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「ちゃんちゃら」72話
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「ちゃんちゃら」72話
次の日、海斗は流川と一緒にいつも通り出勤した。いつも通りでないことといえば、朝、家を出る際に大地がずっとソワソワしていたことである。大地に隠し事をしているのは自分のはずなのに、なんだか変な気分になりながらもバスの停留所へ向かったことを、荷物を机に置きながら思い出す。
辺りを見渡したが、池田先輩がスマホを弄っているだけで、水城はまだ来ていなかった。いつも自分たちより先に出勤しているはずなのに珍しかった。隣の流川に聞くと、「今日は半休で午後から来るはずでは?」と言っていたので、水城が何らかのトラブルで出勤していないわけではないことを知り、ホッとする。
水城と何を話さなければいけないのかは分かっているが、それと同時に彼女の置かれた状況を思うと胸が痛んだ。
昼休憩に入ると、海斗は一人、休憩室で昼食を取る。最近は自分で弁当を作ることに嵌っていて、毎日早起きをして弁当におかずを詰めていた。大地も何かソワソワしていたので、大地の分も弁当を用意すると、彼は喜んで鞄に弁当を入れていたことを思い出し、思わず笑みが溢れた。
弁当に入れた金平ごぼうを口に運びながら、海斗は近くにあったリモコンで、休憩室に設置されている小型テレビの電源を入れる。
すると、ちょうどこの間、大和が来る直前まで観ていたバラエティ番組が放送されていた。また有名企業の商品特集をしていて、番組キャラクターが社員や社長に話を聞きにいくという、お決まりの流れを放送していた。特に気にせず牛蒡と人参を咀嚼しながら眺めていると、突然聞き覚えのある商品がテレビで紹介される。それは、この間まで大地が担当していた文房具製品だった。思わず画面を凝視する。嫌な予感がしたのでチャンネルを変えようとしたところで、今日の朝、玄関前でソワソワしていた男の顔が画面に映し出される。大地だった。
大地は家にいる時とは違い、淡々と商品の説明をしている。その姿はスマートという言葉が相応しいだろう、と海斗は思った。やはり、家ではだいぶ気を遣わせてしまっているのではないだろうかと海斗は俯きながら、自分で握ったおにぎりを口にする。
「あ、社長以外が出てる。珍しいー。」
後ろからの声におにぎりを落としそうになりながらも振り向くと、池田先輩が缶コーヒーを飲みながら壁に寄りかかっていた。海斗は下手に反応するといけないと思い、黙って弁当を食べることに集中することにした。
本当だったら大地との関係性も特に他人に隠すことでもないのに、まるでいけないことのようにしている自分に海斗は嫌悪感を覚えていた。
最後の牛蒡を咀嚼し終えると、休憩室のドアが開いた。
「すみません。海斗くん?」
名前を呼ばれたので、海斗はランチクロスで弁当を包みながら顔を上げる。そこには食堂に行っていたはずの流川が立っていた。急いで来たのか少し息が上がっている。
「あの、水城さんが呼んでるんで、その。」
水城という名前に海斗の弁当を包む手が止まる。いよいよ、その時が来てしまったのだ。今まで落ち着いていたはずの心臓が一気に激しく鳴り出す。
海斗は周りにバレないように深呼吸をしながら休憩室を出て行った。
次の日、海斗は流川と一緒にいつも通り出勤した。いつも通りでないことといえば、朝、家を出る際に大地がずっとソワソワしていたことである。大地に隠し事をしているのは自分のはずなのに、なんだか変な気分になりながらもバスの停留所へ向かったことを、荷物を机に置きながら思い出す。
辺りを見渡したが、池田先輩がスマホを弄っているだけで、水城はまだ来ていなかった。いつも自分たちより先に出勤しているはずなのに珍しかった。隣の流川に聞くと、「今日は半休で午後から来るはずでは?」と言っていたので、水城が何らかのトラブルで出勤していないわけではないことを知り、ホッとする。
水城と何を話さなければいけないのかは分かっているが、それと同時に彼女の置かれた状況を思うと胸が痛んだ。
昼休憩に入ると、海斗は一人、休憩室で昼食を取る。最近は自分で弁当を作ることに嵌っていて、毎日早起きをして弁当におかずを詰めていた。大地も何かソワソワしていたので、大地の分も弁当を用意すると、彼は喜んで鞄に弁当を入れていたことを思い出し、思わず笑みが溢れた。
弁当に入れた金平ごぼうを口に運びながら、海斗は近くにあったリモコンで、休憩室に設置されている小型テレビの電源を入れる。
すると、ちょうどこの間、大和が来る直前まで観ていたバラエティ番組が放送されていた。また有名企業の商品特集をしていて、番組キャラクターが社員や社長に話を聞きにいくという、お決まりの流れを放送していた。特に気にせず牛蒡と人参を咀嚼しながら眺めていると、突然聞き覚えのある商品がテレビで紹介される。それは、この間まで大地が担当していた文房具製品だった。思わず画面を凝視する。嫌な予感がしたのでチャンネルを変えようとしたところで、今日の朝、玄関前でソワソワしていた男の顔が画面に映し出される。大地だった。
大地は家にいる時とは違い、淡々と商品の説明をしている。その姿はスマートという言葉が相応しいだろう、と海斗は思った。やはり、家ではだいぶ気を遣わせてしまっているのではないだろうかと海斗は俯きながら、自分で握ったおにぎりを口にする。
「あ、社長以外が出てる。珍しいー。」
後ろからの声におにぎりを落としそうになりながらも振り向くと、池田先輩が缶コーヒーを飲みながら壁に寄りかかっていた。海斗は下手に反応するといけないと思い、黙って弁当を食べることに集中することにした。
本当だったら大地との関係性も特に他人に隠すことでもないのに、まるでいけないことのようにしている自分に海斗は嫌悪感を覚えていた。
最後の牛蒡を咀嚼し終えると、休憩室のドアが開いた。
「すみません。海斗くん?」
名前を呼ばれたので、海斗はランチクロスで弁当を包みながら顔を上げる。そこには食堂に行っていたはずの流川が立っていた。急いで来たのか少し息が上がっている。
「あの、水城さんが呼んでるんで、その。」
水城という名前に海斗の弁当を包む手が止まる。いよいよ、その時が来てしまったのだ。今まで落ち着いていたはずの心臓が一気に激しく鳴り出す。
海斗は周りにバレないように深呼吸をしながら休憩室を出て行った。
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