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「ちゃんちゃら」3話
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「ちゃんちゃら」3話
「来れない?」
海斗は眉間に皺を寄せた。
「そっ。一週間前くらいに騒いでなかったっけ?父親の仕事で海外に連れてかれるーとか。」
海斗は朧気な記憶の中から何とか大地の声と言葉を探した。
「あー、なんか、言ってた、かも。」
悪友はケラケラ笑った。
「嫌々言ってたけど、海外行けるんだから良いよな~。俺なんて行ったことないぜ。」と遠くの方から教授の声が聞こえ始めても悪友は喋り続けた。
「金持ちは良いよなぁ。」
ヘラヘラと話す悪友を他所に、海斗は視線を下の真っ白なノートに目を向けた。シャープペンシルを何とか握ったが、どうもそれを動かす余力は残っていないようだった。悪友は横で固まっている海斗の様子を気にするでもなく続ける。
「なあ、今日みんなでこの間行ったクラブ行かねぇ?もう少しで引っ掛けられそうだった女来てるかもしれないし。」
海斗の頭は段々と机へと近づいていった。
「悪い。ちょっと寝るわ。」
全ての講義が終わり、日が暮れてきたところ、キャンパスの正門前に数人の悪友たちが集まった。
「大地いないとしけてるかもな。あいつ女受けいいもんな。」
「モテる男は良いよなぁ。」
悪友たちが口々に問題の男の話をしているのを海斗は門に寄りかかりながら聞いていた。
正直クラブに行きたい気分ではないし、眠気も全く取れない状態だが、変に断って付き合いが悪くなるのもどこか気が進まなかった。海斗は重い足取りの中、みんなと一緒に改札を通った。
クラブは外の人通りが少ない暗い夜道とは違って明るく、人で溢れていた。ボディコンの服を着ている女性たちにスーツを着た男が平然とお酒が入ったショットグラスを勧めているのが見える。
皆、銘々に座ったり壁に寄りかかったりと話を始めていた。海斗は後悔した。激しい音楽が頭に響き、眠くても眠れず、おまけに頭痛までし始めたからだ。海斗が虚空を見つめていると、視界の端から一人のベリーショートの茶髪の男が顔を出した。
「どうしたんすか?海斗先輩。くび。」
「空島。」
空島はよく連む仲間の一人だ。唯一ここの中では後輩で、人懐っこい、所謂ワンコ系と言われる男だった。空島は自分の首に手を当てていた。
「首、寝違えたんすか?」
「あぁ。うん、そんな感じ。」
慌てて海斗は首に手を当てた。あの噛まれた痕を見られるのはさすがに困るので湿布をつけていたのだ。剥がれてる様子はない事に安堵しながらも空島に笑みを浮かべる。空島も安堵したように海斗に尋ねる。
「海斗先輩はいつも瓶ビール飲みますよね。頼んどきますね。」
正直飲みたい気分では無いが、変に気を遣わせるのも何か悟られそうだったので、仕方なく頷いた。
「じゃあ、俺も同じのたーのもっと。」
空島は気が利く後輩なのでよく周りからは可愛がられる。
「なあ!俺のも頼んどいて。」
「俺のも~」
「はーい。」
空島は嫌な顔せず飲み物を頼みに行った。少し雑に扱われることもあるが、本人はあまり気にしていない様子だった。
空島が飲み物を頼んでる間、海斗はテーブルに突っ伏すような姿勢で思案を巡らせていた。
大地と体の関係を持ってしまった事をあいつは、大地はどう思っているのか。そして、恐らくその日から体調が悪いのを考えると、原因は明らかだ。
ーあいつ、何かしたのか?
海斗は頭を抱えた。聞きたいのは山々だが、そうなると大地にあの夜、何が起こったのか詳しく聞く必要があった。目が覚めた時の光景が脳裏を過ぎる。
「持ってきましたよー。」
顔を上げると、空島が目の前に瓶ビールを置く。コトッと音を立てて視界いっぱいに茶色い空間が広がる。いつも通り瓶のネックの部分を掴んで持ち上げる。この間まで何なく持つことができた瓶は、今は鉛のように重く感じた。
「来れない?」
海斗は眉間に皺を寄せた。
「そっ。一週間前くらいに騒いでなかったっけ?父親の仕事で海外に連れてかれるーとか。」
海斗は朧気な記憶の中から何とか大地の声と言葉を探した。
「あー、なんか、言ってた、かも。」
悪友はケラケラ笑った。
「嫌々言ってたけど、海外行けるんだから良いよな~。俺なんて行ったことないぜ。」と遠くの方から教授の声が聞こえ始めても悪友は喋り続けた。
「金持ちは良いよなぁ。」
ヘラヘラと話す悪友を他所に、海斗は視線を下の真っ白なノートに目を向けた。シャープペンシルを何とか握ったが、どうもそれを動かす余力は残っていないようだった。悪友は横で固まっている海斗の様子を気にするでもなく続ける。
「なあ、今日みんなでこの間行ったクラブ行かねぇ?もう少しで引っ掛けられそうだった女来てるかもしれないし。」
海斗の頭は段々と机へと近づいていった。
「悪い。ちょっと寝るわ。」
全ての講義が終わり、日が暮れてきたところ、キャンパスの正門前に数人の悪友たちが集まった。
「大地いないとしけてるかもな。あいつ女受けいいもんな。」
「モテる男は良いよなぁ。」
悪友たちが口々に問題の男の話をしているのを海斗は門に寄りかかりながら聞いていた。
正直クラブに行きたい気分ではないし、眠気も全く取れない状態だが、変に断って付き合いが悪くなるのもどこか気が進まなかった。海斗は重い足取りの中、みんなと一緒に改札を通った。
クラブは外の人通りが少ない暗い夜道とは違って明るく、人で溢れていた。ボディコンの服を着ている女性たちにスーツを着た男が平然とお酒が入ったショットグラスを勧めているのが見える。
皆、銘々に座ったり壁に寄りかかったりと話を始めていた。海斗は後悔した。激しい音楽が頭に響き、眠くても眠れず、おまけに頭痛までし始めたからだ。海斗が虚空を見つめていると、視界の端から一人のベリーショートの茶髪の男が顔を出した。
「どうしたんすか?海斗先輩。くび。」
「空島。」
空島はよく連む仲間の一人だ。唯一ここの中では後輩で、人懐っこい、所謂ワンコ系と言われる男だった。空島は自分の首に手を当てていた。
「首、寝違えたんすか?」
「あぁ。うん、そんな感じ。」
慌てて海斗は首に手を当てた。あの噛まれた痕を見られるのはさすがに困るので湿布をつけていたのだ。剥がれてる様子はない事に安堵しながらも空島に笑みを浮かべる。空島も安堵したように海斗に尋ねる。
「海斗先輩はいつも瓶ビール飲みますよね。頼んどきますね。」
正直飲みたい気分では無いが、変に気を遣わせるのも何か悟られそうだったので、仕方なく頷いた。
「じゃあ、俺も同じのたーのもっと。」
空島は気が利く後輩なのでよく周りからは可愛がられる。
「なあ!俺のも頼んどいて。」
「俺のも~」
「はーい。」
空島は嫌な顔せず飲み物を頼みに行った。少し雑に扱われることもあるが、本人はあまり気にしていない様子だった。
空島が飲み物を頼んでる間、海斗はテーブルに突っ伏すような姿勢で思案を巡らせていた。
大地と体の関係を持ってしまった事をあいつは、大地はどう思っているのか。そして、恐らくその日から体調が悪いのを考えると、原因は明らかだ。
ーあいつ、何かしたのか?
海斗は頭を抱えた。聞きたいのは山々だが、そうなると大地にあの夜、何が起こったのか詳しく聞く必要があった。目が覚めた時の光景が脳裏を過ぎる。
「持ってきましたよー。」
顔を上げると、空島が目の前に瓶ビールを置く。コトッと音を立てて視界いっぱいに茶色い空間が広がる。いつも通り瓶のネックの部分を掴んで持ち上げる。この間まで何なく持つことができた瓶は、今は鉛のように重く感じた。
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