ゼロから千まで

三旨加泉

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「ゼロから千まで」28話

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「ゼロから千まで」28話


 三人は学校へ急いで向かって自分たちのクラスに入り、先ほど買った文房具などを机の中に突っ込む。安心した三人が校門を潜り一息つくと、運動部が活動を終えて帰るところだった。
 短い髪がツンツンと跳ねた頭の中に清潔感のあるショートの頭が目に入った。
 霧崎零一だった。
 世羅と三来が顔を見合わせる。二葉も遅れて気づいたのか、零一を思わず指差す。
「あっ!霧崎零一!千歳に会いに行くのかなぁ」
 急いで三来は二葉の口を塞いだが、手遅れだったようで、霧崎零一は部活仲間に手を振るとこちらへゆっくり歩いてきた。二葉がすぐ逃げ出そうとしたが、三来に取り押さえられる。
「バカ!せめて残って責任取れ!」
「三人とも今日は遅いね。文化祭の準備?」
「ひえっ」
 二葉の小さい悲鳴が夜空に響く。それもそのはずである。三人が霧崎零一と話をするのは入学以来どころか人生初だった。学校一のモテ男と話すのはさすがに千歳といつもバカをやっている三人組でさえも緊張した。二葉は零一のモテオーラにやられたのか、すっかり三来の背中に隠れて怯えていた。三来も仁王立ちしていたが、足が震えていた。
 世羅は負けじと零一の前に立つ。モデルのような高身長に見下ろされるのは緊張した。
「なぁ、あんたどういうつもり?」
「どういうつもりって?」
「千歳のことだよ!ベタベタくっついて!なんのつもり!?」
 世羅は単刀直入に話を切り出す。しかし、零一はポカンと口を開けていた。
「ちーちゃん、嫌がってた?」
「うわ。"ちーちゃん"だって。」と二葉は驚きで口を押さえる。
「ちーちゃんになにかあったの?」
 小首を傾げながら零一はこちらへ一歩近づく。零一の目はどこか目が据わっているようで、恐怖心を煽られた。
「千歳は元気だよ。さっき会ってきたけど、別に嫌がってはいなさそうだったし。」
「どうだった?」
 要領を得ない聞き方に世羅は段々イラついてくる。
「いや、だから元気だって」
「あ、違うんだ。ちーちゃんの家に行く途中、誰かとすれ違ったりした?」
 全く予想つかない質問の内容に三人は顔を見合わせた。
「何人かあたしたちと同じように文化祭の準備をしていた奴らとすれ違ったりしたけど、それがなに?」
 零一は顎に手を乗せ、考え込むように唸る。
「その中に百合愛はいた?」
「百合愛?」
 またも三人は顔を見合わせた。二葉が警戒した小動物のように世羅にくっつき、威嚇するように叫んだ。
「ひょ、ひょっとして、も、元カノとヨリ戻そうとしてる!?浮気者!!」
「ち、違うよ!」
 零一は慌てて首を横に振る。
「じゃあ、なんで百合愛のことなんか気にすんのよ。あんたにはもう関係の無い話じゃん?」
「それは」
 零一は息を吐き出し、押し黙る。その表情は深刻だった。彼のそんな顔を見ていると嫌でも三人は嫌な予感とやらを感じざるを得なかった。
 まだ何も分かっていない状態だが、一つだけ言えることは、霧崎零一は永遠千歳を心配しているということだけだった。


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