32 / 101
1章
31
しおりを挟む
「ジルベール様は食べないんですか?」
サロモンが言いながら差し出してくるクッキーを、首を横に振って返す。アベラ様からはみんなで食べてとは言われたが、既に腹は膨れている。彼らが美味しく食べる方がずっと良い。サロモンは少し眉を下げて残念そうにしたものの、すぐに次の菓子を選び始めて、そちらに夢中になっているようだ。
これは美味しい、これは誰が好きそうだ、食べてみて、あの子達にも食べさせたい。
わいわいと賑やかに話しながらサロモン達と共にお菓子を囲むリュカは、最初に見せた遠慮の様子は薄れていて楽しげだ。そういえば、いつだかにリュカ達は三人とも孤児の生まれだと言っていた。“あの子達”とは同じ孤児院で共に育った兄弟のような人達の事だろうか、と会ったこともない誰かの姿を思い浮かべる。
リュカたちは俺がここに来てから、一度もその孤児院に戻っていない。休みは一応あるはずなのに、休みの日にもここに来るのだ。彼らとてまだ10歳ほどで、まだ大人とはとても言えない年齢。疲れたと言うことも、寂しいと実家に想いを馳せる事もあって当然なのに、一言もそんな事を聞いたこともない。もしかしたら三人だけになった時にはあるのかもしれないけれど、少なくとも俺は知らない。
前回までと同様にライアン様の世話係であれば、幼児期までは乳母もアベラ様もついていて、今ほど付きっきりである必要もなかっただろう。こんな場所に縛り付けてしまっている俺に対してなにも言わないのは、仕事だからか、血筋上は王族だからか。果たしてその歳でそこまで割り切れるのだろうか。
__なんて、ここまで良くしてくれている彼らに対してそんなことを考えるのは、失礼極まりないことだとは分かっていながら、それを止めることができない。
そもそもどうして、今回に限って俺に世話係がついたのか。ルルたちは前回までも存在していたのか。身体が弱っているのはなぜか。嫌な視線が少ないのは、陛下やフェリクス様が友好的なのは__
俺が原因でないことを考えたところで詮無いことであるとも、嫌という程に理解しているつもりだ。人生の繰り返しや転生についてなど、二度目の人生で書物を漁って調べ尽くし、どれも徒労に終わったのだから。それでもふとした時にそう考えてしまうのは、終わりの見えぬこの繰り返しに、なにかしらの意味があると思いたいからか。
__はたまた、この繰り返しの終わらせ方を、自然と探しているからか。
自分自身、なにを望んでいるかも分からない。
サロモンが言いながら差し出してくるクッキーを、首を横に振って返す。アベラ様からはみんなで食べてとは言われたが、既に腹は膨れている。彼らが美味しく食べる方がずっと良い。サロモンは少し眉を下げて残念そうにしたものの、すぐに次の菓子を選び始めて、そちらに夢中になっているようだ。
これは美味しい、これは誰が好きそうだ、食べてみて、あの子達にも食べさせたい。
わいわいと賑やかに話しながらサロモン達と共にお菓子を囲むリュカは、最初に見せた遠慮の様子は薄れていて楽しげだ。そういえば、いつだかにリュカ達は三人とも孤児の生まれだと言っていた。“あの子達”とは同じ孤児院で共に育った兄弟のような人達の事だろうか、と会ったこともない誰かの姿を思い浮かべる。
リュカたちは俺がここに来てから、一度もその孤児院に戻っていない。休みは一応あるはずなのに、休みの日にもここに来るのだ。彼らとてまだ10歳ほどで、まだ大人とはとても言えない年齢。疲れたと言うことも、寂しいと実家に想いを馳せる事もあって当然なのに、一言もそんな事を聞いたこともない。もしかしたら三人だけになった時にはあるのかもしれないけれど、少なくとも俺は知らない。
前回までと同様にライアン様の世話係であれば、幼児期までは乳母もアベラ様もついていて、今ほど付きっきりである必要もなかっただろう。こんな場所に縛り付けてしまっている俺に対してなにも言わないのは、仕事だからか、血筋上は王族だからか。果たしてその歳でそこまで割り切れるのだろうか。
__なんて、ここまで良くしてくれている彼らに対してそんなことを考えるのは、失礼極まりないことだとは分かっていながら、それを止めることができない。
そもそもどうして、今回に限って俺に世話係がついたのか。ルルたちは前回までも存在していたのか。身体が弱っているのはなぜか。嫌な視線が少ないのは、陛下やフェリクス様が友好的なのは__
俺が原因でないことを考えたところで詮無いことであるとも、嫌という程に理解しているつもりだ。人生の繰り返しや転生についてなど、二度目の人生で書物を漁って調べ尽くし、どれも徒労に終わったのだから。それでもふとした時にそう考えてしまうのは、終わりの見えぬこの繰り返しに、なにかしらの意味があると思いたいからか。
__はたまた、この繰り返しの終わらせ方を、自然と探しているからか。
自分自身、なにを望んでいるかも分からない。
473
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
不定期更新
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、
誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。
引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、
王子と騎士に目をつけられ、
いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!?
誠実一直線騎士 × 流され系オタク
異世界・身分差・勘違いから始まる
リアル発展型BLコメディ。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる