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「ゼロから千まで」49話
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「ゼロから千まで」49話
大きな音に動揺した百合愛はすぐさま自分の耳を守った。その隙に千歳は百合愛の腕から抜け出し、世羅たちの元へ走る。百合愛はすぐ手を伸ばしたが、その手は千歳の背中を掴むことはできなかった。
「みんなー!」
猛ダッシュしてきた千歳を三人は受け止める。三人の顔を見て安心したのも束の間、振り向くとこちらを恨めしく睨んでいる百合愛の姿があった。二葉は今度は千歳の背中に隠れた。
「千歳ちゃん。早く千歳ちゃんを治さなきゃ」
百合愛はまるで呪詛を吐くかのようにブツブツ呟いていた。それは非常ベルが鳴り響く校舎でもなぜか耳に入ってくる程、恨みがこもっているように感じた。
「あんた、治すも何も千歳は変わってないだろ。」
「変わるんじゃないわ。」
百合愛の目は据わっていた。持っているカッターナイフは地面に向けられているのに未だ危機感が迫ってくる。
「変えられちゃうの!!」
そう叫んだ百合愛は階段を勢い良く駆け上がっていった。千歳は零一の顔が頭に浮かび、何が起きるのか考えるより先に足を動かした。
「千歳!」
世羅の掛けた声など、非常ベルがけたたましく鳴っているのに加え、まるで木を登る猿の如く上へ進んでいく千歳には届くはずがなかった。
「う、うちらも行こうよ」
三来が階段を指差しながら振り返ると、顔を青ざめる。世羅たちも振り返るとそこには千歳のクラスの担任がこちらへ走ってきていた。
「なんだ!?お前たち何したんだ!」
二葉は口を手で押さえ、震え上がる。そして助けを懇願するように三来と世羅に視線を向ける。しかし、世羅は口角を上げていた。余裕のある表情に三来と二葉は顔を見合わせる。
「あたしらには、あたしらの出来ることをしよう。」
迂闊だった。
零一は振り下ろされたバットが肩を掠めた時にそう思った。前を向くと自分より頭一つ抜けた身長の男が立っていた。風紀委員担当の防木だった。
まさか百合愛が先生まで手駒にしているとは考えていなかった。百合愛は自分の命を狙っているのは分かっていたが、百合愛一人なら対抗できると高を括っていた。
防木は鼻息を荒げながらバットを再び振り上げる。焦点が合っていないその目つきはとても正気だとは感じられなかった。零一はじりじりと近づいてくる防木から一定の距離を空けながら屋上のドアまで後ろ足で下がる。ドアを開けて下の階へ逃げることが出来れば襲われる可能性も低くなる。今は生徒も先生も校舎にいる。まだ勝機はあるはずだ。
その時、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。今はスマホを見ている場合ではなかったが、零一は防木を警戒しながら横目で画面を確認する。
「無事?百合愛が千歳に接触してた。いま屋上に向かった百合愛を千歳が追いかけてる。」
世羅のメッセージに息を呑む。千歳が、ここに?どうして?
混乱している零一に容赦なく防木はバットを振り下ろす。零一が間一髪で避け、ドアに手を掛けた。
「ちーちゃん!こっちに来ちゃダメだ!」
零一はまだこちらへ来ていない千歳に向かって叫びながらドアを潜った。
大きな音に動揺した百合愛はすぐさま自分の耳を守った。その隙に千歳は百合愛の腕から抜け出し、世羅たちの元へ走る。百合愛はすぐ手を伸ばしたが、その手は千歳の背中を掴むことはできなかった。
「みんなー!」
猛ダッシュしてきた千歳を三人は受け止める。三人の顔を見て安心したのも束の間、振り向くとこちらを恨めしく睨んでいる百合愛の姿があった。二葉は今度は千歳の背中に隠れた。
「千歳ちゃん。早く千歳ちゃんを治さなきゃ」
百合愛はまるで呪詛を吐くかのようにブツブツ呟いていた。それは非常ベルが鳴り響く校舎でもなぜか耳に入ってくる程、恨みがこもっているように感じた。
「あんた、治すも何も千歳は変わってないだろ。」
「変わるんじゃないわ。」
百合愛の目は据わっていた。持っているカッターナイフは地面に向けられているのに未だ危機感が迫ってくる。
「変えられちゃうの!!」
そう叫んだ百合愛は階段を勢い良く駆け上がっていった。千歳は零一の顔が頭に浮かび、何が起きるのか考えるより先に足を動かした。
「千歳!」
世羅の掛けた声など、非常ベルがけたたましく鳴っているのに加え、まるで木を登る猿の如く上へ進んでいく千歳には届くはずがなかった。
「う、うちらも行こうよ」
三来が階段を指差しながら振り返ると、顔を青ざめる。世羅たちも振り返るとそこには千歳のクラスの担任がこちらへ走ってきていた。
「なんだ!?お前たち何したんだ!」
二葉は口を手で押さえ、震え上がる。そして助けを懇願するように三来と世羅に視線を向ける。しかし、世羅は口角を上げていた。余裕のある表情に三来と二葉は顔を見合わせる。
「あたしらには、あたしらの出来ることをしよう。」
迂闊だった。
零一は振り下ろされたバットが肩を掠めた時にそう思った。前を向くと自分より頭一つ抜けた身長の男が立っていた。風紀委員担当の防木だった。
まさか百合愛が先生まで手駒にしているとは考えていなかった。百合愛は自分の命を狙っているのは分かっていたが、百合愛一人なら対抗できると高を括っていた。
防木は鼻息を荒げながらバットを再び振り上げる。焦点が合っていないその目つきはとても正気だとは感じられなかった。零一はじりじりと近づいてくる防木から一定の距離を空けながら屋上のドアまで後ろ足で下がる。ドアを開けて下の階へ逃げることが出来れば襲われる可能性も低くなる。今は生徒も先生も校舎にいる。まだ勝機はあるはずだ。
その時、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。今はスマホを見ている場合ではなかったが、零一は防木を警戒しながら横目で画面を確認する。
「無事?百合愛が千歳に接触してた。いま屋上に向かった百合愛を千歳が追いかけてる。」
世羅のメッセージに息を呑む。千歳が、ここに?どうして?
混乱している零一に容赦なく防木はバットを振り下ろす。零一が間一髪で避け、ドアに手を掛けた。
「ちーちゃん!こっちに来ちゃダメだ!」
零一はまだこちらへ来ていない千歳に向かって叫びながらドアを潜った。
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