90 / 240
中央教会編
四章 第三話 戦力増強
しおりを挟む中央教会の戦力は剣帝だけではない。アルベリオン一族やスタンダート一族出身の騎士を中心として中央教会では騎士団が構成されている。その中でも剣帝直々にその実力を認められた八人は「八雲朱傘やぐもしゅがさ」と呼ばれ、騎士団の中でもずば抜けた実力を持っている。その八人には序列がつけられており、序列八位と序列一位の間ではかなりの差があると言われている。
剣帝直々に任命されたということもあり、司聖教よりも位は低いものの発言力としては同等であり、中でも序列一位のものは司聖教も命令することができない立場にある。
「知ってるか、ミルファ? ロンダートの野郎、小国でボコボコにされて帰ってきたらしいぜ。流石のスタンダート一族様だな」
「黙りなさいバルバダ。アイツはスタンダートの恥晒しだ。一緒にするな」
そう話すのは序列八位のバルバダというものと序列六位のミルファというものだった。バルバダはアルベリオン出身であり、ミルファはスタンダート出身なのだ。
「剣帝様は気にしてねえみたいだが、どうも司聖教の奴らが裏でコソコソやっているみたいだぜ」
「私たちは言われたことに従えばいい。ロンダートの奴が恥をかこうが関係ないわ」
「まあそうだな。司聖教の奴らの命令に従うのは癪だが、戦争は好きだぜ。最近暇だったからな」
「物騒なことは言わないでおきなさい。私たちはあくまでも民を守る騎士なのよ」
「分かったよ」
すると慌てた様子で一人の騎士がバルバダたちの元まで近づいてきた。
「バルバダ様、ミルファ様、外部に凶暴化した魔物が多数出現いたしました! 騎士が対応に向かいましたが苦戦しております! キャレル様率いる騎士団が向かいましたが厳しい模様です。お力をお貸しください!」
「ったく、俺より一つ上のくせにそこら辺の魔物に手こずってんじゃねえよ」
「私も行くわ」
(よいよい、実に順調だ)
外へ向かう二人の背には不敵な笑みを浮かべる姿があった。その人物たちは二人が出ていくのを確認するとある場所へと向かっていった。
「ボルさん、俺たちのことを鍛えてくれるなんて本当に感謝するぜ。それで俺たちはここで何をやればいいんだ?」
ボルは傭兵たちを連れて龍の里近くの比較的ランクの高い凶暴な魔物が多くいる場所へときていた。
しかし傭兵たちは全員でおよそ五十人ほどおり、その中にはてだれの者も多くAランクほどの魔物ならば造作ないのだ。
「ジンは王になったけど、その分これから危険に晒されることも多くナル。そしてボクは何よりもジンの命を一番に考エル。だから一つ確認してオキタイ。君たちは、これからどんな敵と戦うことになってもジンのために命を懸ける覚悟はできテル?」
ジンが聞いていれば怒られそうな内容だが、ボルの顔は至って真剣だった。
そんなボルの言葉を聞いて傭兵たちは一斉に跪く。
「当然でございます。我ら傭兵はこの命が尽きる時まで我らが王を守る傭兵として働かせていただきます。全員、もうとっくに死ぬ覚悟などできております」
「······ワカッタ。でもボクが誰も死なせない、そのためにも君たちには死ぬ思いでこれから鍛えてモラウ。
もう一度聞くけど、覚悟はデキテル?」
呑み込まれそうなボルの瞳にバンブルたちはゴクリと息を飲んだが、気合いでそれを押し殺した。
「「ハッ!!」」
その頃、そんなことが起こっていることはつゆ知らずジンは集会所の自室でゆっくりとレイの入れた紅茶を飲んでいた。
「おいしいよ、このアップルティー。ありがとうね、レイ」
「そうか、それはよかった」
「そういえばレイ、最近よく魔物を狩りにいってるみたいだけどどうしたの?」
「······その、今の私ではジンを守るほどの力は備わっていない。それに意思のある武器を持っているがその能力も最大限に活かせていない」
「そんなに無理しなくていいのに。自分のことを一番大切にする、それがルールだよ」
「分かっている。分かっているが、ただそれだけは守れない。私にとって何よりも大切なのはジンなんだ。だから、強くなりたい」
「レイ、だったら私が鍛えてやる」
そう言って現れたのはクレースだった。
「クレース、でもそんなに強くなっても······どこかの国と戦いなんてするわけでもないし」
「······分かった。私からもお願いする」
「まあ備えというものは必要だ。レイが望んでいるからそれくらいはしても構わないだろう。それにトキワもリンギルとエルダンに修行をつけているらしい」
「分かった、でも無理はだめだよ」
こうして各々が戦力の増強に向けて修行を開始していったのだ。
「ジン、りんご。くれ」
「はいどうぞ。ブレンドちょっと大きくなった?」
「うぃ」
最近のブレンドの移動手段はガルの背中の上だ。どうやら自分の一歩があまりにも小さいことに気づいたようでブレンドにとって長距離を移動する時はほとんどの場合声を上げてガルのことを呼ぶ。
そしてその後ガルとブレンドを連れて最近日課となっているパールとの魔法の特訓をすることにした。
「はいパール。そろそろ始めるよ」
「わかった、はじめる」
抱きかかえていたパールを下ろすとゼグトスに作ってもらった海の上の特殊な空間にいった。パールの魔力は間違えると辺り一帯を消しとばしてしまう可能性があるためみんながいない場所でやっているのだ。
「最近、もうちょっとうまくできるようになった」
そう言ってパールは自分の右手に白い光を出した。
「うん、上手くなってるよ。一回百鬼閣で使ったんだっけ?」
「うん、クレースにはじきとばしてもらったら上手くできた」
クシャルドが言うにはパールのこの魔法は女神だけが使うことのできるかなり珍しい魔法のようなのだ。それを刀で弾き返すクレースもすごいが、そんなすごい魔法ができるなんて思わなかった。
今日は初めて教える防御魔法だ。しかしパールはかなり魔力操作が上手くなっているようであっという間に聖級の防御魔法をまでマスターしてしまった。
「ぼくも、できる?」
ブレンドにそう言われてガルは困ったような顔を見せたがブレンドはやる気である。
「やい」
「えっ」
そう言ってブレンドは手を上にあげると右手からボウッと火が出現した。
「ガル!」
急いでガルは風魔法でその火を消した。
「つい、あつい」
「ブレンド、勝手に魔法を使ったらダメだよ。危ないからね」
なんとブレンドは魔法が使えたのだ。どうやらブレンドにも魔法を教える必要がありそう。
「ジンつかれた」
「そうだね、レストラン行こっか」
「うん、いく」
タイミングよくゼグトスが迎えにきてそのままパールを抱っこしてレストランに向かっていった。
辺りは少し暗くなっており、集会所まで戻ってくると何やらバンブルやナリーゼたち傭兵が疲弊しきったような様子で食事を食べた後のテーブルでぐったりとしていた。
「み、みんなどうしたの。大丈夫?」
「は、はいジン様ご心配なくぅ······」
「ちょっと訓練シテタ。みんな頑張ってタヨ」
「そうなんだ。レイはどうしたの?」
「私にコテンパンにされてすっかり疲れたみたいだ。根性だけは認めてやる」
「クレース、お前おかしいだろ。なんでそんな元気なんだ。あんなに私と打ち合いしてたのに······」
どうやらリンギルやエルダンも疲れ切っているようでその場で一人閻魁だけが元気な様子だった。
そしてその日は多くのものがゾンビのようにそのまま眠りについたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる