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「ゼロから千まで」37話
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「ゼロから千まで」37話
映画がハッピーエンドで終わったのを見届けると、千歳は再びベッドにダイブした。
「もう寝る?ちーちゃん。」
「うん。」
千歳は身体を動かしたいのか、ゴロゴロと寝返りを打ち、そして大の字になった。その際に寝巻きが捲れ、千歳のお腹が少し見えた。そこにはまだ赤みがかった手術痕が目立つ。零一はすぐ視線を逸らしたが、千歳は気怠そうに手術痕を指でなぞる。
「痛みは引いてきたけど、なんか気になるんだよねー」
そう言って千歳は小さく溜息をつく。
「あんまり触らない方がいいよ、ちーちゃん。」
「でもさー」
千歳は痒いところが気になるかのように痕を触った。すると、零一は痕を触る千歳の手を強く握る。
「もうこんな痛い思いさせないからね。」
「確かにもう懲り懲りだなぁ。次は避けれるようになりたい。」と千歳はガッツポーズを取る。普通ならこういった言葉は冗談で言うものなのだが、千歳はきっと本気で言っているのだろうな、と零一は苦笑する。
そんな力強い千歳でも零一は知っている。初めてお見舞いに行った日、千歳が顔色を悪くして横たわっていたのを。死んでも死ななそうな千歳でも人間だ。いつも一緒にいた彼女でも心は変わり、自分から離れていく恐怖も味わった。もう千歳の後ろを歩くのではなく、自分は隣で手を繋ぐべきだ。
千歳がこちらに顔を向け笑った。どうしたのだろうかと思ったが、下を見て気がついた。どうやら自分は無意識に千歳の手を握り続けていたようだ。
カーテンから漏れる朝日に千歳は目を覚ます。横を見ると零一が眠っていた。ふと、千歳は右手が温かいことに気がついた。どうやらあれからずっと零一と手を繋いでいたらしい。なんだか恋人という状況にも慣れてきたような気がして千歳の心も空と同様に晴れやかだった。
カーテンの隙間から見える青空を眺めていると、自分のスマホが鳴った。見てみると、世羅からメッセージが届いていた。
ーおはよう。元気?
そんな簡単な内容が書かれてあった。二葉たちとは頻繁にメッセージのやり取りをしているわけではないので、要件の無いメッセージに少し疑問を抱く。しかし、深く考えるのは零一との告白の一連の騒動で疲れたので、千歳は「ちょー元気」とだけ打って返信した。
すると、いきなり背中に重みを感じた。振り向くと零一が自分に抱きついていた。いつもならぱっちりしている目が少し半開きになっている。
「おはよう、ちーちゃん。」
「おはー」
千歳が満面の笑みで手を軽く振ると、また千歳のスマホが震えた。
ーおはよう、千歳ちゃん。今日、文化祭の準備が終わったらお家に寄ってもいい?
百合愛からだった。
映画がハッピーエンドで終わったのを見届けると、千歳は再びベッドにダイブした。
「もう寝る?ちーちゃん。」
「うん。」
千歳は身体を動かしたいのか、ゴロゴロと寝返りを打ち、そして大の字になった。その際に寝巻きが捲れ、千歳のお腹が少し見えた。そこにはまだ赤みがかった手術痕が目立つ。零一はすぐ視線を逸らしたが、千歳は気怠そうに手術痕を指でなぞる。
「痛みは引いてきたけど、なんか気になるんだよねー」
そう言って千歳は小さく溜息をつく。
「あんまり触らない方がいいよ、ちーちゃん。」
「でもさー」
千歳は痒いところが気になるかのように痕を触った。すると、零一は痕を触る千歳の手を強く握る。
「もうこんな痛い思いさせないからね。」
「確かにもう懲り懲りだなぁ。次は避けれるようになりたい。」と千歳はガッツポーズを取る。普通ならこういった言葉は冗談で言うものなのだが、千歳はきっと本気で言っているのだろうな、と零一は苦笑する。
そんな力強い千歳でも零一は知っている。初めてお見舞いに行った日、千歳が顔色を悪くして横たわっていたのを。死んでも死ななそうな千歳でも人間だ。いつも一緒にいた彼女でも心は変わり、自分から離れていく恐怖も味わった。もう千歳の後ろを歩くのではなく、自分は隣で手を繋ぐべきだ。
千歳がこちらに顔を向け笑った。どうしたのだろうかと思ったが、下を見て気がついた。どうやら自分は無意識に千歳の手を握り続けていたようだ。
カーテンから漏れる朝日に千歳は目を覚ます。横を見ると零一が眠っていた。ふと、千歳は右手が温かいことに気がついた。どうやらあれからずっと零一と手を繋いでいたらしい。なんだか恋人という状況にも慣れてきたような気がして千歳の心も空と同様に晴れやかだった。
カーテンの隙間から見える青空を眺めていると、自分のスマホが鳴った。見てみると、世羅からメッセージが届いていた。
ーおはよう。元気?
そんな簡単な内容が書かれてあった。二葉たちとは頻繁にメッセージのやり取りをしているわけではないので、要件の無いメッセージに少し疑問を抱く。しかし、深く考えるのは零一との告白の一連の騒動で疲れたので、千歳は「ちょー元気」とだけ打って返信した。
すると、いきなり背中に重みを感じた。振り向くと零一が自分に抱きついていた。いつもならぱっちりしている目が少し半開きになっている。
「おはよう、ちーちゃん。」
「おはー」
千歳が満面の笑みで手を軽く振ると、また千歳のスマホが震えた。
ーおはよう、千歳ちゃん。今日、文化祭の準備が終わったらお家に寄ってもいい?
百合愛からだった。
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