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「ゼロから千まで」48話
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「ゼロから千まで」48話
「世羅!!」
千歳が叫ぶと階段下に三つの影が現れた。
そこには、二葉と三来、世羅の三人が廊下に立っていた。千歳は今にも泣きそうな目で三人を見つめる。一方、百合愛は気怠そうに三人を見つめていた。彼女の表情に気圧されたのか、二葉はそっと三来の背中に隠れている。
千歳は一目散に三人の元へ駆け出そうとしたが、まるで重力に逆らったかのように勢い良く後ろへ引っ張られた。踠こうとしたが、鼻先に夕陽に照らされて赤く光ったカッターナイフが現れ、千歳は本能で立ち止まった。
世羅は仁王立ちしながら百合愛を睨む。
「それがあんたの正体なわけね。」
「なんのこと?」
百合愛はグイッと千歳の腰を引っ張って自分のところへ引き寄せる。カッターナイフを見た二葉は小さく悲鳴を上げてさらに縮こまる。
「その暴力性が本性だって言ってんのよ。病院で千歳を叩いたりしてさ。」
世羅の挑発的な態度を百合愛は鼻で笑った。
「だって、あの男しつこいんだもの。わざと千歳ちゃんと仲違いする素振りを見せて、千歳ちゃん自身に距離を置いてもらおうと思ったのに。何度も何度も無理矢理会いに来て…。あの男は悪魔よ。」
「どっちが悪魔だよ。」
世羅はうんざりした表情で悪態をつく。
「私は千歳ちゃんが傷つかない為なら何でもするだけ。ただ一緒に遊んでるだけの貴方達には分からないでしょうね。」
「なにをー!」
三来が悔しそうに地団駄を踏んでいるのを冷めた目で百合愛は見ていた。世羅は早く千歳の元へ向かいたそうにしているが、百合愛のカッターナイフが千歳の首のすぐ近くに持って行かれているのを見て、思い止まっている。
この場にいる全員が緊張で動けない状態の中、遠くの廊下からは生徒たちのふざけ合う笑い声が聞こえてくる。緊張状態が続き、疲れてきたのか、しっかり前を見て百合愛を捉えている世羅と三来とは違い、二葉は余所見をしていた。
痺れを切らした百合愛が苛立ちながら口を開く。
「私、もういかなくちゃいけないの。あの男がちゃんと突き落とされるのを見届けないといけないから。」
二葉がそっと三来の袖を引っ張る。怪訝そうな表情で三来は視線だけ二葉に寄越す。世羅は二人の異変に気づいているようだったが、百合愛から目を離さなかった。
「さっき、防木が階段駆け上がって行ったのを見たけど、まさか先生まで誑し込んだんじゃないでしょうね。」
「あら、話聞いてたのね。」
「とんだ阿婆擦れだよ。」
百合愛のカッターナイフを握る手が強くなったのを千歳は確認した。きっと防木は零一を探しに行ったのだろう。このままでは零一の身が危険なのは明白だ。零一の元に一刻も早く向かわなければ、そう千歳が焦りで掻いた汗が頬を伝う。
どうしたら逃げ出せるかと辺りを見渡そうとしたその時、二葉と目が合った。二葉はそっと近くの壁に手を添える。その手の先のものを確認し、千歳は姿勢を整えた。
それを目で確認した二葉は強い力でそれを押す。横目で見ていた三来がニヤリと笑って「やっちゃえ!」と叫んだ。
次の瞬間、激しいベルの音が学校中に鳴り響いた。
「世羅!!」
千歳が叫ぶと階段下に三つの影が現れた。
そこには、二葉と三来、世羅の三人が廊下に立っていた。千歳は今にも泣きそうな目で三人を見つめる。一方、百合愛は気怠そうに三人を見つめていた。彼女の表情に気圧されたのか、二葉はそっと三来の背中に隠れている。
千歳は一目散に三人の元へ駆け出そうとしたが、まるで重力に逆らったかのように勢い良く後ろへ引っ張られた。踠こうとしたが、鼻先に夕陽に照らされて赤く光ったカッターナイフが現れ、千歳は本能で立ち止まった。
世羅は仁王立ちしながら百合愛を睨む。
「それがあんたの正体なわけね。」
「なんのこと?」
百合愛はグイッと千歳の腰を引っ張って自分のところへ引き寄せる。カッターナイフを見た二葉は小さく悲鳴を上げてさらに縮こまる。
「その暴力性が本性だって言ってんのよ。病院で千歳を叩いたりしてさ。」
世羅の挑発的な態度を百合愛は鼻で笑った。
「だって、あの男しつこいんだもの。わざと千歳ちゃんと仲違いする素振りを見せて、千歳ちゃん自身に距離を置いてもらおうと思ったのに。何度も何度も無理矢理会いに来て…。あの男は悪魔よ。」
「どっちが悪魔だよ。」
世羅はうんざりした表情で悪態をつく。
「私は千歳ちゃんが傷つかない為なら何でもするだけ。ただ一緒に遊んでるだけの貴方達には分からないでしょうね。」
「なにをー!」
三来が悔しそうに地団駄を踏んでいるのを冷めた目で百合愛は見ていた。世羅は早く千歳の元へ向かいたそうにしているが、百合愛のカッターナイフが千歳の首のすぐ近くに持って行かれているのを見て、思い止まっている。
この場にいる全員が緊張で動けない状態の中、遠くの廊下からは生徒たちのふざけ合う笑い声が聞こえてくる。緊張状態が続き、疲れてきたのか、しっかり前を見て百合愛を捉えている世羅と三来とは違い、二葉は余所見をしていた。
痺れを切らした百合愛が苛立ちながら口を開く。
「私、もういかなくちゃいけないの。あの男がちゃんと突き落とされるのを見届けないといけないから。」
二葉がそっと三来の袖を引っ張る。怪訝そうな表情で三来は視線だけ二葉に寄越す。世羅は二人の異変に気づいているようだったが、百合愛から目を離さなかった。
「さっき、防木が階段駆け上がって行ったのを見たけど、まさか先生まで誑し込んだんじゃないでしょうね。」
「あら、話聞いてたのね。」
「とんだ阿婆擦れだよ。」
百合愛のカッターナイフを握る手が強くなったのを千歳は確認した。きっと防木は零一を探しに行ったのだろう。このままでは零一の身が危険なのは明白だ。零一の元に一刻も早く向かわなければ、そう千歳が焦りで掻いた汗が頬を伝う。
どうしたら逃げ出せるかと辺りを見渡そうとしたその時、二葉と目が合った。二葉はそっと近くの壁に手を添える。その手の先のものを確認し、千歳は姿勢を整えた。
それを目で確認した二葉は強い力でそれを押す。横目で見ていた三来がニヤリと笑って「やっちゃえ!」と叫んだ。
次の瞬間、激しいベルの音が学校中に鳴り響いた。
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