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「ゼロから千まで」31話
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「ゼロから千まで」31話
「じゃあ、なに?百合愛は千歳に会いに来たってこと?カッターを持って?」
暗い夜道で歩く四人に寒風が降り注ぐ。いつもだったら寒いとしか感じないその風が、今は全員の背中を撫でて身体をゾワゾワさせた。
零一は黙りこくった。それが答えだということは三人にも分かった。そして、それがいかに奇妙で不気味な状況なのかを思い知らせてくる。
零一は再び前を向いて歩き出す。さっきまでポケットに手を突っ込んでいたが、それを出して拳を握る仕草をする。
「僕はちーちゃんのところに向かうよ。百合愛が何してくるか分からないからさ。」
三人は零一の顔を眺める。そこにはいつものキラキラしたイケメンなどではなく、まるでお姫様を刺客から守ろうとする騎士のような風格があった。
「だから、百合愛を見掛けたら教えて欲しいんだ。」
「わ、分かった。」
三人はそのあまりにも現代的ではないオーラに押されながら頷くことしかできなかった。
三人の返事を聞いた零一は微笑みを浮かべ、こちらに背中を向けて去って行った。
零一の背中が見えなくなると、二葉は慌てたように三来と世羅に縋る。
「ヤバいよヤバいよ!千歳がヤバいよ!千歳にはやく伝えないと!」
「二葉!」
世羅の大声に二葉はビクリと肩を震わせる。
「千歳に喋ってみなよ!あいつ、きっと『百合愛がそんなことするはずない』って本人に会いに行くよ!!」
世羅の言葉に二葉はハッとして俯く。三来も早くこの情報を聞かなかったことにしたいのか、首の後ろを掻いて苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「でもなんで百合愛はカッターなんて持って千歳に会いに来たの?」と二葉はずっと肩を震わせ、泣きっ面を晒しながら訊いてくる。
「そんなの、千歳を殺したいからでしょ。」
「なんで?」
「自分の恋人盗られたからでしょ!」
自分でも口にしたくない物騒な考えが三来の口から外へ出ていく。
考えられる理由はそのくらいしか無かった。百合愛と千歳は中学からの付き合いだ。二人が仲が良いのはあまり百合愛と接点の無い自分たちでさえも分かる程であった。そんな百合愛が千歳に危害を加えようとする理由など、付き合っていた恋人と別れ、その恋人が間髪入れずに自分の友人と付き合ったことしか思いつかなかった。
「そ、それにしたってやりすぎじゃない?」と三来は顔を真っ青にしながら世羅の腕を掴む。
「病院で機会を伺ったり、カッター持ってたり、ヤバいよ。」
「でもでも、百合愛、千歳が怪我して入院してるのにビンタしたんだよ!普通じゃないって!」
考えれば考える程、百合愛の異常さに背筋が凍っていく。
「でも、あたしたちまで千歳の周りにいたら相手の神経を逆撫でるかもしんないし」
「じゃあ、どうすんのよ。」と世羅の言葉に三来は顔を膨らませる。「このまま千歳を放っておけっていうの?」
世羅は制服の上に着たパーカーのポケットに手を入れる。
「霧崎の言う通り、うちらに出来ることは百合愛を見掛けたら報告することしかできないでしょ。探偵でもないんだからさ。」
既に零一の背中は見えなくなっていたが、世羅は零一が歩いて行った歩道をジッと眺めていた。
「じゃあ、なに?百合愛は千歳に会いに来たってこと?カッターを持って?」
暗い夜道で歩く四人に寒風が降り注ぐ。いつもだったら寒いとしか感じないその風が、今は全員の背中を撫でて身体をゾワゾワさせた。
零一は黙りこくった。それが答えだということは三人にも分かった。そして、それがいかに奇妙で不気味な状況なのかを思い知らせてくる。
零一は再び前を向いて歩き出す。さっきまでポケットに手を突っ込んでいたが、それを出して拳を握る仕草をする。
「僕はちーちゃんのところに向かうよ。百合愛が何してくるか分からないからさ。」
三人は零一の顔を眺める。そこにはいつものキラキラしたイケメンなどではなく、まるでお姫様を刺客から守ろうとする騎士のような風格があった。
「だから、百合愛を見掛けたら教えて欲しいんだ。」
「わ、分かった。」
三人はそのあまりにも現代的ではないオーラに押されながら頷くことしかできなかった。
三人の返事を聞いた零一は微笑みを浮かべ、こちらに背中を向けて去って行った。
零一の背中が見えなくなると、二葉は慌てたように三来と世羅に縋る。
「ヤバいよヤバいよ!千歳がヤバいよ!千歳にはやく伝えないと!」
「二葉!」
世羅の大声に二葉はビクリと肩を震わせる。
「千歳に喋ってみなよ!あいつ、きっと『百合愛がそんなことするはずない』って本人に会いに行くよ!!」
世羅の言葉に二葉はハッとして俯く。三来も早くこの情報を聞かなかったことにしたいのか、首の後ろを掻いて苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「でもなんで百合愛はカッターなんて持って千歳に会いに来たの?」と二葉はずっと肩を震わせ、泣きっ面を晒しながら訊いてくる。
「そんなの、千歳を殺したいからでしょ。」
「なんで?」
「自分の恋人盗られたからでしょ!」
自分でも口にしたくない物騒な考えが三来の口から外へ出ていく。
考えられる理由はそのくらいしか無かった。百合愛と千歳は中学からの付き合いだ。二人が仲が良いのはあまり百合愛と接点の無い自分たちでさえも分かる程であった。そんな百合愛が千歳に危害を加えようとする理由など、付き合っていた恋人と別れ、その恋人が間髪入れずに自分の友人と付き合ったことしか思いつかなかった。
「そ、それにしたってやりすぎじゃない?」と三来は顔を真っ青にしながら世羅の腕を掴む。
「病院で機会を伺ったり、カッター持ってたり、ヤバいよ。」
「でもでも、百合愛、千歳が怪我して入院してるのにビンタしたんだよ!普通じゃないって!」
考えれば考える程、百合愛の異常さに背筋が凍っていく。
「でも、あたしたちまで千歳の周りにいたら相手の神経を逆撫でるかもしんないし」
「じゃあ、どうすんのよ。」と世羅の言葉に三来は顔を膨らませる。「このまま千歳を放っておけっていうの?」
世羅は制服の上に着たパーカーのポケットに手を入れる。
「霧崎の言う通り、うちらに出来ることは百合愛を見掛けたら報告することしかできないでしょ。探偵でもないんだからさ。」
既に零一の背中は見えなくなっていたが、世羅は零一が歩いて行った歩道をジッと眺めていた。
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