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「ゼロから千まで」44話
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「ゼロから千まで」44話
「千歳ちゃん。どうしてここにいるの?」
百合愛の声がどんどん近づいてくる。どうして顔を出していないのにバレたのか分からず、混乱しながらも千歳は恐る恐る顔を出す。千歳の顔を見ると百合愛が駆け寄ってきた。
「ど、どうして」
千歳が口をパクパクさせながら後退りをすると百合愛は溜息をついた。
「千歳ちゃん。スマホ、ポケットに入れてるでしょ。通知が入った時に画面明るくなってたよ。」
慌ててポケットを触り、スマホを確認する。見ると、零一や二葉たちから「今どこにいるか」という旨の連絡が入っていた。千歳は苦笑し、気まずそうに頭の後ろを掻いて誤魔化そうとするが、百合愛は千歳の顔をジッと見ていた。緊張して視線を逸らすと、百合愛はまた一歩こちらへ近づいてきた。
「千歳ちゃん。どうしてここにいるの?なにがあったの?」
百合愛の質問は意外だった。まるでさっきのことは何も無かったかのような素ぶりだった。
「えっ、えっと。ちょっと野暮用で」
「正直に答えて」
百合愛の真剣な声色に気圧され、千歳は正直にさっき起きた出来事を話した。書類を取りに来たことと、防木に襲われたということ、全て話した。冷や汗が自分の額に滲むのが分かる。今まで幽霊や化け物だなどと怖い話の類いに子どもの頃の零一が怖がっていたのを横で不思議そうに眺めていた千歳だったが、たった今、普通の女子高生の友人である百合愛の顔が豹変するのではないかという、ただそれだけのことに千歳は怖くて堪らなかった。
しかし、百合愛の顔は悲しみに満ちた表情で、堪らず千歳に抱きついてきた。理解に追いつかず、ただ自分の胸に飛び込んできた百合愛を目を丸くしながらただ見つめることしかできない。耳を澄ませると百合愛がさめざめと泣き始めた。この短時間での百合愛の変わり様に千歳は動揺しながらも百合愛の肩に手を置く。すると、満面の笑みで百合愛は顔を上げた。
「千歳ちゃん、怖い思いをしたね。もう大丈夫だよ。千歳ちゃんは私が守るからね。」
百合愛の力強い言葉に千歳はさっきの出来事を忘れ安心感すら覚えた。とりあえず百合愛は自分に敵意も加虐心も無いことを知り、ホッとする。千歳も百合愛に倣って頬を緩ませた。
「あの男も本当に使えない。まさか千歳ちゃんを襲うなんて。そう、担任の先生がね…迂闊だった。てっきりいつも通りあの男が取りに来ると思ったのに。」
百合愛が自分の胸の中で独り言をブツブツ呟いているのを聞き、表情が固まる。百合愛が抱きついているので体温は温かいはずなのに、背中はどんどん冷えていった。
「もう怖い思いはさせないから、ね?」
そう言って、百合愛は千歳の唇に自分の唇を強く押し付けた。
「千歳ちゃん。どうしてここにいるの?」
百合愛の声がどんどん近づいてくる。どうして顔を出していないのにバレたのか分からず、混乱しながらも千歳は恐る恐る顔を出す。千歳の顔を見ると百合愛が駆け寄ってきた。
「ど、どうして」
千歳が口をパクパクさせながら後退りをすると百合愛は溜息をついた。
「千歳ちゃん。スマホ、ポケットに入れてるでしょ。通知が入った時に画面明るくなってたよ。」
慌ててポケットを触り、スマホを確認する。見ると、零一や二葉たちから「今どこにいるか」という旨の連絡が入っていた。千歳は苦笑し、気まずそうに頭の後ろを掻いて誤魔化そうとするが、百合愛は千歳の顔をジッと見ていた。緊張して視線を逸らすと、百合愛はまた一歩こちらへ近づいてきた。
「千歳ちゃん。どうしてここにいるの?なにがあったの?」
百合愛の質問は意外だった。まるでさっきのことは何も無かったかのような素ぶりだった。
「えっ、えっと。ちょっと野暮用で」
「正直に答えて」
百合愛の真剣な声色に気圧され、千歳は正直にさっき起きた出来事を話した。書類を取りに来たことと、防木に襲われたということ、全て話した。冷や汗が自分の額に滲むのが分かる。今まで幽霊や化け物だなどと怖い話の類いに子どもの頃の零一が怖がっていたのを横で不思議そうに眺めていた千歳だったが、たった今、普通の女子高生の友人である百合愛の顔が豹変するのではないかという、ただそれだけのことに千歳は怖くて堪らなかった。
しかし、百合愛の顔は悲しみに満ちた表情で、堪らず千歳に抱きついてきた。理解に追いつかず、ただ自分の胸に飛び込んできた百合愛を目を丸くしながらただ見つめることしかできない。耳を澄ませると百合愛がさめざめと泣き始めた。この短時間での百合愛の変わり様に千歳は動揺しながらも百合愛の肩に手を置く。すると、満面の笑みで百合愛は顔を上げた。
「千歳ちゃん、怖い思いをしたね。もう大丈夫だよ。千歳ちゃんは私が守るからね。」
百合愛の力強い言葉に千歳はさっきの出来事を忘れ安心感すら覚えた。とりあえず百合愛は自分に敵意も加虐心も無いことを知り、ホッとする。千歳も百合愛に倣って頬を緩ませた。
「あの男も本当に使えない。まさか千歳ちゃんを襲うなんて。そう、担任の先生がね…迂闊だった。てっきりいつも通りあの男が取りに来ると思ったのに。」
百合愛が自分の胸の中で独り言をブツブツ呟いているのを聞き、表情が固まる。百合愛が抱きついているので体温は温かいはずなのに、背中はどんどん冷えていった。
「もう怖い思いはさせないから、ね?」
そう言って、百合愛は千歳の唇に自分の唇を強く押し付けた。
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