6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

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2章

89(マルクside)

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マルクside

あの日から何度か繰り返した質問に同じ答えを返せば、ジル様はありがとう、と暗い表情で答える。それも決まっていつもの事だった。
可哀想に、と何度思ったか分からない言葉がまた頭に浮かぶ。誘拐された先で明るく笑ってる方が異常だろうが、今のこの子が笑えないのは十中八九、誘拐された事への恐怖からではない。
その小さな手に持った一枚の紙がその子の表情を暗くしていた。


俺とトリスタンは元々は王宮騎士の一員だった。それぞれ理由は違ったものの、騎士団内での低俗な虐めの末に王宮を追い出されたという点では、同じ境遇と言えるだろう。
王宮騎士なんていう待遇の良い仕事を辞めさせられて、さてどうしようかと途方に暮れている時に今の主に拾われた。
主は仕事熱心で時には冷酷な一面もあるが身内には優しい方で、待遇も良いし今では信用できる人だと認識している。

そんな主が、主から見て甥にあたる第二王子殿下を攫って来てほしい、と言い始めた時はなんの冗談かとは思ったが、指示した理由を一から全部説明してくれた。命懸けになるのだから当然だ、と言って。
その説明を聞いて、身内想いの主がその決断をした理由を知った。全ては第二王子殿下と主の弟にあたる今は亡き王妃様のため。主の話の真偽など俺には確かめようもない。
だが主はその話を信じていて既に準備を進めていた。主がルベウス家当主になったのも、そのためだった。
もしも誘拐が成功した先で王宮騎士が強引な捜査を行った場合に、前当主と大奥様の二人がジル様を連れて遠くの地に逃げ出すために。
主が命を懸けるなら、俺も迷いはなかった。

王宮にいた俺でも第二王子殿下の見た目は知らなかったから、名前と外見の特徴だけを主から事前に聞いた。彼が王宮に運ばれた時には既にルベウス家にいたから、本当に一度も見たことがなかったのだ。
当時はあまりにも姿を見せないから、本当はもう既に死んでいて、なんらかの理由で死んだことを隠しているのでは、とさえ考えていた。結局はこうして病弱なりに無事に生きていたわけなのだが。

命令を受けてすぐ、俺は愚図るトリスタンと共に王宮に忍び込んで、しばらくの間ずっと犯行の機会を伺っていた。幸いなことに王宮の警備体制については熟知していたから大した苦労はしなかった。
忍び込んで隠れながら見たジル様は本当に病弱で、医務室で過ごすかたまに外で車椅子に乗ったまま犬と遊ぶ程度。ほとんどの時間をボーッと過ごしていて、だが犬と世話役の子供達が傍に居る時だけは穏やかな表情をしていた。


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