ゼロから千まで

三旨加泉

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「ゼロから千まで」38話

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「ゼロから千まで」38話


 それから少し零一と揉めた。百合愛からのメッセージを見て千歳は零一に百合愛と会うことを伝えようと思い、振り返るとギョッとした。零一がまるで般若のように眉を顰め、千歳のスマホを睨んでいたからだ。やはり零一はどこか百合愛を警戒しているのは見て取れた。
 一体どんな別れ話をしたのだろうかと千歳は思ったが、本人に態々訊ねるのはさすがの千歳もしなかった。しかし、零一にはどのみち百合愛と会うということを伝えないといけないので、改めて顔を零一に向けて言った。

「ねぇねぇ今日、百合愛と会うんだけどさ。」
「どうしても会わないといけないの?」
 千歳は二葉たちとの会話を思い出す。過保護や束縛という言葉がぐるぐるとまるで洗濯機の中にいるかのように千歳の中で回っていた。千歳は自分なりに考えた結果、零一を落ち着かせるような言葉を掛けることにした。
「大丈夫!ばったり出会さないように百合愛が帰ったら、うちが連絡するね!」と笑顔を取り繕って言ったが、零一は納得のいっていない様子だった。不貞腐れたような零一の顔は初めて見たので、思わず千歳は吹き出す。零一はまたしても険しい表情を見せたが、その表情は大きな溜息で終着したようだ。
「何かあったら僕だけじゃなく、世羅さんたちにも連絡してね。」
 なんで急に世羅たちの名前が上がったのかは分からないが、千歳は素直に「うん。」と頷いた。


 千歳と零一はいつも通り千歳の家に帰り、学校へ向かう零一に手を振った。祖父母となんてことない話をして再び自分の部屋へ帰る。やはり何もすることもないので、千歳は暇で暇で仕方なかった。祖母からは「休むのも仕事だよ。」と言われたが、常に動き回っている千歳にとって休み方というものがよく分からなかった。
 とりあえず階段を降りて居間に向かい、祖母とテレビを眺める。テレビの内容はどうやらメロドラマのようで、浮気をしていた男に女が詰め寄るシーンが映し出されていた。女の方は泣きじゃくりながらナイフを取り出し、男の方へ向ける。舞台は夜だというのに、ナイフはギラリと光ったように感じた。息を呑む千歳とは裏腹に祖母はまるでバラエティでも観てるかのようになんの気無しにお茶菓子を持ってくる。しかし、千歳はお茶菓子を食べる余裕も無かった。女が男にナイフを持って突進するのを観て悲鳴を上げた。千歳の悲鳴を聞いて祖母はテレビのチャンネルを変えた。変顔をした芸人が映し出され、千歳はホッと息をつく。
「大丈夫かい?」
 祖母は千歳にお茶を差し出す。千歳は一気にお茶を飲み干そうとしたが、熱くて咽せてしまう。完全に舌を火傷したので、お茶菓子の饅頭の味もよく分からなかった。
 心配そうに祖母は千歳を見ていたが、千歳がすっかり舌を火傷したことにショックを受け、先程のドラマの内容を忘れてるのを見て、安心していた。

 千歳は不貞寝をすることを決め、座布団を畳んで、それを枕にして寝入った。


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