モブっと異世界転生

月夜の庭

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獣耳イケメン王子達とドキドキ学園ライフ

王子達が動き出す

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「サクラちゃんが、このクラスで一番仲がいい男子生徒の座は譲れないから」


「何それ?僕とサクラちゃんは(アンジェの被害者という名の)仲間なんだよ」


私の前では、マルカブとハーシェルが睨み合っています。

ハーシェルが登校初日に、自己紹介を終えて私に話し掛けると、隣の席のマルカブが割って入ってきました。


それからは2人は競うように、私に話し掛けてくるようになりました。


その上

「よう!サクラちゃんも昼飯か?よかったら一緒に食うか?俺が先輩として奢るぞ」


「お友達の分もね。まだサクラちゃんが生徒会室に来ないのかって会長がソワソワしているから、放課後にでもおいで。美味しいケーキも用意しておくから」


休憩時間でのルイス先輩とセオドア先輩コンビとの遭遇率が高くなっており、ノエルが私とカメリアに会いに来る時はジルベールが一緒に付いてくるので、ゲームでは攻略対象者とされる人達の誰がか必ず近くに居ます。


なぜ?


ケーキに釣られたカメリアに連れられて来た生徒会室では、書類に目を通していた愛染会長に満面の笑みで出迎えられ、いつの間にか会長の膝の上に座らされている。


カメリア曰く、ケーキのお礼らしいです。


なぜ?(2回目)

「盲点だったな。サクラちゃんと仲良くなるには、カメリアちゃんの許可を得るのが近道だったとはな」


愛染会長の膝に抱っこされる私をニコニコしながらルイス先輩が見ている。


「セオドア先輩が入れた紅茶美味しい」


美味しいケーキに紅茶をカメリアがうっとりした表情で堪能している。


こんなに喜ぶなんて珍しいです。


なんの変哲もない、少し大きめスフレに生クリームが添えてあるだけみたいです。


「猫族はチーズや生クリームが好きなのは知っているからね。ふわふわのスフレチーズケーキを用意してみたんだ」


猫族好みのケーキをリサーチして用意した愛染会長。


「紅茶にニットキャップを混ぜてみたんだ。カメリアちゃんの口に合ったんなら良かったです」


そして猫族好みのハーブを混ぜてセオドア先輩が用意してくれた紅茶。


「至福♡」


我が家で1番猫っぽいカメリアは、2人のもてなしに御満悦です。


私に差し出されたのはフルーツタルトでした。


「猫族では珍しいけど、サクラさんが甘酸っぱいフルーツたっぷりのタルトが好きなのは知っているからね」


「ありがとうございます」


桃や洋梨、苺にキウイフルーツにブルベリーが乗った目にも楽しいタルトに手を伸ばすと、愛染会長にお皿をヒョイと奪われ、私の手が宙を掴んだ。


これは”お預け”ってヤツ?


愛染会長の顔を見ると満面の笑み………なんだけど背筋が寒いっていうか、全力で逃げたい。


耳や尻尾の毛が逆立つ。


「ビックリしてるサクラさんも可愛らしい。食べさせてあげよう」


反応に困り無言で首を横に振る。


「遠慮はいらないよ。ほらア~ン?」


一口サイズのタルトが乗ったフォークを差し出され、思わずビクッと肩が震えてしまう。


これは蛇に睨まれた蛙ならぬ、龍に睨まれた子猫。肌がピリピリするけど、不思議と怖くはないです。イケメンか?イケメン効果なのか?!それなら個人的には、セオドア先輩が好みたんだけど。眼鏡とか掛けてくれないかな?ルイス先輩に眼鏡も捨て難いけど。


愛染会長を見詰めると、無言の笑顔が恐いです。


おずおずと口を開けると、すかさず口の中に押し込まれる。


「美味し~ぃ♡」


色々と考えていた事が吹っ飛ぶほど、口の中が幸せで満ち溢れる。


「洋梨が美味しいです」


「…………………餌付け、癖になりそうだ」


「?」


ボソボソと喋った気がしたけど聞き取れなかったので小首を傾げながら見詰めると、またタルトを乗せたフォークを差し出された。


「何でもないよ。まだ沢山あるから、お食べ」


「はい♡」


「会長、狡い」


「ルイスに同感です。羨まし過ぎますね」


モグモグと夢中で食べているけど、不意に生徒会の仕事をしなくて良いのかと疑問に思ったしました。


「何か、お手伝い出来そうな事とかありますか?」


「もしかして生徒会の仕事を手伝ってくれるのかい?」


「はい、働かざる者食うべからずです」


「はははっサクラさんは真面目だね」


「だってケーキ食べに来ただけなら、今日で終わりだけど、お仕事のお手伝いなら、また来ても良いですよね?」


「「「………」」」


あら?愛染会長とルイス先輩とセオドア先輩が固まってますよ??


ルイス先輩に至っては、口が半開きです。


「やっぱり止め「ルイス!セオドア!!2年生の生徒会役員の追加処置を急げ!他に取られる前に!」」


「「はい」」


慌ただしく2人が出ていくと、ニッコリ微笑んだ愛染会長が1枚の紙を差し出した。


「それは生徒会に所属してもいいって思ってくれていると思って良いんだよね?」


「あの?お手伝いだけなら」


「やりたい部活とかは?」


「特には考えていません」


「なら生徒会がオススメだよ。サクラさんなら先生方も喜ぶと思うんだ」


「先生方も?」


「サクラさんなら生徒達からのアンケートの回収も早そうだし。先生も同じ書類にサインするならサクラさんに”サイン下さい”って言われた方が嬉しいと思うよ」


それは連絡係?学園内の生徒会関係限定の郵便屋さんみたいなモノかな?


「不備を訂正してもらったり、サインを貰いに行ったり、書類を運ぶ仕事ですか?それなら大丈夫かも。楽しそうです」


「適任だと思うよ」


「廊下は「走っちゃダメだよ」」


ですよね~。


「なら屋根とか屋上とか、木の上の通行許可が欲しいです♡」


「屋根かい?」


「渡り廊下のう「コラコラコラ!それはダメだよ」」


やっぱりダメか~。


私もカメリアも、こっそり通っているのは秘密にしておきましょう。


猫族は身軽で高い所が好きで、好奇心旺盛なので秘密の抜け道を使うのも大好きなのです。日当たりがいい所で、お昼寝するのも大好きです。


「どさくさに紛れて、渡り廊下の上で昼寝しようとしてるよね?」


「してない」


フルフルと首を横に振るのはカメリアです。


「なぜカメリアさんが反応………まさか2人で?」


「まだ1回しか昼寝してない。あそこは最高」


グッと親指を立てるカメリア。


「すみません。陽当たりが1番よかったので、誘惑に負けてカメリアと一緒に寝ちゃいました。とても気持が良かったです!」


手を合わせながら見上げると、手で目を覆い隠すように顔を上にる会長が固まってしまいました。


「許可申請は無理だから、3人の秘密にしておきましょう」


「会長、話が分かる。会長になら、喜んでサクラを生徒会に貸し出す」


「今度は3人で、お昼寝しましょう!」


「はははっ………はぁ~っ」


後日、約束通り2階の渡り廊下の上で3人で寝転がると、会長も気に入ってくれて私とカメリアが挟んで川の字で お昼寝しました。


カメリアがレジャーシートを用意し、私が太陽光を利用して光魔法で姿を隠します。会長は「なんて力の無駄遣いをするんですか」なんて言いながら、大爆笑していました。


ほのぼの、まったり最高です。
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