37 / 66
人民革命
プリブレジヌイの戦い2
しおりを挟む
大陸歴1660年11月25日・ブラミア帝国・プリブレジヌイ郊外
首都アリーグラードで武装蜂起したナタンソーン達は “人民革命軍”と名乗り、皇帝を追跡してプリブレジヌイ近郊まで迫っている。しかし、ナタンソーンは先ほどの手痛い敗北に頭を悩ませていた。
革命軍のリーダーたちが集まるテントの中で会議が行われていた。
革命軍の数は多く、元兵士もそれなりの数は居るのだが、大軍を率いたことがあるものが全くいない。指揮系統がほとんど無く全軍に命令が伝わりにくい状況で、先ほどの戦いの様子では、今後も勝ち目は全くないとしか思えない。
また、食料の事も深く考えていなかった。すでに食料が不足気味だったので、首都へ食料補給の要請を出した。さらには、近くの小さな村などから強制的に食料を徴取することを検討している。
「このままでは、皇帝を追い詰めるどころか、こちらが危ない」。
ナタンソーンは考えている危惧を口にした。
他の革命軍のリーダーたちからも、あまりいい案が出なかったが、会議の終盤、インシェネツキーというリーダーの一人がある提案をした。先日、革命軍が首都を掌握した時、城の牢から捕えられていた政治犯を解放したが、彼は、その時の一人だった。
インシェネツキーが発言をする。
「牢に軍の上級士官が捕えられていました。その人物に助けを求めればどうでしょうか?」
「その者は、なぜ捕えられているのだ?」
「二年前に命令違反をして捕えられたと聞いています。それで、その人物に協力を求めれば?」
「捕えられているといっても、帝国軍の士官だろう? 我々に協力するのか?」
「解放する代わりに、我々に協力させ、もし、帝国軍を撃破できたなら、今後も指揮官として厚遇すると言えばどうでしょうか?」インシェネツキーは話を続けた、「それに帝国軍の士官でも、こちらに着くことで厚遇されるということが伝われば、我々の味方に付く者も増えるかと思われます」。
ナタンソーンは少しその内容を反芻してみた。確かに若干ではあるが、既に士官クラスや貴族も革命軍の側についている。
「確かに、帝国軍の上級士官がこちらに付けば、我々の戦力の強化につながるし、逆に言えば帝国軍の力を削ぐことにもつながるだろう」。
確かに、このままの状況では革命軍が敗退してしまうだろう、軍の統制の強化は火急の要件だ。ここは藁をもつかむ思いでナタンソーンは決断した。
「わかった、それで、その者に話をしてくれ。もし、承諾するのであれば、ここまで連れて来て指揮を執ってもらう」。
引き続き打ち合わせの途中、偵察に出していた者がテントにやって来た。
「国境付近で駐屯していた帝国軍がこちらに付くということで、その何人かがこちらを訪れてきました」。
ちょうど良いタイミングだ。今、戦闘に慣れている者が加わるのは非常に助かる。
「わかった、ここへ呼んでくれ」。
しばらく待つと帝国軍の制服に身を包んだものが三名、テントに案内されて入って来た。
ナタンソーンと革命軍のリーダーたちは立ち上がり挨拶する。
「私はここのリーダーのヴィクトル・ナタンソーンだ」。
「我々は国境沿いに展開していた第四旅団に所属していた者です。私は現在、指揮を執っているスラビンスキーです」。そういうと敬礼をした。「我々の部隊もほとんどが首都北部の出身者です。あなた方と合流してさせてください」。
「兵士の数は?」
「二千五百ほどです」。
「いいだろう。歓迎する。君にはそのまま部隊を指揮をお願いしたい」。ナタンソーンは他のリーダーたちに確認をする。「いいかね?」
リーダーたちは口々に「意義なし」と返事をした。
「では、座り給え。現状を説明したい」。
ナタンソーンは、スラビンスキーたちが座ったのを見て説明を始める。
「こちらの戦力は二万人程度。今、帝国軍はプリブレジヌイにいる。首都から逃げ込んだ重装騎士団と皇帝親衛隊が数百いるようだ」。
「プリブレジヌイはペシェハノフ率いる第六旅団ですね。首都から逃げて来た重装騎士団はおそらく、総司令官のルツコイでしょう。第六旅団は六千人ですから、全部合わせて多くて六千五百人といったところでしょう」。
「こちらの三分の一か」。
「しかし、総司令官のルツコイという人物は戦上手です。油断は禁物です」。
「うむ。先ほども重装騎士団と戦いになったが、こちらは全く手が出なかった。軍を指揮した経験のあるものがいないので、うまく戦いができない」。
「君は二万の軍を率いることができるか?」
「私は下級士官ですので、一緒に来た二千五百でもなんとか精一杯です」。
「そうか」。ナタンソーンは残念そうに答える。「首都で牢に捕らえられていた指揮官を説得して指揮をさせようと思っている」。
「それはいい考えですね」。
「そういえば食料はあるかね?」
「我々の二千五百人の分は当面あります」。
「余分は無いか?」
「まさか二万人の分ですか? それは、さすがにありません。我々は兵站などの補給はプリブレジヌイから得ていました。ですので、プリブレジヌイを落とさない限り、我々の食料も早晩尽きてしまうでしょう」。
食料の件は致し方ない。しかし、首都に補給の依頼を掛けたので、おそらく何とかなるだろう。
ナタンソーン達は指揮官の説得の結果を待つまで数日間待機することになった。食料は節約する。
そして、インシェネツキーはすぐに首都に向けて出発し、牢にいる指揮官の説得に向かう。
首都アリーグラードで武装蜂起したナタンソーン達は “人民革命軍”と名乗り、皇帝を追跡してプリブレジヌイ近郊まで迫っている。しかし、ナタンソーンは先ほどの手痛い敗北に頭を悩ませていた。
革命軍のリーダーたちが集まるテントの中で会議が行われていた。
革命軍の数は多く、元兵士もそれなりの数は居るのだが、大軍を率いたことがあるものが全くいない。指揮系統がほとんど無く全軍に命令が伝わりにくい状況で、先ほどの戦いの様子では、今後も勝ち目は全くないとしか思えない。
また、食料の事も深く考えていなかった。すでに食料が不足気味だったので、首都へ食料補給の要請を出した。さらには、近くの小さな村などから強制的に食料を徴取することを検討している。
「このままでは、皇帝を追い詰めるどころか、こちらが危ない」。
ナタンソーンは考えている危惧を口にした。
他の革命軍のリーダーたちからも、あまりいい案が出なかったが、会議の終盤、インシェネツキーというリーダーの一人がある提案をした。先日、革命軍が首都を掌握した時、城の牢から捕えられていた政治犯を解放したが、彼は、その時の一人だった。
インシェネツキーが発言をする。
「牢に軍の上級士官が捕えられていました。その人物に助けを求めればどうでしょうか?」
「その者は、なぜ捕えられているのだ?」
「二年前に命令違反をして捕えられたと聞いています。それで、その人物に協力を求めれば?」
「捕えられているといっても、帝国軍の士官だろう? 我々に協力するのか?」
「解放する代わりに、我々に協力させ、もし、帝国軍を撃破できたなら、今後も指揮官として厚遇すると言えばどうでしょうか?」インシェネツキーは話を続けた、「それに帝国軍の士官でも、こちらに着くことで厚遇されるということが伝われば、我々の味方に付く者も増えるかと思われます」。
ナタンソーンは少しその内容を反芻してみた。確かに若干ではあるが、既に士官クラスや貴族も革命軍の側についている。
「確かに、帝国軍の上級士官がこちらに付けば、我々の戦力の強化につながるし、逆に言えば帝国軍の力を削ぐことにもつながるだろう」。
確かに、このままの状況では革命軍が敗退してしまうだろう、軍の統制の強化は火急の要件だ。ここは藁をもつかむ思いでナタンソーンは決断した。
「わかった、それで、その者に話をしてくれ。もし、承諾するのであれば、ここまで連れて来て指揮を執ってもらう」。
引き続き打ち合わせの途中、偵察に出していた者がテントにやって来た。
「国境付近で駐屯していた帝国軍がこちらに付くということで、その何人かがこちらを訪れてきました」。
ちょうど良いタイミングだ。今、戦闘に慣れている者が加わるのは非常に助かる。
「わかった、ここへ呼んでくれ」。
しばらく待つと帝国軍の制服に身を包んだものが三名、テントに案内されて入って来た。
ナタンソーンと革命軍のリーダーたちは立ち上がり挨拶する。
「私はここのリーダーのヴィクトル・ナタンソーンだ」。
「我々は国境沿いに展開していた第四旅団に所属していた者です。私は現在、指揮を執っているスラビンスキーです」。そういうと敬礼をした。「我々の部隊もほとんどが首都北部の出身者です。あなた方と合流してさせてください」。
「兵士の数は?」
「二千五百ほどです」。
「いいだろう。歓迎する。君にはそのまま部隊を指揮をお願いしたい」。ナタンソーンは他のリーダーたちに確認をする。「いいかね?」
リーダーたちは口々に「意義なし」と返事をした。
「では、座り給え。現状を説明したい」。
ナタンソーンは、スラビンスキーたちが座ったのを見て説明を始める。
「こちらの戦力は二万人程度。今、帝国軍はプリブレジヌイにいる。首都から逃げ込んだ重装騎士団と皇帝親衛隊が数百いるようだ」。
「プリブレジヌイはペシェハノフ率いる第六旅団ですね。首都から逃げて来た重装騎士団はおそらく、総司令官のルツコイでしょう。第六旅団は六千人ですから、全部合わせて多くて六千五百人といったところでしょう」。
「こちらの三分の一か」。
「しかし、総司令官のルツコイという人物は戦上手です。油断は禁物です」。
「うむ。先ほども重装騎士団と戦いになったが、こちらは全く手が出なかった。軍を指揮した経験のあるものがいないので、うまく戦いができない」。
「君は二万の軍を率いることができるか?」
「私は下級士官ですので、一緒に来た二千五百でもなんとか精一杯です」。
「そうか」。ナタンソーンは残念そうに答える。「首都で牢に捕らえられていた指揮官を説得して指揮をさせようと思っている」。
「それはいい考えですね」。
「そういえば食料はあるかね?」
「我々の二千五百人の分は当面あります」。
「余分は無いか?」
「まさか二万人の分ですか? それは、さすがにありません。我々は兵站などの補給はプリブレジヌイから得ていました。ですので、プリブレジヌイを落とさない限り、我々の食料も早晩尽きてしまうでしょう」。
食料の件は致し方ない。しかし、首都に補給の依頼を掛けたので、おそらく何とかなるだろう。
ナタンソーン達は指揮官の説得の結果を待つまで数日間待機することになった。食料は節約する。
そして、インシェネツキーはすぐに首都に向けて出発し、牢にいる指揮官の説得に向かう。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
絶対に見つかってはいけない! 〜異世界は怖い場所でした〜
白雪なこ
ファンタジー
気がつけば、異世界転生を果たしていたエリザの人生は、その時から恐怖、破滅と隣り合わせなものとなった。
一瞬たりとも気を抜いてはいけない。気付かれてはいけない、知られてはいけない。なのに、異世界転生者の本能なのか、全てを忘れたように純異世界人として生きることもできなくて。
そんなエリザの隠密転生者ライフをコソコソっとお届けしようと思います。
*外部サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる