何?
混乱を招くのろけを延々10時間超。魂が半分抜けかけたころ、やっと理解した。
――次の食指は猫カフェの猫(♂)。
……良かった。接客のプロなら耐性あるだろ。
それからも冷司は多忙を極める中、俺を引き連れ毎日猫カフェへ。
26才になってもなお、じーーーーっと震えながらレオぴょんを見つめ続ける。
ビタン! ビタン!
尻尾で床を叩き続けるレオぴょん。
それでもプロだけあって、ギリギリ耐えて――
ビタンビタンビタンビタンビタンビタンビタン…………………………ビタン!!!
――――レオぴょん、ついに限界突破。
ごめん、レオぴょん。
そして――
冷司が「お触りタイム」と称して手を差し出した瞬間。
「ぶぎやああああーーーーっ!!!」
猫から聞いたことのない悲鳴。店は大混乱、猫も客も大パニック。
三白眼の小柄な男が猫まみれになりながらケタケタ笑う。
「けけ……舎弟っこにすっかど拒否られでらじゃ」
……猫語でディスられる始末。
そして猫が発狂するからと、しっかり出禁。
だが冷司の執着は止まらず。
追い出された直後、目の前のクリニックビルを見上げ、黒く笑う冷司。
その後――親父さんを会長に送り込み、自分は理事長に就任。堂上インターナショナルメディカルグループを立ち上げ、病院を次々と吸収し、ついには例の猫カフェの前のクリニックまで手中に収めた。
秘書課が急展開に振り回されて社畜と化す一方で、冷司はそのクリニックに経営室を設置。
そこから毎日、最高級の望遠レンズでレオぴょんを覗く日々。
「はぁはぁ……肉球……肉球……」
……望遠レンズの設計者泣いてる。
気づけば俺たち29。
冷司は天才外科医にして理事長、経営者。
猫(♂)への執着が、彼をここまで押し上げた。
俺、安藤耕太。高学歴、高収入、高身長。
巷じゃ超高スペックだろう俺。
……でも、9才で初恋を天使にずたずたにされてから20年。
冷司の偏愛につき合わされ、出会いゼロのまま今に至る。
――俺の青春、どこ行った?
未だに9才にさかのぼったまま、戻ってこれない。
冷司の両親から訪問を受けた、あの日。
話し合いの結果――コロの精神的不安を考えて、やっぱりうちで暮らし続けることに決まった。そのかわり、冷司の訪問も再開。
さらに、専属獣医、ドッグフードソムリエ、パーソナルトレーナー、美容師、そしてマッサージ師までフル装備。
冷司の食指が他に向いて迷惑をかけないよう、コロにはVIP待遇で長生きしてもらう計画らしい。
そんな特別扱いに、コロもまんざらでもなさそうだった。
そして俺は――
弟たちまで英才教育してもらえるし、ここは恩返しに一肌脱いで、冷司をまともにしてやろうと決めた。
「お前はさ、いつもじーっと見てるだけだからコロも怖がんだよ。撫でてやれよ」
頬をバラ色に染める冷司。……うん、黙ってれば天使だ。
「……お触りタイム、解禁」
ん?なんか違う?
コロを見ながらはぁはぁ息荒くなる冷司に、尻尾を丸めてぷるぷる震えるコロ。
「ま、まずはっ!」
思わず声を上げ、俺は慌ててコロに手を出した。
「コロ、お手!」
「ワンッ!」
さっとお手をするコロ。
それを見た冷司も真似して、コロに手を差し出した。
「コロにゃん、どうかこの手をとって、わたちと一生を――」
ガブッ!!
コロがそのまま白い腕に噛みついた。
「ひっ!!! コロ!!!」
やめろ、うちのぶっといスポンサーの御曹司を噛むんじゃねぇ!
飼い主の責任ってことで父ちゃんと母ちゃんは牢屋にぶち込まれて、俺たち兄弟は孤児院に放り込まれて――またまた一家離散の危機!?
見れば、雪のように白い肌に赤い噛み跡がくっきり。
駆け付けた弟たちと母ちゃんまで真っ青になって固まってる。
次の瞬間――
「コロにゃんの……キスマーク」
うっとりと見つめる冷司。
……うん、ただの変態バカで良かった。
それからも冷司が手を出すたびに、コロは容赦なく噛みつき撃退。
……けれど冷司は、毎回うっとり恍惚の笑みを浮かべてたけどな!
そしてコロは15年の犬生を全うした。
それは俺たちが24の時――冷司が医大を卒業し、医師免許を取った直後だった。
彼は外科に進み、臨床研修と並行してオンラインでMBAの勉強まで抱え込み、ただコロのことを考えないように、ひたすら時間を埋めているように見えた。
やがて表情を失い、誰にも――自分自身にさえ心を閉ざしてしまった冷司を、俺はずっと心配していた。
こうして彼の性癖は影をひそめ、ただ外科医として名を上げていった。
……が。
コロを亡くして早2年。
冷司の、あの悪い予感しかしないうっとり笑いが戻ってきた。
……やっと感情が戻って嬉しい反面、またあのヤバいスイッチが入るのかと思うと、正直こわい。
「レオぴょんの――」
やれ、野生味あふれるきりりとした瞳に射抜かれたいだの、
接客業仕込みで罪なほど上がった口角が色っぽすぎるだの、
ふとした瞬間にのぞく真っ白な歯に見とれるだの、
つやつやの毛並みに顔を埋めたいだの、
極めつけは、ぴんと立った耳に鼻を突っ込んで、すんすん嗅ぎたいだの……。
いや毛並みって動物だろ? 接客業って何?
混乱を招くのろけを延々10時間超。魂が半分抜けかけたころ、やっと理解した。
――次の食指は猫カフェの猫(♂)。
……良かった。接客のプロなら耐性あるだろ。
それからも冷司は多忙を極める中、俺を引き連れ毎日猫カフェへ。
26才になってもなお、じーーーーっと震えながらレオぴょんを見つめ続ける。
ビタン! ビタン!
尻尾で床を叩き続けるレオぴょん。
それでもプロだけあって、ギリギリ耐えて――
ビタンビタンビタンビタンビタンビタンビタン…………………………ビタン!!!
――――レオぴょん、ついに限界突破。
ごめん、レオぴょん。
そして――
冷司が「お触りタイム」と称して手を差し出した瞬間。
「ぶぎやああああーーーーっ!!!」
猫から聞いたことのない悲鳴。店は大混乱、猫も客も大パニック。
三白眼の小柄な男が猫まみれになりながらケタケタ笑う。
「けけ……舎弟っこにすっかど拒否られでらじゃ」
……猫語でディスられる始末。
そして猫が発狂するからと、しっかり出禁。
だが冷司の執着は止まらず。
追い出された直後、目の前のクリニックビルを見上げ、黒く笑う冷司。
その後――親父さんを会長に送り込み、自分は理事長に就任。堂上インターナショナルメディカルグループを立ち上げ、病院を次々と吸収し、ついには例の猫カフェの前のクリニックまで手中に収めた。
秘書課が急展開に振り回されて社畜と化す一方で、冷司はそのクリニックに経営室を設置。
そこから毎日、最高級の望遠レンズでレオぴょんを覗く日々。
「はぁはぁ……肉球……肉球……」
……望遠レンズの設計者泣いてる。
気づけば俺たち29。
冷司は天才外科医にして理事長、経営者。
猫(♂)への執着が、彼をここまで押し上げた。
俺、安藤耕太。高学歴、高収入、高身長。
巷じゃ超高スペックだろう俺。
……でも、9才で初恋を天使にずたずたにされてから20年。
冷司の偏愛につき合わされ、出会いゼロのまま今に至る。
――俺の青春、どこ行った?
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