モブっと異世界転生

月夜の庭

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獣耳イケメン王子達とドキドキ学園ライフ

生徒会が賑やかになりました

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「サクラの独り占めは見逃せぬ」


「そうです。ムサイ野郎ばかりの中に、こんなに可愛らしいサクラちゃんを投入するなんて許せません」


「僕は元々ジルベールに誘われていたし、学年が違うから、少しでもサクラとの時間が欲しいからね」


私の生徒会への入会が知れ渡ると、翡翠とソフィアが殴り込み………じゃなくて一緒に入会してくれて、3人で向かった生徒会室にはノエルがいました。


「舞冬とディエリも後から参るぇ」


エーナーとカメリアは、お昼寝大好きだから、面倒臭いとスルーするかと思いきや、既に2人が生徒会室のソファの上で寝ていました。


「ははははっこれは次期会長はサクラさんで決定かな。優秀な女子生徒が、これだけ揃うと圧巻だね」


「でも実際は助かりますよ。何せ生徒会は先生の推薦無しでは入れない狭き門です。ですが仕事量からして常に人手不足なんですよ。サクラさんは救いの女神です」


セオドア先輩が私の頭を撫でた。


繊細そうな白い手に撫でられるのは好きなので、頭を擦り寄せてしまう。


「………可愛らしい」


「狡いぞ」


後ろから登場したルイス先輩が引き剥がすと、大きな手が撫でた。


ルイス先輩はレオお父様を思い出して、胸がホッコリするので撫でられるのは好きです。


でも最近は、愛染会長と一緒にお昼寝するのにハマっている。


最初はカメリアと愛染会長と私の3人だったけど、気分屋で時間や場所の特定を嫌うカメリアが抜けると、2人でまったりする為に待ち合わせる様になっていました。


今ではお昼寝と言うよりも、日向ぼっこしながら お話する事が多い。


私は3人の先輩達との距離が急激に縮まっていました。


それと同時に、ジャスパーお兄様との距離が目に見えて離れていました。寂しいけど、お兄様が幸せになるなら喜ばなくてはいけません。


生徒会での私の仕事はパシリ………じゃなくて、必要な書類に先生からサインを貰ったり、出来上がった資料の配達が多いです。マルカブ程ではなくても足が早く、身軽で小回りが利く私は広い構内を迷わず歩き回れて適任だと自分でも思っています。


「こんにちは、学園長先生。バレンティン先生から預かって来ました」


教員室で預かった書類を差し出すと、眉間に皺を寄せながら受け取ってくれました。


「これは鹿族の王国に出張した時の報告書かい?期限は、とっくに切れているはずだが」


「ダメですか?」


「………はぁ~っ。仕方ない」


実は期限切れなのは知ってました。チーズ味のクッキーという、魅惑的なお菓子で買収………いや頼まれました。


早く帰ってカメリアと一緒に食べたいなぁ。


なんて考えていると学園長が、おいでおいでと手招きするので近寄れば、膝の上に座らされてしまいました。


なぜ?


小首を傾げながら学園長を見上げれば、イケオジに微笑まれた。


「膝の上の子猫と戯れてみたかったんだ」


「子猫ではないです」


「私から見れば子猫だよ」


顎の下をクイクイも指で擽られると、喉がなりそうな程に気持ちが良いです。


胸がポカポカして、ホッコリしてしまいました。


「生徒会を辞めて、私の手伝いをしないか?」


「ダメで~す」


「お小遣いも出すよ」


「無理で~す」


「でも欲しいなぁ」


「星?」


「なんか発音が違ったね?」


「干し?」


「もしかして、分かっていて誤魔化してるのかな」


「はいどうぞとは言えませ~ん」


「HAHAHAHAHAHA」


何回か話すうちに、学園長先生とも仲良しになっていました。この謎の勧誘も初めてではありません。


色々な先生達と交流が増え、着実に私の顔が広くなっていました。


そうなれば、ついでの用事も増えて構内を走り………駆け………………歩き回っていました。


「ジャスパーお兄様………じゃなかった。先生、プリントを届けにきた……ました」


「ぷっ」


ぎこちなさ過ぎる私を見て、お腹を抱えて笑うジャスパーお兄様。爆笑は久しぶりに見たので嬉しい。


「本当にサクラには適わないな」


少し寂しそうな笑顔に、今まで感じた事がないくらい胸がキュンと音を立てて愛しさが込み上げてきました。これは前々世のジャスパーお兄様に私が抱いていた気持ちだと分かっていました。


なんで今まで忘れていたんだろう?………忘れた?私が好きであり続ければ、ジャスパーお兄様は穏やかな気持ちで居られるんだって知っていたのに。


どうして、私はジャスパーお兄様から手を離したんだろう?


考え込む私は、無意識にちょっと赤くなっている目元が心配で、そっと手を伸ばし、指先で触れていた。


「サクラ?」


綺麗な瞳が戸惑い揺れるのが切なくて、泣きそうな気持ちが溢れ出した。


こんな気持ち、今まで知らなかったのに。


もしかして記憶が蘇ったから?


でも私は妹で、お兄様の番は小百合ちゃんだ。


そして、先に手を離したのは私です。


「なんでもない。生徒会室に戻らなくちゃいけないから」


「何かあったのか?」


「何も」


そう、何もない。今までも、これからも。


もしかしたら、私は情けない顔をしているのかも知れません。


神様って意地悪だと思った。


どうしてジャスパーお兄様の殺人鬼としての記憶を消したり、封印すること無く転生させ続けた事を理解に苦しんでいました。


そして、死ぬまで一緒に居たいと願った私の記憶を封印して血縁者として近くに置き、異世界の人間をわざわざ番にしたのは平等じゃない。


執拗にジャスパーお兄様の魂を痛めつけ、苦しめ、虐めている様にしか見えませんでした。


お兄様は、私を自分の良心だと言っていた事を思い出し、神様がジャスパーから良心を遠ざけた。


これが天罰だとでも言いたいの?


たまたま目に付いた殺人を犯した罪人を捕まえて、記憶を持たせたまま苦しめている。


カメリアがお兄様から聞いた”動かなくなっても手放せなかった大事な子”が間違いなく私なら、もしジャスパーお兄様が家族として一緒に居たいと願っていたのなら仕方ないけど、そうでないなら神様はかなり意地悪だと思う。


番である小百合ちゃんの手を取ると決めたジャスパーお兄様に、今更 私が何を言っても遅いのだけど。


「お兄様、幸せになってね」


それしか言葉にできず、反応しないジャスパーお兄様を見るのが怖くて俯いたまま保健室から出た。


振り返る事は許されない。


「期間限定発売の初恋シリーズ。初夏の思い出のラベンダー色の掛け金ヒロイン?」


長いわ!と心の中でツッコミを入れる私の目の前には、神様に不信感を抱いた私に対する天罰なのか、鬼の形相をしたアンジェが立っていました。


「まさか攻略対象者のジャスパー狙いなのは、人間のヒロインだけじゃないってこと?忌々しい!!ヒロインは1人居れば良いのよ!」


ガっとアンジェに首を両手で掴まれ、ギリギリと音を立てて締め上げている。


力と体格差は歴然。1つ年上のアンジェの方が上回っている。目がチカチカし始め、苦しくて首が熱い。抵抗したくてアンジェの手を掴んでも引き剥がせない。


あぁ、私は………また、ジャスパーお兄様を置いて逝ってしまうのかな?


ごめんね。


ずっと、傍に居てあげられなくて。


私は右目だけから涙を流しているアンジェを見ながら、意識を手放したのでした。
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